第32話〜我が家の様子・その1〜
…ブロッサムが退院するまでカラノームに残らないといけなくなったので、俺らはまた数日滞在することになった。
その間の宿はゴールデンカジノが負担してくれることになったので、大変ありがたいことではあるが…
「おいしい〜!」
「うめぇ!うますぎる!」
…ここまでほぼ1週間の飯も、あまりにも豪勢すぎる…
「…これ、俺らの家に戻ったらえらいことになるぞ…」
「安心してください、ご主人様。私がこれにも負けない料理をお作りいたします」
「そんなに意気込まなくてもいいよ…でも、ありがとな。メノールも十分美味しい料理作ってるんだから、対抗しなくていいよ」
「お褒めいただきありがとうございます」
メノールが対抗しようとしたので、俺はすぐにメノールを褒めて抑えた。
メノールは褒められたことで嬉しかったのか、可愛らしい笑顔を見せた。
「あー、こんな贅沢な暮らしずっと続けばいいのになー」
「ウンゼン、そういうこと言わないの。これからダイスさんのお世話になるんだから」
「わかってるって。あんたの家、どんなのだろうね?」
ウンゼンは俺の方を見てニヤニヤしてきた。
ゴールデンカジノより遥かに劣るあの家を見たらどう反応するのだろうか…
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…あれから数日後…
「うわぁ…綺麗な家…」
ウンゼンが目を輝かせて俺らのログハウスを見た。
意外な反応だ。
てっきり贅沢したいのかと思っていたのだが…
「しかも自然がいっぱいね。気持ちいいわ」
無事退院できたブロッサムも、気持ちよく背伸びをしながら自然いっぱいのログハウスを見ていた。
そして中に入ると…
「埃たまってますね…」
1週間いなかったため、埃があちこち溜まっていた。
「仕方ねぇな…掃除するか…」
ということで、帰宅して最初のお仕事、家の掃除をみんなで手分けしてやることにした。
と言っても、家の大半を俺とメノールでやり、他のみんなはブロッサム、アカギ、ウンゼンの3人を空いているゲストルームを自室にするために動くことになった。
「それにしても…ご主人様は手際が良いですね」
ふと、メノールが俺の掃除を見て感心していた。
「言ったろ?俺は前の世界でなんでもやってたって」
「それでもこの手際の良さはさすがです。私なんかがいらないと思ってしまうほどです」
「それはないな…メノールも俺らの仲間なんだから、ここにいてくれていいんだし」
「ありがとうございます」
俺とメノールでなんとか家の掃除が終わったので、他のみんなをリビングに集合させた。
「うわぁ…すごい綺麗…」
「とても可愛らしい部屋ね!居心地良いし!」
「ここなら住んでも文句はないですね」
ブロッサム、アカギ、ウンゼンの3人は部屋の雰囲気や家具のデザインなどに目を輝かせていた。
「家具のほとんどはミミとメノールの感覚で選んでもらったようなものだし…ブロッサムとアカギとウンゼンも何か置きたい家具とかあったら言ってくれよ」
「それじゃ、私たち色に染めても?」
「あんまり強すぎないでくれよ?自分の部屋くらいにしてな?」
「はーい」
と、ウンゼンは少し不満そうに言ったものの、何か企んでいそうな笑顔を見せた。
「さてと…そろそろ夜になるし…メノール。ご飯お願いできるか?」
「わかりました、ご主人様」
メノールは俺に一礼すると、キッチンの中へ入っていった。
それを見たブロッサムが…
「ねぇ、ダイス君。私も一緒に料理を作ってもいいかしら?」
と、俺に聞いてきた。
「ん?ブロッサムも作れるのか?」
「えぇ。こう見えて自炊してたからね。それに、花嫁修行したいし」
「…へ?」
ブロッサムのトンデモ発言に、俺は思わず変な声を出してしまった。
それにミミも反応し…
「むぅ…ダイス!私も一緒に作っていいよね!」
と、ブロッサムに対抗してきた。
「あ、あぁ…頑張ってくれよ…」
俺は変な汗をかきながら、2人がキッチンへと向かう背中を見送ったのだった…
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…できた料理はどれも見た目は美しいものだった。
しかもメノール曰く、自分は何もしていないというから驚きだ。
「ふふん。どう?ダイス〜」
「ダイスくん、私の料理どうかしら?」
2人はあまり争っている感じには見えないけれども…なんでだろう…2人とも俺にぐいぐいと来ている…
「兎にも角にも食わねえとわかんねぇだろ。見た目は良くても味がダメなら意味がねぇからな」
ダーヌは今でも食べたさそうに待ち構えていた。
そういうのも無理はないし、一理あると思った俺は、とりあえずミミとブロッサムを落ち着かせて、夕食を取ることにした。
「それでは」
「「「「「「いただきまーす!」」」」」」
みんなで一斉に挨拶をして食べ始めた。
ちなみに今回、ミミとブロッサムが作った料理はどれなのかわかるように、俺から見て右側がミミが、左側がブロッサムが作った料理が並べられている。
基本的に2人の料理の違いはまず見た目からだ。
ミミはどちらかというと、色の濃いとろとろとしたソースがかかった肉や惣菜など、比較的濃いめの味付けをしているように見てとれる。
一方ブロッサムは野菜中心で、ドレッシングも塩ダレベース、使っている肉はササミなど、ヘルシーな料理ばかりだ。
まぁ、ミミの場合は俺の料理を見ていたからその影響が出ただろうし、ブロッサムも前の世界で病気にかかっていたからその影響で今度からは病気にならない体づくりをしていたから、こうやって出たのだろう…
そして、肝心の味はというと…まぁ、予想通り、見た目通りという感じだ。
強いて言うなら、ミミの料理は意外としつこくなくいくらでもご飯が食べられそうな味付けだった。おそらくマリアの手伝いをしたから、その影響もあるだろう…
「ねぇ、ダイスくん」
「私とブロッサム、どっちが良かったかにゃ!?」
2人は俺の評価を聞くべく、俺の隣に来て迫ってきた。
「あ、あぁ…どっちも美味しいよ」
「どんな風に?」
「ちゃんと教えて欲しいにゃ!」
「わかったわかった…ええっとだな…」
俺はさっき思ったことを素直に2人に話した。
正直、どっちが良いか悪いかなんて考えてない。どっちも個性が出ていて美味しいし、甲乙つけ難い…
だから、バランス良く食べればどちらでも大丈夫だろうと2人に伝えると…
「そうね…たしかに、ダイスくんの話一理あるかも…」
「それじゃブロッサム!一緒に料理考えよ!」
「うん!そうしよっか!」
…と、二人の仲はかなり縮まった所で、料理対決は終わった。
なお、ミミの料理はダーヌが、ブロッサムの料理は女性陣が好みにあっていたらしい…
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…夕食が終わり、俺らは次にお風呂タイムへ…
お風呂の時間は最初に女性陣が、その次に男子である俺とダーヌが入ることになった。
俺とダーヌは女性陣が出るまでは暇であるため、アルフの店で買ったあるボードゲームを嗜むことにした。
「…これはチェスだな…」
「あぁ。ダイスの前の世界でもあったのか?」
「あるよ。見た目も変わんないし…動きはこんな感じだったけど…」
俺はダーヌに、前の世界での駒の動きを確認してもらい、それがここでも通用出来ることがわかると、2人でチェスの対決をすることになった。
ダーヌはどのくらいの腕前なのだろうか…と思ってやっていると、意外と強いことがわかった。
結構痛いところを突いてくるので、俺としてもやりづらく…
「…チェックメイトだな」
「嘘!?」
…気がついたらチェックメイトされていた。
「いやぁ…これはこれは…」
「どうだ?チェスは得意だったんだぜ?なんならもう一戦やっても良いぞ?」
「くそ…ならもう一回だ!」
俺はダーヌに再戦を申し込もうと思ったその時だ。
「ダーイス!」
「うわっ!?み、ミミ!?」
後ろからミミが抱きついてきたのだ。
「ダイスとダーヌ、チェスやってたの?」
「あ、あぁ…というか、ミミ…離れてくれないか?」
「どうして?」
どうしてって…当たってるんだぞ…柔らかいアレが…
ちなみにダーヌは何故かずっと目を逸らしている…
「とにかく…いい加減離れてくれ…」
「はーい…」
ミミは残念そうに離れたので、俺はふとミミの方を振り返ると…
「っ!?」
そこにいたのは…バスタオル一枚で出歩いているミミの姿が…
「ミミ!おま…なんて格好で出歩いてんだ!寝間着あるだろ!」
「えー、だって、ダイスの様子見たかったし…それに、これもこれでいいでしょ?にゃん♪」
…もう、お手上げだ…
これ以上突っ込んだらキリがない…
「…とにかく、早く着替えろ!」
「はーい」
ミミは悪びれた様子を見せずに、更衣室へ入っていった。
「…ミミって、あんなやつなのか?ダイス…」
ダーヌが呆れた様子で俺に聞く。
「少なくとも家族とは思ってたけど…どうしたんだ…アイツ…」
俺は思わず頭を傾げた。
まさかとは思うけど…まぁ、考えないようにしよう…
その後、女性陣全員がお風呂から出たので、俺らが続いて入ったのだが、ブロッサムとミミがまたお風呂に入って俺の背中を流すなんて言ってきたのは、また別の話…
いかがでしたでしょうか?
この話を持って、更新は一時停止にします。
理由としては、新しい話が思いつくまで停止しようという考えでありまして、思いついてストックとして書き始めたタイミングで更新を再開させようと思っております。
また、この話の大まかな展開は決まっていますので、永続的な更新停止ではないことだけ、ご理解いただけると嬉しいです。
では次回、お会いしましょう。




