第21話〜またまた協力者?〜
…ブロッサムさんと別れた俺らは、情報収集のために前に立ち寄ったカジノ…カラノーム・ゴールデンカジノへ向かう事にした。
このカジノはアトラス王国全体に支店を置いてある大規模かつ由緒正しきカジノらしく、政界の重鎮ですらこぞって通うカジノらしい。
前回来た時は、ゴールデンカジノ史上稀に見るジャックポットを引き起こしてしまい、その影響で返金を行った際にはオーナーから直々にお礼を言われるほどの、ある意味大問題を起こしてしまった…
なので、このカジノに来ることは正直不安だったが…
「…ようこそ!ダイスさん!よくぞいらっしゃいました!」
…入り口でしばらく待つようにと言われ、そこへ現れたのは金髪のショートヘアの男性…カラノーム・ゴールデンカジノのオーナー、マルコ・エストワールである。
「え!?お、オーナーさん!?なんでここに!?」
「いやいや、だってダイスさん、このカジノでジャックポット起こしたのではないですか!」
「いや、普通ジャックポット起こしたら出禁にされるかと…」
「とんでもない!我々ゴールデンカジノ系列は、『年もお金も上から下まで楽しませる!』というモットーがございますので、ジャックポットを起こしたからといってそのようなことは致しません」
「すごいな…それ…」
「もちろん、あまりにも倫理的にひどいお客様がいらっしゃいましたら出入り禁止の処置は致しますが、お金の面に関しましてはこちらでは問題にはしておりませんので!」
マルコさんは屈託ない笑顔で中に案内してくれた。
「それで、今回はどちらでお遊びになさいますか?今回は直々に私と対戦しますよ!」
前にカジノのお客さんと話していた時、ここのオーナーは遊ぶことが好きでよく色々なお客さんと対戦しているらしい。
しかも対象は大金持ちだけでなく、小さな子供や老人までだとか…
その遊んでいる様子を見ていると、周りも笑顔になることから『笑顔製造機』という異名を持っている。
「あー…ちょうどオーナーさんが…」
「マルコで構いませんよ」
「それじゃマルコさんで…マルコさんがちょうど来てくれたので、少しお話が…」
「お話?」
「…まぁ…結構込み入った話で…」
俺の様子を悟ってくれたマルコさんは、なるほどと言わんばかりの頷きを見せ…
「…わかりました。少しこちらへ」
と言って、スタッフが入る裏側へ案内してくれた。
向かった場所は地下のとある一室。
その部屋に入った俺らは驚きを隠せなかった。
「…なんだこれ…」
地下室という割にはなかなか豪勢なお部屋で、地下にいる事を忘れさせそうな大きなお部屋であった。
「ここは私の社長室さ。僕はどうも下にいないと気が済まなくてね…みんなが楽しむには自分は下に回って楽しんでもらう。そう思うと泊まっているお客様より上にいることに申し訳なく思ってね」
「そこまで配慮する必要はないかと…」
「そうしないと自分が許せなくなるからさ。それに、下に回ることでどんな奴が不正しているかわかるしね」
「なんだ、その理論…」
「いや意外と下に回ることでバレる嘘だってあるさ。コソコソしてる奴らはだいたい下で何かをしている。ならばそこを覗けば必ずバレるってこと」
「いやいや…理論的におかしいって…」
と、これ以上堂々巡りが起きそうなのでいよいよ本題に入る事にした。
俺らは応接用の椅子に、マルコさんはいかにも社長の椅子と言わんばかりの革の椅子に座った。
「さて…お話なんですが…マルコさんはスタングについて知っている事はありますか?」
俺がそう切り出すと、マルコさんは一瞬戸惑った。
が、すぐにいつもの笑顔になった。
「知ってるも何も…昔の一部のゴールデンカジノはスタングの根城だったからね」
「そうなんですか?」
「今は僕が一味を徹底的に追い出したから、もうここに関わってくることはないけどね」
「それじゃ…アジトがどこにあるのかわかりますか?」
俺がアジトについて聞くと、マルコさんはさらに戸惑い、驚いた表情を見せた。
「あ、アジトかい!?正気なのか!?」
「実は…」
俺はアカギちゃんの妹を救出するために、アジトを突き止めておきたいと伝えた。
マルコさんはうんうんと頷いた後、笑顔で…
「わかった。カジノの人脈で見つけてみるよ」
「ありがとうございます」
マルコさんはそう言うと、早速机の中からクロスタルを取り出した。
「えー、こちらマルコ、聞こえるかい?…ちょっと尋ねたいんだが…」
俺らに聞こえるようにマルコさんは誰かに話を始めた。
その内容というのは、カラノームの街全体にある倉庫をリストアップしてほしいというものだ。
さらにマルコさんは立ち上がって本棚に手を伸ばし、とあるものを俺に渡した。
「これは…?」
「カラノームの地下を調べた地図だよ。これは念の為ではあるけど、スタングのアジトはこういう地下にもあるからね」
マルコさんは俺らに対して終始笑顔を見せてくれた。
ちなみに、なんで倉庫を調べたのかというと、マルコさんの前の社長が残した日記に載っていたという。
前の社長はスタングと繋がりがあったらしく、やりとりを日記に残していたのだ。
その日記を見せてもらうと、人身売買の拠点として倉庫を活用していたことが判明した。
「本当は捨てるかどうか迷ったけど、経営としての腕は確かだったから、この日記からどうやって回すか勉強させてもらってるんだ」
マルコさんは日記を残している理由としてそう語っていたが、俺らからしたらファインプレーであった…
しばらくして、街中の倉庫をリストアップした紙が来た。
そしてこの紙が来るまでの間に、俺はブロッサムさんをゴールデンカジノへ呼んでおいた。
「…失礼します」
甲冑を着たブロッサムさんが丁寧にそう言って中に入ってきた。
「おや、あなたはカラノーム軍副隊長の…」
「ブロッサムです。ミスターマルコ、協力に感謝します」
2人はお互いに礼儀正しく握手した。
「…というか、ブロッサムさんって、カラノーム軍副隊長だったの!?」
ミミはマルコさんの言葉に驚きを隠せなかった。
ミミだけでなく、ダーヌやアカギちゃんも驚いていた。
「えぇ。私はカラノーム軍副隊長、ブロッサム・アリアですよ」
甲冑を着ているからか、朝の時のような少女の面影はなく、軍人の威厳がそのまま出ていた。
「それで、ミスターマルコが調べた倉庫のリストというのは?」
「こちらです」
マルコさんが差し出したリストは全部で5枚だが、1枚200個ベースで載せられていたため、その量は膨大だった。
「…なるほど…ここは私に任せてもらいますでしょうか?」
リストを見たブロッサムさんは、マルコさんにリストを借りると言わんばかりの目で言った。
「大丈夫ですよ」
「それではお借りします」
ブロッサムさんはそう言うと、座ってリストと対峙した。
そして、ものすごいスピードで目と手を動かしていった。
一つ一つの倉庫の詳細を目と指で追っているのだ。
そして一通り見終えた後、目をつぶって天を見上げ、何かを思い出しながら、これまたものすごい勢いでペンを取って斜線を入れ始めた。
この作業を始めてからものの数分で、ブロッサムさんはリストを見直したのだ。
こうして浮き出てきた怪しい倉庫は、全部で3つ。
「…一応、私が覚えている中で、倉庫としてちゃんと機能していないのはこの3つね。用途がわからないところを残したって感じなのだけれど…」
「それでも十分です。あとはどうやって拠点を探すか…」
と悩んでいると…
「…あの…」
アカギちゃんが小さく声を上げた。
「…その役目、私に任せてくれませんか?」
いかがでしたでしょうか?
もしよろしければ、評価や感想などよろしくお願いします。
では次回、お会いしましょう。




