第40話〜大木攻略・準備〜
「…大変だ!変な木が動いてるぞ!」」
俺らが大木討伐に向けて準備していると、ガラットとレティスが慌ててテントの中に入ってきた。
「あ、ガラットにレティス」
「お、ダイスか…ってなんでそんな呑気なんだ!?」
「いや、まぁ…さっきガラット達が言っていたのはあの大木だろ?」
「そ、そうだけどさ…」
「こっちもちゃんと事情は知ってる。これからその木をこりに行くところだ」
「マジで!?」
俺らが木の化け物の討伐をすることに、ガラットとレティスが驚きの表情を見せた。
「そんなに驚くってことは…S級でも見たことないやつってことか…」
「そんなの当たり前だろ!もちろん、巨大な魔物は倒したことがあるが、それでもアイツは桁違いだ!」
「なるほどな…それじゃ…」
俺は思いつきで、2人にある事を頼んだ。
「ガラットとレティス、申し訳ないんだが、今から俺らと一緒についてきてくれないか?」
「ついてきてほしいって…まさかと思うが…」
「そのまさかだ」
俺はあの大木を討伐する事をガラットとレティス2人にも協力してほしい事を伝えた。
人手は多い方がいいし、何よりS級と言われてるほどの実力者らしいからな…
もちろん、断る事も想定して、ダメ元での交渉であったが…
「勝算は?」
ガラットが俺に真剣な眼差しで聞いてきた。
さっきの優しい目つきとは大違いだ。
「五分五分。あの大木は30分浴びると死ぬ花粉をばら撒いてる。そのリミット30分で片せば俺らの勝ちだ」
「30分ね…わかった、乗ろう」
ガラットは不敵な笑みを浮かべて手を差し伸べてきた。
「協力、感謝する」
俺もそう言ってガラットの手を固く握った。
「それでそれで。目標は?」
「今リシュリューって子が調べてくれてるんだけど…」
と、俺が言うと…
「…ダイスさん…すみません…もう遠くに行ってわからなくなってしまいました…」
リシュリューがテントの奥から現れ、申し訳なさそうに言った。
「そうか…そうなると、やはりリシュリューも連れて行かないといけなくなるな…」
と、俺はボソボソと呟いていた一方で…
「り、リシュリュー皇女!?なぜ貴方がここに!?」
ガラットがさらに驚きの声を上げた。
「あ、ガラットさん!ご無沙汰しております」
「いや、あの…以前お会いした時は可憐なドレス姿であったはずですが…なぜ…」
今のリシュリューの格好は、ミミ達が着ていた上着や救護班が持ってきてくれていた代理の布着を着せているので、側から見たら一般の女の子のような格好をしている。
「実は私も恥ずかしながらあの小屋で捕まっていまして…」
「それで、今は救われてここに…」
「はい、そうです」
そんなガラットとリシュリューの会話を見ていたレティスは…
「むぅ…ガラットは私のもの!」
と、嫉妬丸出しでガラットを抱いたが…
「大丈夫ですよ。私は今はダイスさんのそばにいますから」
リシュリューはにっこりと笑顔で言った。
というか、今のその言葉、ミミとブロッサムが聞いたらなんて反応するだろうか…
「…むぅ…また新たな敵…」
「そうですね…ミミちゃん」
なんて言いそう…っ!?
「2人とも何してんの!?」
俺は2人の声が聞こえたので振り向くと、テントの入り口でジト目でこちらを見ていたミミとブロッサムがいた。
「準備できたから用意してるのに…来てみたらガラットとレティスがいて、その話聞いたら…」
「あー、もうお前ら!とりあえず準備できたんだな!」
俺は2人の嫉妬をとりあえず抑え込み、死の大木討伐にガラットとレティス2名もともに参加する事を伝えた。
「あれ?そういえば、ミミちゃん以外に仲間いたよねー?なんでその子たち連れて行かないの?」
「極力少人数で緊急事態の時にすぐに避難できるようにするためです。今回行くところは毒が晒されている環境なので、大人数で行って、不測の事態が起きると取り返しのつかないことになりますから。なので地上からも少しの足止めをするために、色々と動いてくれてます」
その地上班でのリーダーを、俺はダーヌに託すことにしている。
チェスが得意なあいつなら、人を動かす事自体簡単な方だろうしな…
「そして、リシュリューとペトラも同行させてもらうことになった」
と、俺はリシュリューの帰還のためにペトラの同行を独断で決めかけたが…
「いいえ、私も行きます」
リシュリューが力強く俺に言った。
行くということは…俺らとともに討伐にしに行くということだ…
「それはダメだ。流石に君には重すぎる。相手は君の仲間なんだぞ?」
俺は思いとどまるように説得しようとしたが…
「いえ、それでも行かなければなりません。私は、何もできずに仲間が連れ去られていくところ、何回も見ました。それがあの怪物の生贄にされていたと考えたら…救いたいんです!私の家族を!」
リシュリューはさらに力強く、俺に向かっていくように言った。
「…わかった。ミミ、もしも状況が危ないと判断した時は、先にリシュリューを避難させてくれ」
「うん、わかった」
ミミも頷き、俺ら5人はミミが用意した馬車で死の大木より先回りすることになったのだった…
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…すげぇ緊張する…
『俺が死の大木の攻略をしている間、みんなには地上で足止めをして欲しい。そして、そのリーダーをダーヌに任せる。みんな、頼んだ』
…なんて、ダイスに言われたけれど…本当にいいのか?
俺はみんなからずっと嫌悪されてたような奴なんだぞ…
アトラス解放軍にいた時でさえ、ただの端くれで、唯一自慢できることとすれば、ラメル様に気にかけてくれただけだ。
そんな俺が、ダイスの代わりなんて…
「…どうされました?ダーヌ殿」
「あ、メノールか…」
そういや、メノールとこうやって話すのってなんだかんだ初めてだよな…
「いや、その…俺がみんなを引っ張れるのか心配でさ…」
「というのは?」
「俺はオークだ。周りからは知能が低いとされている種族だ…何があっても下っ端になるような種族の俺が…お前や狛犬族のあの2人を引っ張るなんて…出来んのかって思ってよ…」
俺は思わず弱音を吐いた。
別に同情が欲しいわけではないが、心のどこかで欲しかったのだろう…
「たしかに、オークは種族の中でも軽視されている種族の一つですね。その理由が知能が低かったり、見た目が嫌悪されたりとありますし、私もオークはそこまで好きではありません」
「だよな…」
「でも…」
メノールは座っている俺と同じ目線までしゃがみ込んできた。
「一緒に戦っていた時、貴方のリーダーシップに感心したところもありました」
「…え?」
「この前のブロッサムさんの救出の際、私達で軍の人たちと相手した時、貴方の的確な指揮がなければ、私達は闇雲に動いていただけになったと思います。貴方の指揮は、私たちの事も考慮し、何をすべきかその場で正解を導いてくれたのです」
たしかに、俺はあの時メノールやアカギちゃん、ウンゼンちゃんに色々と言った記憶がある。
ただ、あの時は軍の人だったこともあって、大抵の行動パターンを知っていたから出来たことだ…
「いや、俺はそんな大したことは…」
と、俺はまた否定しようとしたその時だ。
「なーに言ってんのよ、このオーク」
ウンゼンちゃんがトコトコとやってきた。
その後ろからアカギちゃんもやってくる。
「聞いてたのか?」
「ちょっとねー。んで、聞いてみたらとんでもないネガティブ思考になってたからさ…ちょっと元気づけにね?」
「元気付けって…」
「たしかに、あんたは見た目最悪なんだけどさ、私達の事を考えてくれてるわけでしょ?」
「それはただ…なんとなくというかその…」
「ダーヌさんは、どこかで私たちの事を観察して、そしてあの時に的確に指示してくれた。おそらく、軍の人の行動を知っていたと思われますけど、それだけでは指示できないと思います。その時の状況に応じて、1番最適な答えを出す。それが、ダーヌさんには出来ると思ってます」
「なので、ダイスさんはあなたに託したのだと思います」
「…そう…なのか…」
なんか拍子抜けだった。
みんな、俺のことを好ましくないかと思っていたら、そういうふうに思ってたなんてな…
「なので、今からはあなたが指示を出してください。リーダー代理さん」
メノールは笑顔で俺の指示を待った。
俺はそれをみて、つられて笑ってしまった。
「…すまねぇな。弱気になって…それじゃ、指示を出すぞ!」
俺は勢いよく立ち上がり、3人にこの後の指示について話したのだった…
いかがでしたでしょうか?
もしよろしければ評価や感想など、よろしくお願いします。
では次回、お会いしましょう。




