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第27話〜証拠を見つけろ〜

…俺らはなんとか軍に見つからずに喫茶店にたどり着いた。

店はまだ空いている。


「…いらっしゃい」


強面のマスターが表情を変えずに挨拶した。


「すみません。ええっと…マスター…でいいですか?」

「構わないさ」


スキンヘッドのマスターは、自分の頭と同じくらい綺麗なカップを拭きながら、静かに応答した。


「…あなたとブロッサムさんはどういう関係ですか?」

「どういう関係もない…ただの客とマスターだ」

「そんなはずはない」


俺はマスターの言葉をすぐに否定した。


「なんでそう思う?」

「ほぼ勘です。強いていうなら、お二人があまりにも馴れているからです」

「常連ならば馴れていてもおかしくないだろう?」

「いや、マスターとブロッサムさんの馴れは常連とマスターの関係じゃない。まるで親子みたいだ。あんな風に挨拶出来るのは、常連という言葉じゃ収まらないと思っているからです」


それに、最初ブロッサムさんとこの店で会った時、ブロッサムさんの生き生きとした声、それがお客とマスターの関係ではないと思っている…

少なくとも、これは俺の主観ではあるが、どことなく確証しているところがある。


「…それじゃ聞こう。お前にとってブロッサムは…」

「親友です」


マスターが質問する前に、俺はすぐに答えを言って、マスターは大きく目を見開いた。


「ダイス!?」

「あんた何言ってんの!?」


周りにいる奴らも俺のやり取りに驚きを隠せなかった。


「ほう…たった2日程度しか会わなかったのに、親友だと?その根拠はどこにある?」

「ありません。これもあくまで自分の話ですが…自分の大切な人に似ていたのです」

「姿が?」

「姿だけではありません。性格は…確かに違うところはありますけど…雰囲気というか…気配が、俺の大切だった人と一緒だからです。それだけで親友だと呼べるのかわかりませんが…俺は彼女を助けたいんです!」

「…助けるとは?」

「順番がおかしくなってすみません…実は…」


俺は今、ブロッサムさんが捕らえられていること、ブロッサムさんを助けるために軍の不正の証拠を探している事を告げた。


「ブロッサムが!?」


マスターはまたひどく驚いた表情を見せる。


「…やはり、ここに証拠、あるんですね」

「…あぁ…ブロッサムは…私の娘だ…」


マスターは正直に話してくれた。

マスターとブロッサムさんは、実際には血縁関係は無いものの、養子として育ててきており、マスターがカフェをオープンしてからも、父と娘の関係は良好だという。


「…しかし…どうしてここだとわかったんだ?」

「ブロッサムさんがここを集合場所に指定したからです。立地からして、人目が付きにくい…おまけに日が差し込まないという最悪な場所でありながら、ここにしたのは、おそらく彼女は俺らに託したのだと…勝手ですが、そう思います」

「そうだな…確かに、ここは軍すら来るのが躊躇う場所だ…わかった。こっちに来い」


マスターはそう言うと、店の奥へ続く扉を開けてくれた。

そこにはかなり狭い、上る階段があるが…


「階段に登って待ってろ」


マスターがそう言ったので俺らは登ると、マスターはなんの変哲もない踊り場の壁をあれこれいじり始めた。


「…何してるんだ?」

「…おそらく隠し通路だろ…」


そんな俺の予想通り、マスターが壁を弄り終えぐっと押し込むと、その壁が沈み、開き始めたのだ。

その壁の向こう側には、下へ続く階段があった。


「ここだ」


マスターがそう言って下へ降りていった。

俺らもそれについて行くように降りて行くと…そこにあったのは小さな部屋だった。

壁一面には写真や領収書、誰かが書いたメモまである。


「…ブロッサムはここに、軍の不正を集めていた。これがその全てさ」


マスターがそう言ってある本を持ち、俺に渡した。


「…これは?」

「報告書だ。軍の不正に関する情報が全て書いてある」


俺はその本を開けて読んだ。

軍がスタングと手を結んだ理由がお金に困っていたということ。

スタングが実験のために街全体を実験場とし、そのために軍はスタングの不正を概ね見逃すこと。

流石に全部見逃すと街はおろか、国に察知されてしまうのである程度は捕まえるものの、すぐに釈放すること…

細かいところはあるものの、大体はこんな内容だった。

なんの実験かは掴めていないものの、これだけあれば十分証拠として機能できる。

ちなみに、その報告書の中にある実験の中に、メノールのことも書かれてあった。

メノールに魔法の種を接触させ、どのような反応を見せるのか実験するというものだ。


「…不愉快極まりないな…人をおもちゃとして認識してねぇのかよ…」


俺はこの報告書の実験内容を見て、知らず知らずのうちにイライラしてきていた。

そのイライラの理由が、非人道的であること、何の罪もない人間の命を脅かしかねない事をしていることについてだった。

もちろん、メノールがされたことに対してもだ。

そんな様子を見たメノールは、そっと俺に近づいてきた。


「…優しいのですね。ご主人様は」

「え?」


唐突にメノールが言ったので、俺は突拍子もない声を上げた。


「何の関係もないあなたがここまで本気になってくれるのは、きっと優しいからなのだと思います。何もかも嫌になった私を救おうとした、何も関係ないご主人様が、とても優しいと思います。ですから…そのような顔をしないでください」


メノールはふふっと微笑むように俺を見た。

俺はそれを見て少しむず痒くなった。


「むぅ…ダイス惚れてる〜」

「惚れてねぇ!」


ミミがまた嫉妬めいた事を言い出したので、俺はすぐに突っ込んだ。

まぁ、ミミのその言葉に突っ込んだことで、俺は少し気が楽になったけどね…


「マスター。これ持っていきます。いいですか?」

「あぁ。いいとも。しかしどこへ持って行くんだ?」

「俺の…もう1人の親友の元へ」


俺はそう言うと、一礼して地下室から出た。

みんなも続いて地下室から出ていった。


「…親友…か…ま、本当は恋人なんだろうがな…」


マスターはそう言うと、俺らより遅れた地下室を出たのだった…


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


…着いたのはゴールデンカジノ。

ここならと思い、俺はマルコの元へ戻った。


「お!ダイス!お帰り!」


マルコは社長室で書類整理をしていた。


「あ、悪い…仕事中だったか?」

「まぁ、そうだけどひと段落したからいいよ。それよりどうだった?」

「これ」


俺はマルコに不正の証拠である報告書を見せた。


「それか!」

「そう。それで、マルコにお願いしたいんだけど…これをジリッカにすぐに送れる装置はないか?」

「ジリッカ?どうしてだい?」

「俺らが軍の本部に直接言ったって意味がない。それなら面識のあるジリッカ軍経由で言った方が動くだろうと思ってね」

「なるほど!それならいいものがあるよ!こっち来て!」


マルコがそう言って社長室から出て案内し始めた。

まるで迷路のような館内を歩き回りたどり着いたのは…大きな部屋だった。

真ん中にはまるでウォータースライダーを模型化したような、配線がぐるぐると球を巻きつけている機械があり、その下には色々な人が手紙やら何やら、その機械の下にある読み取り機に入れていた。


「…これは?」

「これは位置転移魔法を応用させた『レタートランス』って言うものなんだ」

「レタートランス…?」

「そう!これで高速で目的の場所に送ることができるんだ」

「マジで?」

「本当だったら、これがある同士でつながらないといけないんだけど、あらかじめ指定した場所へ、誰にも知られずに送ることができるんだ」

「んなことできんの!?」

「何せ、うちは大物政治家も集うカジノだからね。知られたくない手紙とかはこういうところで送っているのさ!」

「それならうってつけだな!それじゃ、まずセリーヌさんに報告してから送るよ!」


俺はすぐにセリーヌさんにクロスタルで現状を報告した。

ちなみに、レタートランス自体、中々の機械音を出しているので、俺は若干大声でセリーヌさんに報告する羽目になった。


「そうか、あったか!」

「はい!それで、今からレタートランスを使ってそちらに送りますのでよろしくお願いします!」

「れ、レタートランス!?そんなものどこにあるんだ!?」

「ゴールデンカジノです!」

「あー…なるほど…」


一定の理解を示してくれたので俺はすぐにマルコに報告書を預けた。

マルコはすぐにレタートランスのオペレーターに事情を言って、座標をジリッカ軍本部になるように設定して転送させた。


「これで大丈夫!それじゃ戻るよ!」


俺らは報告書を送ったことでひと段落し、社長室へ戻った。


「ふぅ…疲れたぁ…」


ウンゼンちゃんは社長室に着くなり、椅子にごろんと座り込んでしまった。


「全く…ウンゼンは何をしているのかしら…」

「いいじゃんいいじゃん…ねぇ、ミミ」

「呼び捨て!?」

「だって私達年上なんだからいいでしょ?それに、ミミとならなんとなくだけど仲良くできそうだし!」

「むぅ…別にいいけど…」

「でしたら私はメノールさんと仲良くさせてもらいます」

「え、私ですか?」

「はい。よろしいでしょうか?」

「私は大丈夫です。よろしくお願いしますね。アカギ様」

「アカギで十分ですよ」


女の子組はすっかり仲良くなっている。

俺ら男子組は蚊帳の外だ。


「…くー、羨ましいぜ…あの花園は…」

「それでしたら、当店のスタッフお呼びしましょうか?選りすぐりの子手配しますよ」

「いや、それはいい…絶対気持ち悪がられるからな…」

「間違いない…」


ひと段落ついたことで、各々気持ちが緩んでいたが、俺はどこか胸騒ぎを感じていた。

嫌な予感しかしない…そう思っていたら…


「オーナー!」


作業員の1人が慌てて社長室に入ってきた。

かなり深刻そうな顔を見せている。


「どうしたんだい?」

「これを!」


そう言った作業員が見せてきたのは号外紙。

そこに書かれていたのは…


『稀代の謀反者!ブロッサム・アリアが明日処刑!』


…俺の予感を的中させる悪い知らせだった…

いかがでしたでしょうか?

もしよろしければ評価や感想など、よろしくお願いします。

では次回、お会いしましょう。

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