第31話〜ブロッサムの正体〜
最後にお知らせあります
…あの事件から数日後…
街には活気が戻ってきた。
と言っても、今回の舞台は中央広場のみであったので、他の場所からしたら活気はいつも通りかもしれないが…
今回濡れ衣を着せられたブロッサムさんは、クリスティーヌさん達のおかげで容疑が晴れ、代わりにザルツが本当の首謀者であることを告げられ、市民のみなさんはかなり申し訳ない表情になっていた。
アカギとウンゼンは、今回の事件が終わったので、俺が銘刀『阿吽』を返して村に戻っていく…はずだったのだが…
「村の人たちに先程連絡を入れて…」
「私とお姉ちゃん、あんたについて行くことにしたから、よろしくね」
と、俺らの仲間になると言い出したのだ。
「え、いや…その…2人はそれでいいのか?村心配じゃ…」
「たしかに心配ですが、今回のことを受けて、村に軍の人が付いてくれることになりました」
「それだけでなく、その人が村の人を特訓して、自警団の強化をしてくれるそうよ。だから、私たちは心置きなくあんたのところに入れるわけ」
「それはいいけど…ウンゼン、俺のことあんま好ましくなかっただろ…その点は…」
「あんたのこと、まだ嫌いよ。でも、性格が好きだからついていくわ。あくまで、性格だけなんだけど」
「あ、あぁ…」
ちなみに、今回アカギとウンゼンの村を襲撃した実行犯は、カラノームの街にはいなかったという…
これは今後の課題になりそうだな…
あと、カラノーム軍が一時解体したので、カラノームにいるスタングは、国軍本部隊にほぼ全員摘発された。
逃げられた人もいたが、それでも街からスタングがいなくなったのだ。
ちなみにメノールが住んでいたアパートの大家さんもスタングのメンバーだったので当然摘発。
その立ち合いにメノールも付いて行ったので、何か言葉を吐き捨てられたようであるが、メノールはスッキリしたと言わんばかりに笑顔で戻ってきた。
そして今はというと…
「ダイス、すごいな!またジャックポットだ!」
「…マジかよ…」
ゴールデンカジノにて、俺はマルコとの対決ではたまたジャックポットを出していた…
「ダイスって…性格だけじゃなくて運も良いの…?」
「知らん!俺はそんなことはない!」
「でも、これが証明ですよ、ダイス」
隣にいるアカギとウンゼンも、驚きを隠せない様子だ。
俺は今、ポーカーをやっているのだが、出てくる役は全てフルハウス以上…
ましてや今の対決で出たのは、まさかのロイヤルストレートフラッシュ…
前の世界ではそんなことなかったはずなのに…なぜ…
「しかもその運は他の人にもうつってるからな…」
後ろでダーヌが言ったので、アカギとウンゼンがふと後ろを振り向くと…
「にゃあ!?また大当たり!?」
「…ええっと…私、何もしていませんが…」
ミミはスロットで大当たり、メノールはルーレットで一攫千金。
メノールに至っては不正を疑われてるレベルだ。
「…何者よ、あんた…神様なの?」
「神に近いお前が言うなよ…」
結局、3つのジャックポットを出してしまった俺らは、すぐにマルコに返金。
流石に俺らで扱える額じゃないので一部返金となったが、それでも中々の額だ…
「しかしなんなんだ、ダイスのその豪運は!是非とも僕に欲しいよ!」
「あげれたらあげるわ!」
と、みんなでわいわいと楽しくカジノをやっていると…
「…お、いたいた。ダイス殿」
クリスティーヌさんが俺らの元へやってきた。
クリスティーヌさんが来たということは…
「クリスティーヌさん、こんにちは。もしかして、ブロッサムさんが?」
「あぁ。治療が終わった。その報告だ」
「良かった…それじゃ、今からお見舞い行っても…」
「問題ない」
クリスティーヌさんは前に見せた優しい笑顔で言った。
「ありがとうございます。マルコ、また後で」
「うん、いってらっしゃい」
「みんな!行くぞ!」
俺はクリスティーヌさんの先導で、ブロッサムさんがいる病院へと向かったのだった…
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…病院に着いた俺らは、ブロッサムさんがいる病室の前で待たされていた。
「…いよいよだね…」
「たった数日しか会えてないのに、ここまで緊張するなんて…」
「色々あったからな…あんな酷いことされたんだし…」
「…後遺症なければ良いのですが…」
と、各々話していると…
「…みんな、どうぞ」
クリスティーヌさんが扉を開けて、俺らを中に案内した。
「失礼しまーす…」
そして、入るとそこには…
「…あ、みんな、いらっしゃい!」
…俺の初恋の人が座っていた…
「ブロッサムさん!お体大丈夫ですか!?」
「うん、平気!色々やられたけど、本部の治癒魔法部隊の力で元通りだよ!今は経過観察で入院してるけど」
「良かった…あ、あの!ブロッサムさん!」
アカギはそう言うと、かなり改まった様子でブロッサムさんを見た。
「ん?どうしたの?」
「あの…本当にごめんなさい!」
アカギは深々と、ブロッサムさんに謝った。
「え?え?ええっと…」
「…私が…妹を救いたいと言ったばかりに…このようなことになってしまって…」
「あー、そういうことね!それなら、妹ちゃんは救えた?」
「ウンゼンなら、今ここに…」
アカギが後ろに目をやると、ウンゼンが前に出て一礼した。
「本当に双子だ〜!可愛いね!」
「え、ええっと…」
「アカギちゃんの話なんだけど、私は気にしてないよ。むしろ、姉妹が再会できたのだから喜ばなくちゃ!ね?」
「あ…ありがとうございます!」
アカギは嬉しさのあまり、ブロッサムさんに抱きついたのだ。
その後会話が弾み、そろそろ俺らが出ないといけない時間に差し掛かってきた。
「…ダイス殿。そろそろ出る時間だ」
「あ、はい。ブロッサムさん、今回は本当に…」
と、挨拶して別れようとした時…
「待って!クリスティーヌ、あと少しだけ…時間いい?」
「え?」
「私ね、ダイスさんと話がしたいの」
「あ、あぁ。それなら時間は作れる」
「ありがとう。ミミちゃん、ダーヌ君、メノールちゃん、アカギちゃん、ウンゼンちゃん、ちょっと抜けてもらっていいかな」
「え、いいけど…」
ブロッサムさんの要望で、あと少しの時間だけ、俺とブロッサムさんの2人だけの時間を作ってくれた。
その話題は…
「…お久しぶり、大輔くん」
「…やっぱり、桜木さんでしたか…」
俺とブロッサムさん…いや、桜木さんと2人だけになった時、お互いに初めて、本当の正体に気がついた。
「大輔くん、変わったね。あの時はまだ小さかったのに、今では立派な大人になってて」
「逆に桜木さんは変わってませんね…まだあの時みたいだ」
「何よそれ、成長してないってこと?こう見えて胸は成長してるからね?」
「いや、そんなこと言ってませんけど…」
性格は少し明るくなったのか、あの時のような悲しい顔は一度も見せなかった。
それどころか、まだ少女のような可愛らしい笑顔が一段と増えた気がする。
「それにしても、大輔くんとこんな所で会うなんてね…もしかして死んじゃったから?」
「まぁ…不遇の事故で…」
「そうなんだ…私は…心臓の病気で…」
「やっぱり…」
自分の辛い話をしているはずなのに…桜木さんはまだどこか明るい表情を見せていた。
「それで、私はこの世界に来て戸惑ったのよね…死んだはずなのにって」
「俺もそんな感じだな…そういや桜木さん、心臓は今は…」
「大丈夫。病気ないって。だからこうやって楽しんで生きてる」
「良かった…」
俺は思わず心を撫で下ろした。
「大輔くん、まるで私のことのように言ってくれるね」
「そりゃそうですよ…桜木さんのそばに何回いたと思っているんですか」
「そうね。多分、前の親より会ってるかも」
そんなたわいもない話が続き、いよいよ俺もお暇しないといけない時間になっていった。
「…桜木さんは…これからどうするの?」
「私は…今の軍、やめようと思ってる」
「え、でも…」
「あそこには私の居場所はないもの。だから抜ける」
「そうなんですか…」
「うん。それで…本当は大輔くんのところに行きたかったけれど…やめようかな」
「…どうしてですか?」
「あの猫族の子、大輔くんのこと離れないもん。だから、私はそばにいれないなって…」
「え…それはどういう…」
桜木さんの言葉に引っかかった俺はそのことに聞こうとしたその時だ…
「ちょっと待つにゃあ!」
突然、ミミが中に入ってきた。
「うわっ!?」
「み、ミミちゃん!?」
「こっそり聞いてて私が出る幕じゃないかもだけど、これだけは言わせて欲しいにゃ!」
ミミはすごい剣幕で中に入ってきた。
「たしかに私は大輔が好きだにゃ!でも、ブロッサムさんも一緒だにゃ!ブロッサムさんも居たいと思うなら、私は歓迎するにゃ!そこを勘違いしないで!」
「…ミミちゃん…」
「言いたいことはそれだけにゃ!では!」
ミミはそう言うと、再び廊下へ出ていってしまった。
「…変なやつ…」
「ふふふっ…でも…そばにいたいなら…歓迎するか…ねぇ、大輔くん」
「ん?」
「…私、いていいかな?大輔くんの横にいても」
「…横かどうかはわからんけど…俺はいてほしいと思う。仲間として…友達として」
「…ありがと…それじゃ、ミミちゃんに甘えて…これからもよろしくね。ダイス」
「よろしく。ブロッサムさん」
「ブロッサムでいいわよ」
こうして、俺らの仲間に、ブロッサムも加わることになったのだった…
いかがでしたでしょうか?
ここでお知らせです。
次回の話をもちまして、この小説の更新を一時的に停止いたします。
次回の更新がいつになるかわかりませんが、よろしくお願いします。
では次回、お会いしましょう。




