第3話〜この世界で暮らしていきます〜
どうも、VOSEです。
今回は特に進展のないお話でありますので、のんびりとご覧になってください。
では、本編どうぞ!
…憲兵に叱られた俺らは、一旦ミミが過ごしている教会に帰ってきた。
アルフは貿易商のため、俺らを教会に返してもらった後、自分の家に帰った。
「お疲れ様。疲れたでしょう?」
マリアさんはそう言うと、俺らにお茶と軽食を用意してくれた。
俺らはマリアさんに感謝し、そのお茶と軽食を部屋に運んで食べながら、この世界のことや状況をミミが話してくれた。
「私たちが住んでいるこの世界は、いくつもの小さな町が連合を組んで国として機能しているの。この町、ジリッカもその連合に入っているから、連合で作られた軍隊が駐在しているの」
「それで、その軍隊というのは強いのか?」
「う~ん…この世界では強いって聞いているけれど…銃が発達していない世界だから、正直わからない…」
「まぁ、何せ魔法が主力の世界だからな…遠隔攻撃は魔法だろ?」
「弓矢はあるんだけどね…やっぱり魔法の力が強いわ…」
なんの力も持たない俺みたいな人からしたら、魔法の力というのはやはり脅威になるのはわかった。
「んで、軍隊には魔法部隊なんてのはいるのか?」
「いなくはないけど…魔法が使える人がこの世界の半分で、そこからさらに軍隊で使えるってなるとごく一部になるかな…すべての人がどんな魔法が使えるんじゃなくて、それぞれ得意不得意があるのよ」
「なるほどな…この町にそういう魔法部隊は?」
「いないわ。魔法部隊は連合国の首長…国王の直属だから、こういう片田舎には来ないわね…」
「ということは…山賊には魔法が使えるものがいて、軍はそれに対抗できなかった…ということか」
「わからないけど…可能性の一つとしてあるんじゃない?」
ミミはそう言うと少しため息をついた。
「…そういや、ミミは山賊のことは聞かされていたか?」
「ううん、全く」
俺の質問に、ミミは大きく首を横に振った。
「おそらく停戦協定の一つでこのことは知らされてないんだろうな…」
「あのアルフさんもそのことに気づいていませんでしたね…」
「いや、知ってたんだろ…おそらく、いつもと違っているように感じていたはずから」
俺は用意してくれたお茶を一気飲みし、一つため息を吐いた。
「…とりあえずどうしようかな…ここに居座ることもできないし…」
俺はこの後のことに頭を悩ませていると…
「それならしばらくここにいてもいいわよ」
マリアさんがドアの外から話しかけてきた。
「な、マリアさんいつの間に!?」
「ごめんね。最初から聞いていたの。それで、ダイス君…でいいのかしら?」
「はい、かまいませんけど、どうしましたか?」
俺がマリアさんに何かあったのか尋ねると、マリアさんは優しい口調で、教会に留まらせてくれる条件を話してくれた。
「ここにいてもいいのだけれど、時々私がお願いを出させてもらうわ。それが仕事だと思ってもらって。もちろん、その仕事にあった報酬もあげるから。それでならここにいてもいいわ」
つまりは泊まり込みで仕事をするお手伝いさんみたいな条件だ。
こんな美味しい話を俺は断るわけがなかった。
「わかりました。それで、仕事というのは…?」
「今日はいいわ。明日教えるわね」
この日はもう夜遅くになったので、マリアは俺を落ち着かせるように言った。
「わかりました。明日よろしくお願いします」
ということで、俺らはこの日は寝ることにしたのだった…
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次の日…
「…これが、仕事ですか?」
日が昇る前に起きた俺は、仕事の内容を聞こうとマリアのもとへ訪れていた。
マリアはそんな俺に、ついてきてと言って、ある所へ案内してくれた。
そこは厨房で、中には大量の食糧があった。
「えぇ。これらの準備をやってほしいの。料理は私が作るから」
「しかし、どうしてこんな大量に…」
「それは後でわかるわよ」
マリアは優しい笑顔で答えた。
自炊していた俺は、マリアに尋ねながら皮むきなどをいつもの要領でこなした。
「あら、うまいわね。もしかして料理やっていたの?」
「はい。自分で作って食べてましたから。あ、ミミも一緒ですよ」
「そうなのね。助かっちゃったわ」
マリアはそう言うと、手際よく料理を作り始めた。
角煮にから揚げ、ハンバーグ、サラダなどを一瞬のうちに作り上げていった。
「すげぇ…というか、俺がいた世界と同じようなご飯だなぁ…」
「あら、そうなの?こういうものは好き?」
「はい。舌はまだ子供なので」
「それならよかったわ」
こんな会話をしていくうちに気が付いたのだが、ここの世界の文字はぐにゃぐにゃで読めそうでなかったが、なぜか脳内で日本語に訳されている感覚で読めていて、そのことに今まで気が付かなかった。
まぁ、この世界に来たことによってそういう能力が付いたものだと考えることにするか…
しばらく仕込みを進め、やり終えたころには日が昇って明るくなっていた。
「お疲れ様。ダイス君。それで、申し訳ないけどこの料理を一緒に食堂にもっていってくれないかしら?」
俺はマリアについていくような形で食堂に料理を持って行った。
食堂は長机に椅子がずらりと並んでいるような感じで、料理は食堂の壁にずらりと並べた。
まるでビュッフェ形式だ。
そして…
カンカンカンカン…
そんな細かい鐘の音が聞こえた。
それと同時に…
「いっちばーん!」
「今日もいい匂い!」
「おなか減ったよ~」
色んな子供たちが中に入ってきた。
5歳くらいから18歳くらいのいろんな子供たちがずらっと入ってきた。
その様子を見て、俺はなるほどというようにうなった。
「…ここ、孤児院と併設している形で建っているんですね」
「えぇ。だから料理は多く作らないとね?」
「そういうことなんですね。納得しました」
「仕事は孤児院の子供たちのお世話や、この教会の掃除など多岐にわたっているわ。お願いできるかしら?」
「可能な限りやらせてもらいますよ」
俺はマリアの言葉に、快く返事した。
そこへ…
「あ!大輔いた!」
ミミがとことことやってきた。
「もう、朝起きたらいなくなっていたから心配したでしょ!」
「この教会からいなくなるわけねぇだろ…」
「それはそうだけど…」
「というか、お前もここの孤児院にお世話になっていたのか?」
「もちろん!」
ミミは元気いっぱいの笑顔で返事した。
子供たちは思い思いにご飯を取っていき、あっという間に料理が消えていった。
「みんな?ちゃんとバランスよくご飯取ったかしら?それでは…」
『いただきます!!』
マリアの号令で朝ごはんを食べ始めた。
俺とミミもマリアの隣で共に朝食をとることにした。
「…しかし、よく見ると、いろんな子たちがいますね…」
俺がそう言ったのは、孤児院にいる子供たちの姿が様々だからだ。
もちろん、普通の人間の子もいるのだが、ミミみたいに猫みたいな子がいたり、アルフみたいな長い耳の子もいたりと多種多様な子たちがいるからだ。
「えぇ。ここにいる子たちはある事情で親と別れてここにいるの」
「ある事情って…?」
「…ここでは話せないわ。朝食を食べてからにしましょう」
マリアに悲しめの言葉を言われた俺は、何も言えずに黙々とご飯を食べ進めた。すると…
「…ねぇ、おにいちゃん、だれ?」
小さい女の子が俺の横にやってきた。
金髪のロングヘアで青い目をした女の子だった。
「ん?ええっと…俺は昨日ここに来たばっかりでね…」
「そうなの?それじゃあ、ペネと一緒?」
「んまぁ…そうなのかな?それよりも…君は何をしているんだ?」
俺は女の子との話をしている隙を見て、俺のご飯を取ろうとしている男の子の方を見てをとがめた。
男の子はその言葉にびくっとなった。ペネちゃんと同じような顔をしていた。
「ったく…欲しいならちゃんと言葉で言ってからな?」
俺はそう言うと、取ろうとしていたパンを半分に割って2人にあげた。
男の子はまるで豆鉄砲を喰らったかのような顔をしていた。
「ええっと…ペネちゃんと…」
「…ペル…」
「ペル君ね、今度からはちゃんとお願いしてから取るんだよ」
ペネちゃんとペル君は、俺の言葉を聞いてうんとうなづいた後、自分の席へ戻っていった。
「ごめんなさいね…ペネちゃんは優しくて明るい子なんだけど、ペル君はいたずらっ子で…」
マリアは一連の様子を見て、お詫びした。
「気にしてないですよ。子供ですし」
俺はそう言うと、残ったご飯を一気に平らげた。
もちろん、食器洗いも俺の仕事。
マリアは孤児院の子供達に勉強を教えるために教鞭を執り、修道院に来る人に祈りを捧げたりと、仕事が多い。
俺はいわば、マリアでも手に届かないような仕事や、マリアの補佐をするのが役目だ。
「それじゃ、ダイス君。今度は倉庫の掃除をお願いできるかしら?」
「わかりました」
俺はマリアからもらった掃除道具を手に、教会の地下の倉庫へと向かった。
教会の地下はランタンが所狭しとあったので思ったほど暗くなく、幾つも部屋のドアがあった。
そのうちの一つの部屋が、今回掃除する倉庫だった。
「しかし…これはすごいな…」
俺が入った倉庫の中は、蜘蛛の巣がいたるところに張り巡らされ、物はこれでもかというほど散らかっていた。
マリア曰く、マリアが入る前からこの倉庫の乱雑さには目に余っていたのだが、誰もめんどくさがってやらなかったという。俺より前にお手伝いとして入ってきた人もこの現状に逃げ出したレベルだとか…
「…でもまぁ、やりますか」
俺はすぐに掃除に取り掛かった。
いくつも折り重なった箱を一つ一つ部屋から取り出し、ホコリを箒ではいて、蜘蛛の巣をはたき棒ではたく。
こういう家事はよくやっていたから、俺にとっては手慣れたものだった。
とはいえど、やはり部屋が広いので、この倉庫の掃除には半日かかると予想していた。
「ふぅ…こんなもんかな…」
と、俺がひと段落して部屋の隅っこに座ると、あるものが目に入った。
黒いおおきな鉄の箱だ。
南京錠がかかっていたが、かけられていなかった。
俺はふと立ち上がって、その箱の中身を確認した。
そこに入っていたのは…俺が前にいた世界で使っていた銃の数々だった。
どういうことなのか驚いている俺のところに…
「どう?進んでいるのかしら?」
と、マリアがお昼を持って部屋を訪ねてきたのだ。
「マリア!?」
「あら、どうしたの?」
「いえ…というより、これは…?」
俺は中に入っていた電動ハンドガンを取って、マリアに見せた。
「あら、それは私が作った魔法具よ」
「え?つ、作った?」
「えぇ。私、こういうものを作れるのよ?ミミちゃんの魔法具も私が作ったのよ」
「そ、そうなんですか…それでも、なんでこんなものを?」
「いつの日かの夢で、こういうものが出てきてね?そこから作ってみたのだけれど…」
と、俺とマリアで話していると、突然、持っているハンドガンが鈍く光りだしたのだ。
ハンドガンだけでなく、黒の箱の中も鈍く光りだしたのだ。
「え?」
「え!?」
俺はもとより、作ったマリアも驚いた。
「マリア!?これどういうこと!?」
「私が作った魔法具は、私が認めた人と、私が作った魔法具で『契約』という形で結ばせて魔法具の効果を発揮させるの。その『契約』の儀式を行っているときにこうやって光るのだけれど、儀式もしていないで光っているのは初めてよ」
「ということは…」
「もしかすると、あなたはこの武器と…いや、この武器達と相性がいいのかもしれないわね…それなら、私が今ここで『契約』をするわ」
マリアはそう言うと、ぶつぶつと呪文みたいな言葉を言い始めた。
すると、俺の周りに糸状の光が現れ、俺と銃を繋ぎ始めた。
そして、その糸が消え、銃も光を消すと、銃の塗装が銀と赤のツートンになっていた。
「…これで契約完了ね」
「申し訳ありません…何から何まで…」
「いいのよ。私は人の役に立ちたいから」
マリアはそう言うと、持ってきたお昼のスープを俺に手渡してくれた。
俺はありがたく、マリアが持ってきたスープをじっくりと味わったのだった…
いかがでしたでしょうか?
進展がないと言っても、ほんの少しだけの進展があったくらいで、とりあえずこんな感じで仕上げてみました。
これからものんびりと更新していくので、よろしくお願いします。
では次回、お会いしましょう。