第2話〜出会いと試練〜
どうも、VOSEです。
今回は、タイトルに『試練』と書いておりますが…言うほど試練は書いておりません。
最後の方にそれっぽく書いてあるだけです。
では、本編どうぞ。
…次に意識を取り戻した時、綺麗に積まれた石レンガの天井が見えた。
俺はふと、周りを見た。
切られたミリタリー用のベストがしっかりと修繕されており、身体には包帯が巻かれていた。
外はすっかり明るくなり、賑わう声が聞こえてくる。
俺は徐に身体を起こした。
随分と長く寝ていたのか、身体はカチコチで、起き上がるだけで精一杯だった。
そこへ、1人の女の人が入ってきた。
修道士みたいな黒い服と帽子をかぶっている。
「…起きましたか?」
見た目は30代くらいの若い色白の女の人で、目は澄んだ青だった。
「…アンタは?」
「ここの教会の修道女のマリア・アリーザです」
「マリア…?てことは…」
「はい、あなたが助けてくれた、ミミ・キャットの恩人…と言っておきましょうか」
マリア・アリーザは優しく俺に話してくれた。
「そうですか…俺は赤間大輔といいます。俺とミミを救ってくれてありがとうございます、マリア・アリーザ」
「マリアでいいですよ。それに、あなたをここに保護したのは、私だけじゃなく、ミミも手伝ってくれましたから」
「ミミが?」
「はい。この町に運ばれてきた時、あなたをこの教会で救護するようにと…」
「なるほど…」
俺は歯痒い気持ちで一杯になった。
「それよりも…あなたはミミの事を知っているようですね?」
「あ、いや…その…この話をしていいのかわからないですけど…俺、実は…別の世界から来まして…」
「わかります。その服は、私たちの世界にはありませんでしたので」
「それなら…」
俺は言葉を1つ1つ選ぶように、前の世界についてマリアに話した。
「…俺は小さい頃…傷ついた子猫を庇ったんです。その子は傷だらけになっていて…自分も同じような状況にいましたから見過ごせなくて…その後、俺はその子猫を…親に助けてほしいとせがんで…怪我を治してもらって飼うことにしたんです。その時につけた子猫の名前がミミって子で…前の世界での…相棒でした…」
俺は少し言葉を飲んだあと、もう一回ボソリボソリと呟くように話した。
「でも…俺は事故に遭って…その反動でここに来て…それで会った女の子が…」
「ミミであると?」
「それはわかりません…でも…」
と、俺が話していた時だった。
コンコンと音がした。それと同時にドアが開き…ミミちゃんが中に入ってきた。
「マリア…私と…入れ替わっていい?」
ミミちゃんは真っ直ぐな目で、マリアの方をじっと見ていた。
「…いいわよ。ね?」
マリアさんは俺の方を見て、にっこりと笑った。
そして、マリアがドアへ向かうと入れ替わりに、ミミちゃんが俺のところに来た。
俺は何を言われるのか心配になった。
そして、ミミちゃんが俺のところに来て、数分経った後…急に俺に抱きついてきたのだ。
そして…
「…大輔…会いたかったよぉ…うぅ…」
俺の耳元で、ミミが泣き始めた。
その一言で、俺はようやく心苦しさから解放された。
「…ミミ…お前が無事でよかった…」
これでようやく、俺とミミは無事再会できた。
ミミ曰く、俺の事故後、ミミも車に当たったショックで死んでしまったが、気がついたときには人の身体を手に入れたという。そして、当てがないので彷徨っているとこの町に着き、色んな人から蔑んだ目やありもしない事でいじめられてしまったのだが、その様子を見かねたマリアさんが教会で引き取ってくれて、しばらく育ててくれたのだという。
「…ミミ…本当にごめん…助けられなくて…」
「いいの、大輔…だって、この世界に来て2度も助けられたもの…私は…今でも相棒だって言ってくれたことが嬉しいもん」
「…ありがとな…ミミ…」
俺はミミの頭をクシャクシャと優しくかき回した。
そして、話題はミミの身体について…
「どう?大輔。私の人間の姿」
ミミの身体はすらっとしたモデル体型に、これでもかというほどの大きな胸、服は白と黒のゴスロリ調の服で、ミニスカに白黒のニーハイと少し底が厚い靴と…まぁなんとも俺好みの体型になってくれている。
「…ごめん、直視できない」
「ちょっと!せっかく人の体になったのに!」
「俺はそういうのはなぁ…」
そんなたわいもない話をしていき、あっという間に時間が過ぎていった。
「…それで、大輔はこの後どうするの?ここは私たちとは別の世界なのよ?」
ミミはそう言って、俺のことをじっと見つめた。
「どうするも何も…俺はここの世界の住人じゃないしな…ここから離れてしばらく身をひそめるくらいしかできないだろ。その点では、お前はこの教会に住んでいるんだから、お前はここで暮らしてもいいし」
「そんなことできないよ!私は大輔と一緒にいたい!」
「といわれてもな…」
そして、しばらく考えた後、俺はあることを思いついた。
「…なぁ、ミミ、あのログハウスあっただろ?あそこを直して一緒に住もうか」
しかし、ミミはこの提案に顔をこわばせた。
「うーん…大輔はログハウス直せるの?損傷がひどかったし…」
「そこは自分でどうにかするしかない…」
と、俺が頭を悩ませていると…
「大輔さん。あなたにお客様よ」
マリアが部屋に入ってきて、俺に会いに来た人がいると言ってくれた。
そして入ってきたのは、夜中に山賊に襲われていた長い耳の男だ。
「あぁ…よかった…昨日は助けてくれてありがとう…」
男はそう言うと、まるで神様が下りてきたかのような目で俺にお礼を言った。
「俺は気にしてないですよ。というか、よくここに俺がいるってわかりましたね…」
「いろんな人の伝手ですよ。そういえば名前言っていませんでしたね。僕はアルフ。この町を中心に貿易商をやっているんだ」
「俺は赤間大輔だ。まぁ、ダイスと呼んでもらえると…」
「ダイスだね。改めて、助けてくれてありがとう」
「別に大丈夫ですって…それより、ミミもそうだが、なんで山賊に襲われていたんだ?あの山はそういう輩が住んでいるということなのか?」
「えぇ…でも、生物を運ぶ時とかはあの道で運んで行った方が早いんですよ…危険な道なのはわかるんですが、早く帰りたいときとか急ぎの用事がある時は、危険でも通らざるを得ないんです」
アルフは深刻な表情を見せた。
「なるほどな…」
「それより、この前助けてくれたお礼がしたいのですが…何がお困りのこととかありませんか?」
そんなアルフの言葉に、ミミはすぐに食いついた。
「それじゃ、周りに建築関連に携わっている人っている!?」
「え、えぇっと…君は?」
「私はミミ・キャット。大輔の相棒よ!」
「ミミちゃんだね。幸いにも、僕がそういうのに長けているから、手伝うことができるよ」
「本当!?それじゃ、直してほしい家があるんだけど!」
「お安い御用さ。場所は?」
「えぇっと…またあの山に入るんだけど、いいかな…?」
ミミは肩をすくめながらそう言ったのだった…
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「…確かにこれは直すのに大変そうだね…」
アルフは壊れたログハウスを見て難しそうな表情を見せた。
「できそう…?」
「やってみるよ。まずは木をこらないとだね」
「わかった!」
ミミは元気よく、木に向かって飛び出した。
「んな!?ミミ!?」
何も持っていないミミが木に向かっていったので、どうするのかと声を上げたが…
「巨大爪!!」
ミミはそう言うと、持っていたペンダントを巨大鎌に変形させて木を切ったのだ。
これはおそらく『魔法』だろうが、実際に見たのは初めてだった。
「…あれ?大輔、どうしたの?」
「いや…この世界って、魔法が使えるんだってわかったからさ…」
「そっか…前の世界はこういうのなかったもんね」
ミミはそう言うと、巨大鎌を再びペンダントに戻した。
見せてくれたペンダントは十字型の銀のペンダントだ。
「これは…魔法具だね…しかもこれ、万能型の…」
アルフは俺の隣に来てまじまじとミミのペンダントを見た。
「これ、マリアがくれたんだ!なんか、大切なものを守れる力が欲しいってつぶやいていたらくれたんだ!これで守って差し上げなさいって」
「しかし、これは万能型ゆえに代償も…」
「この魔法具は使いすぎると疲労がいつも以上にたまってしまうらしいんだけど、時々使うにはいいんだって」
「なるほど…さすがマリアがくれたものだ…」
…と、ミミとアルフがしゃべっているのを、俺はぽかんと口を開けて呆然としていた。
「…あ、大輔…ごめんね、置いてきぼりにさせてしまって…」
ミミは呆然としている俺を見て、すぐに謝った。
「気にすることはないが…魔法具ってなんだ?」
「そういや、ダイスはこの世界の住人じゃないんだったよな…ちょっと解説するとね…」
アルフの説明によると、この世界は魔法が使えるための魔力を持っている人も住んでおり、その魔力を効率よく顕現させるために生み出された道具が『魔法具』なるものだという。
魔法具はタイプがあり、火や水などの元素属性によるものや、パワー、俊敏などの上昇を目的としたものなどがあって、結構ややこしい。俺の世界からしたらRPGゲームの要領で覚えていけばよいのだろうが、いかんせん俺はそう言うのには弱かったりする。
また、多くの魔法具は使うことに特段苦労するようなものはないが、ミミが持っているような『万能型』や『特殊型』などといったものにはそれなりの代償がかかるというのだ。
ただ、ミミは今のところ不具合がないので、アルフはそれに驚いていたというわけだ。
「…とりあえず、魔法具のことはわかった」
「まぁ、魔力を持っている人と持っていない人の割合は半々だから、魔力を持っているかいないかで争いはないんだけれどね…」
アルフはテンションを少し落としながら言った。
俺はそれに突っ込みたかったが、まだ会ったばかりということっもあり、ここはスルーすることにした。
「…とりあえず木は何本切ればいいかな?」
「そうだな…この損傷具合で周りの木の高さからだと…20本かな」
「わかった。あと19本、木を切って修復しよう」
こうして、俺とミミ、アルフでログハウスの修復に取り掛かったのだった…
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「…ふぅぅぅぅ…」
日が静まりかけた夕暮れに、木を20本切り終えた。
内半数近くをミミの魔法具によって伐採され、半分は俺とアルフで切り落とした。
「ようやく終わりましたね…」
「ごめんにゃさいにゃ~…途中でばててしまったにゃ~…」
「気にすんな、ミミ」
ログハウスの完全修復はまた後日やるとして、俺らは夜になる前に教会へ戻るため、馬車に乗って帰路に就いた。
「…そういえば、あのログハウス、よく見つけましたね」
「たまたまさまよってたら着いたって感じだ」
「なるほど…それにしても、あそこまで損傷が少ないというのはなかなか珍しい…」
「それはおそらく、周りの木で作ってたからかな」
俺は生い茂っている木を見て、感心するように言った。
「というと…?」
「この木はヒノキといって、建物を建てるのに最適な木なんだ。正しい使い方すれば、1000年以上も持つ建物にもなる」
「そんなにですか!?」
「あぁ。現に、床が崩れていないのが何よりの証拠。壁の損傷はおそらく山賊がやってきて襲ったからだろう」
「そうなんですね…」
しばらく馬車を走らせて、無事町に着くと、憲兵が慌てて走ってやってきた。
「あなたたちですか!?あの山小屋を直そうとしているのは!?」
憲兵はそう言うと、俺らが直しているログハウスの方を指さして言った。
「そうですが…」
俺は憲兵にそういうと、憲兵はすごく困った様子で事情を話してくれた。
「あそこは山賊が町に襲ってこないように協定で結んだ、いわば休戦のための目印なんです。元々あそこは我々の山小屋だったんですが、山賊の脅威が迫ってきて、あそこの山小屋も襲われたんです。そして、われわれの隊長が休戦協定を結ぶためにあそこのログハウスをそのままにし、二度と我々が立ち入らないようにしていたんです。それを直してしまったら、この町は…」
憲兵の困った表情に、俺も思わず困ってしまった。
というのも、その山賊の脅威がどのくらいのものなのかがわからないからである。
そんな困ってしまっている俺を助けてくれたのは、ミミだった。
「それなら、しばらくあそこのログハウスは直しませんので、そのことを隊長に伝えてもらえると嬉しいです」
「わかりました。ご理解いただき、感謝します」
憲兵はそう言うと、踵を返して持ち場に戻っていった。
「…大輔、話はこの後するから」
そう言ったミミと、一連の話を聞いていたアルフの表情には、暗い何かが立ち込めていたのだった…
いかがでしたでしょうか?
ヒロイン予定のミミちゃんの服装は…自分の好みであることと、某ゲームに出てくるキャラに触発された感じになっておりますので、そこの部分に関しては見逃してくれるとありがたいです…
とりあえず、今回はここまでにさせていただきます。
では次回お会いしましょう。