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第20話〜協力者〜

…カラノームに着いたのは朝が明けた頃であった。

俺はカラノームの軍施設に赴き…たかったが、今回不正をしていることが発覚しているため、迂闊に寄ってあれこれ言うのはまずいと感じていた。

そこで、今回はカラノームの中心街の外れにある小さな喫茶店で、セリーヌさんの同僚と合流を果たす事にした。


「…しかし、この喫茶店で良かったのかにゃ…」


ミミが気まずそうに喫茶店をぐるりと見た。

シックな黒の木で作られており、あかりもオレンジでいかにも大人っぽい雰囲気を醸し出している。

ただ、それだけならばミミは怯えることはない。

問題は…立地だ。

入り口は建物と建物の間の路地裏にあり、日差しが入ってこない。

まだ朝であるのだが、昼になっても外の明るさだけでは何時なのかわからないレベルだ。


「仕方ないだろ…合流する場所はここだって言われてるんだから…」


俺が右手で、返事のお手紙に付随してあった地図をペラペラと掲げた。

ちなみにこの喫茶店は強面のおじさんが立っているカウンターを始め、その後ろにはいくつかテーブル席が配置してある。

と言っても、決して広いわけではないが…

俺らはとりあえず、それぞれ飲みたいものを注文し、今回手助けをする人を待った。


「…あの…」


ふと、隣にいるアカギちゃんがそわそわしながら俺に話しかけた。


「私…妹を助けたいのですが…」

「焦るな…俺らだってすぐに助けに行きたいが、そのためには色々と情報が欲しいところなんだ…」

「それでも!あの子は今でも苦しんでいるかもしれないんですよ!」


アカギちゃんはこののんびりさに嫌気が差したらしく、すぐに声を荒げた。

俺はその気持ちを理解した上で…


「それじゃ、今からどうやって君の妹を探すんだ」

「そ、それは…」


アカギちゃんは俺の一言に、一瞬で縮こまった。


「気持ちはわかるさ…でも、無闇に襲ったところで返り討ちにされるだけでなく、アカギちゃんが亡くなる事だってあり得るわけだ。例え妹を救えたとしても、アカギちゃんがこの世にいなくなる事になったら、妹も責任感じるだろうしさ」

「…そう…ですね…」

「…ウンゼンちゃんは俺が絶対に助ける。だから、アカギちゃんも出来る限りのサポートをしてもらいたい」

「…わかりました」


アカギちゃんはどこか不信感をあらわにしながらも、俺の言葉に納得してくれた。

しばらくして、喫茶店のドアのベルが鳴った。


「マスター、こんにちは!」


入ってきたのはかなり明るい女の子だ。

身長は俺よりやや小さめの子である。


「こんにちは。ブロッサム、お客さんだよ」

「うん、知ってるよ!私が呼んだからね!」


女の子…ブロッサムさんが俺らのことを呼んだと言ったので、おそらくセリーヌさんの同級生だろう。


「やっほー。君がセリーヌちゃんの代わりに来た人なの?」

「はい。そうで…す…?」


ブロッサムさんが俺の方に覗いてきたので、俺はその顔を見て肯定しようとしたが…その顔を見てびっくりした。

俺がこう言うのもなんなんだが…正直に言おう。初恋の女の子に非常に似ている。

いや、似ているなんてものじゃない。瓜二つというか…これで俺の初恋の人の名前が出てきてもおかしくないのだ。


「…あの…どうしました?」


ブロッサムさんは思わず苦笑いを浮かべていた。

俺の顔がおかしいのか、はたまた反応に困っていて逆に困っていたのか…兎にも角にも、俺はすぐに誤魔化した。


「い、いえ!なんでもありません」

「良かった!それじゃ、ここに座るね!」


ブロッサムさんはそう言うと、俺の反対側の席に座った。


「改めて、私はアトラス王国軍、カラノーム所属のブロッサム・アリアと申します。よろしくお願いします」

「ダイスだ。よろしく」


俺とブロッサムさんで握手を交わした。


「隣と後ろにいるのは…」

「隣にいるアカギちゃんを除いては俺の連れだ」

「ミミ・キャットよ。よろしく」

「ダーヌ・シュトラウスだ」

「メノール・カウベルです」

「アカギです。よろしくお願いします」


みんなでブロッサムさんと挨拶をした後、早速俺らは今回の手順の話をする事にした。

というか、みんなのフルネーム初めて聞いた気がする…


「さて、早速ですが、今回のカラノームにおけるスタング壊滅作戦について話していこうと思うのですが…資料を読んでいただいてますか?」

「あぁ。どれも十分な説明がされててよかった」

「ありがとうございます。今回は、ダイスさん達には本当に申し訳ないのですが、我々カラノーム軍の不正の検挙、およびスタングの壊滅をさせていただきたいのです」

「まぁ、事情はある程度は把握してるんだが…」


俺は少しうーんと唸りながら、隣にいるアカギちゃんの方を見た。


「そういえば、お連れさんではないのですよね?どうしてここに?」

「実は…」


俺はアカギちゃんの双子の妹がスタングによってさらわれている事、奴隷商に売り飛ばされる可能性があり早急に救出しなければならないことを伝えた。

ブロッサムさんはその事を聞いて驚愕し、アカギちゃんの方を見た。


「そうなのですね…わかりました。少々強引ではありますが、計画の変更を行います」


ブロッサムさんがそう言うと、持ってきたバッグから紙と羽ペン、インクを取り出し、スラスラと何かを書き始めた。

書き終えるまでの時間は1分程度。

かなり早いペースで書き終え、書いたものを俺に見せてくれた。


「本当ならば、警察の役目を持っている我々軍の膿みとなっている奴らの摘発を終えてからスタングの壊滅をする事で、適切な処理を行うことができるのですが、アカギちゃんの妹の安否を確認し、それから不正をしている警察の摘発を行うことにします」


たった短時間で思いついた事に驚きを隠せなかったが、それだけではない。

先ほど書いてもらった紙には、この後の日程とかが詳しく記されており、かなり説得力のある1枚に仕上がっていた。


「しかし…奴隷商のアジトなんてわかるか?」

「それならば、私達の仲間でなんとかします。分かり次第、クロスタルでお教えします」


実は今回、セリーヌさんから俺ら、にクロスタルを貸してもらっており、そのクロスタルを使って任務を遂行する事にしたのだ。

待ち合わせ時間ではない朝なのに、どうやってブロッサムさんが来てくれたのかというと、誠にめんどくさいが一旦セリーヌさん経由で伝えたのだ。

クロスタルは遠距離通信ができる利点があるが、通信したい相手同士の照会番号みたいなものを通さないと通信できないという欠点があり、今回の時間変更などをするにはこうやって仲介する方法以外、勝手に通信できないようになっているのだ。


「…よし、これで完璧っと」


個人で持っているブロッサムさんのクロスタルと、俺らが預かっているクロスタルとの通信を可能にする設定をし終え、ブロッサムさんは俺らに笑顔を見せた。

その笑顔を見て、やっぱりあの子だな…と思った俺は、ふと後ろから殺気が漂う感覚を覚えた。


「…え、ええっと…ミミさん?どうされました?」


ブロッサムさんが殺気を放っている犯人の名前をぽろりとこぼしてしまった。

思わぬところから名前を告げられてしまったミミは、すぐに誤魔化した。


「だ、大丈夫です!なんでもありませんから!」


ミミはそう言って誤魔化した後、すぐにボソリと…


「…ダイスのバカ…」


と言っていた。


「それでは、また改めて分かり次第、連絡させていただきますので、今回はお休みになってください。アカギちゃんも、妹ちゃんが心配だと思いますけど、私とダイスさん達で救ってみせますので…」


ブロッサムさんはアカギちゃんに笑顔で話し、それを見たアカギちゃんはどこか安心している表情を見せた。


「ありがとう…ございます…」


アカギちゃんは涙ぐみながらブロッサムさんに深い礼をしたのだった…


いかがでしたでしょうか?

もしよろしければ評価や感想など、よろしくお願いします。

では次回、お会いしましょう。

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