第37話〜突撃せよ、奴隷商人の館〜
…出発してから数時間後、俺らは馬車を降りる地点に着いた。
ここからは各自決められたポジションまで歩いて向かう。
俺は拠点となっている小屋が見下ろせる地点にポジションにつき、他のみんなは冒険者の皆さんについていった。
なんで俺だけ別地点なのかというと…これは俺が直々に申し出たからだ。
他のみんなは懐疑的な目を向けたが、同行してくれていたマカノンからは許可を得て別行動を取らせてもらったからだ。
そして、小屋を見下ろせる地点にしたという理由は…小屋を見張ってる傭兵どもを倒す為である。
見張ってる傭兵の数はアカギとウンゼンが集計してくれることになっており、その位置や数などから、俺は逐一位置を変えて発砲するということだ。
「…ここからだと5人か…」
俺は這いつくばって、現状で見える範囲で傭兵の数を数えた。
小屋…と言っても、その規模はかなり広く、牧場と言っても過言ではないくらいだ。
しばらくして…
「…ダイスさん、見てきました」
アカギとウンゼンがやってきた。
傭兵の数を見てきたらしい。
「どうだった?」
「全部で20人よ。中にも護衛いるらしいけれど、今はそれくらいね」
「わかった…ありがとう」
俺は2人の頭を撫でた。
すると…
「はぅ…」
「ちょ…こんな時に撫でないでよ…」
と、アカギは恍惚な表情を、ウンゼンは顔を赤くして俯いた。
「あ、悪りぃ…」
「別に大丈夫です。その…今後も頭を撫でてもらえると…」
「それ今言う話じゃないでしょ…頭撫では今後もやるから、2人はみんなの元へ戻っていいよ」
「わかったけど…あんたは?」
「俺はこいつを使う」
俺はそう言うと、スナイパーライフルを顕現させた。
「あ、なるほど!それなら納得しました!」
以前スナイパーライフルを見たことがあるアカギは、これから俺がやることに納得してくれたが、初めて見るウンゼンは思わず首を傾げた。
「ウンゼン、ここはダイスさんに任せましょう」
「う、うん…逃げないでよね!」
アカギに言われるがまま、ウンゼンは念押しをしてその場から離れた。
「…さてと…」
俺は一層気を引き締めた。
実は、俺が別行動するにあたって、今回の作戦も予定より少し変えて行っている。
それは、俺の銃声で突撃するというものだ。
もちろん、冒険者の方々はその案に反発していたが、マカノンの絶対的な信頼でこの案を採用したのだ。
責任は重大…1人でも倒さねばいけない…
俺は手汗をかきながら、トリガーに手をかけ、護衛の1人に狙いを定めた。
「…スリー…ツー…ワン…」
そして、俺はトリガーを引いた…
パァン!
…命中した。
何が起きたかわからない様子で、近くにいた護衛が慌ててその人の元へ駆け寄っていくのが見えた。
銃声は山をこだましたため、下にいる本隊がすぐに小屋を襲撃した。
俺は引き続き、護衛を1人、また1人と、次々に倒していった。
冒険者も何が起きているのかわからないまま、小屋に入っているのが見える。
俺は見えてる場所から護衛がいなくなってることを確認した後、スナイパーライフルを片付け、今度はアサルトライフルを顕現させてみんなと合流することにした。
小屋に着くと、小屋の中にいた傭兵達が一斉に出てきて、冒険者達と交戦していた。
俺は箱などを使って身を隠しながら、傭兵に鉛玉を撃ち込んでいった。
ちなみに、傭兵と冒険者の区別はついており、今回の摘発に協力してくれる冒険者には赤いワッペンが付いている。
なので、誤射しないように慎重に銃を発砲しているというわけだ。
「なんなんだ!その武器は!?」
俺の後ろにいた冒険者の1人が、俺のアサルトライフルを見てひどく驚いていた。
「こいつは俺の武器だ!」
俺はそう叫びながら、傭兵に銃弾を次々と撃ち込んでいく。
しばらくして、傭兵の数が少なくなり、俺らは小屋の中に侵入すると、別方向から来ていたミミ達と合流した。
「ダイス!良かったー!」
「みんなも無事で何よりだ」
「どんなもんよ!」
「アカギもウンゼンもしっかり仕事果たしました。あの…」
「ん?…あ、あぁ…」
アカギが何か言いたそうにしていたのでなんなのかと思ったが…すぐに何かがわかった。
「はーい」
俺は両手をアカギとウンゼンの頭に置いて撫でた。
「ふわぁ…ダイスさん、優しいです…」
「わ、私まで撫でなくても…」
2人とも恍惚な表情を浮かべてる…
「むぅ…ミミも!」
「はいはい、あとでな…」
と、頭撫でを後にミミにもやったところで、俺らは小屋の中を調べた。
ちなみに、未だに犯人であるバージの姿は見ていないという…
写真で犯人の顔は見ているから、すぐに判別できるけれども…
それに加えて、まだ囚われている人たちが見つからないのも不思議だ。
「…どこだろうな…」
「そうだにゃ…」
俺らは小屋の中をくまなく探していると、俺は風が吹いていることに気がつき、足を止めた。
しかもその風の出所が足元からだ。
「…ダイス、もしかして…」
ダーヌも気づいた様子である。
「あぁ…もしかしするとな…」
俺は足元を見ると、地下室は続くであろう扉があったのだ。
小屋の中は木で出来ており、しかもバレないように設置してあったため、誰もわからなかった感じだ。
「あ!こんなところに!」
「あぁ。みんな、離れてくれ」
俺はそう言ってみんなをその扉から離れさせ、そこにアサルトライフルを撃ち込んだ。
何十発か撃った後、今度は足で無理やりその扉を壊す。その扉の先には…予想通り、地下へ続く階段があった。
「…みんな、慎重にいくぞ」
俺はそう言って、先陣を切って中に入っていった。
地下はまるで迷宮のようになっており、意外と天井が高い作りになっている。
「…なんだか気味が悪いにゃ…」
「このひんやりとした空気もそうだけど…嫌な雰囲気ね…」
ジメッとした地下に、ミミとブロッサムが思わず嘆いた。
所々にある曲がり角に気をつけながら慎重に足を進めていくと…
「…すけ…」
遠くから誰かの声が聞こえた。
「…う…だ…」
そして、また別の誰かの声が聞こえる。
俺はその声がする方へ歩いた。
そして着いたのは…牢獄みたいな、柵がつけられた部屋がいくつも奥へ続く部屋だった。
「…助けて…」
今度ははっきり聞こえる。
助けを求める声だ。
「おーい!誰かいるかー!?」
俺は大声で叫び、地下室を一つ一つ確認していく。
いくつかの部屋がもぬけの殻であったが、しばらく確認してついに…
「…いた!」
ついに捕まってる人を見つけた。
そこにいたのは、怯えている青色のバラを頭に生やした、セミロングヘアの精花族の女の子と、その女の子を守ろうとしている身体の一部が白樺の、深緑色のロングヘアの精木族の女の子がいた。
「大丈夫か!?」
と、檻を壊し中に入って助けようとした時…
「来るな!」
精木族の女の子が、寄せ付けまいと叫んだのだ。
「…え?」
「来るな!この汚い人間どもめ!」
精木族の女の子は、助けに来た俺らを、汚い人間であると断罪したのだった…
いかがでしたでしょうか?
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では次回、お会いしましょう。




