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第19話〜助けた子は…〜

「…あ、ありがとうございます…」


…女の子は、道に迷った挙句におなかをすかせてしまったために倒れてしまったらしい。

そのため、俺らは持ってきていた食料の一部を調理して女の子に食べさせた。

女の子は犬の耳と尻尾が生えていて、落ち込んでいるからか、耳がしゅんとなっていた。


「しかし、お見苦しいところをお見せして申し訳ありません…」

「ううん。大丈夫だよ。逆に生きてて良かった」


ミミは火をくべながら女の子に話しかけた。

ちなみに今回は急ぎの用事でもないので、日が暮れていたこともあり、女の子と共にこの場所で一晩泊まる事にした。


「そういえば…ええっと…」

「アカギと申します」


神々しく輝く金色の髪に赤いメッシュの女の子…アカギちゃんは、丸太に座ったままお辞儀した。


「アカギちゃんはどうして倒れていたんだ?」

「ええっと…恥ずかしながら…急用で家を出て、その上食料を持ってきてなかったので、お腹が空いてしまって…」

「急用?どこへ?」

「カラノームという街です」


アカギちゃんは深刻そうな顔を浮かべながら行き先を言った。


「カラノーム?それなら俺らも一緒だな」


ダーヌが笑顔で肉を頬張りながら話した。


「そうなのですか?それじゃ、ここからどのくらいで着きますか?」

「そうだな…馬車で半日といったところだな」

「そう…ですか…」


アカギちゃんはかなり落ち込んだ顔になった。

さっきよりかなり深刻そうだ。


「…良かったら話を聞きますけど…」


メノールが上体を前にしてアカギちゃんに何かあったのか聞き出した。

しかし…


「ありがとうございます…でも…もう、大丈夫です…」


アカギちゃんはどんどん声が小さくなった。

顔を俯かせているが、肩が上下に動いているから、おそらく悲しいことが起きたのだろう…


「…任せてくれ」


俺は咄嗟にその一言が出てきた。


「…え?…」


アカギちゃんは顔を上げて俺の顔を見た。

顔全体が涙で埋もれるほど泣いていた。


「何かあったのかは知らんが…どうしてもカラノームに行きたいんだろ?それなら任せてくれ。ダーヌ。その飯食い終わったらすぐに出発しよう」


俺はダーヌにすぐに出発することを伝えると…



「んなっ!?マジで!?」


ダーヌは持っていた肉を落としそうになった。


「あぁ。もちろん、山賊が出るかもしれんが、こっからは急ぎで向かうつもりだから、よろしく頼む」

「急ぎでか!?全く…帰ったら飯いっぱい食わせろよ!」


ダーヌは少々怒りながらも肉を一瞬で食べ終え、馬車の方へ向かい、準備した。


「…か、カラノームへ連れて行ってくれるのですか?」

「話は馬車で聞く。ついて来い」


俺はそう言って、手にしていたパンを口に入れ、水で流し込んで立ち上がり、馬車の中へ案内した。


「…ありがとう…ございます!」


アカギちゃんは立ち上がり、深々と俺に礼をしたのだった…


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


…アカギちゃんの話を聞いた俺らは愕然とした。

アカギちゃんは双子の妹のウンゼンちゃんと、生まれてからずっと住んでいる村で、家族と一緒に仲良く暮らしていたという。

しかし、つい先日、村が何者かに襲われるという事件が発生したのだ。

アカギちゃんのいる村は、カラノームの領土ではあるが、平和であったために憲兵はおらず、この緊急事態に対処出来なかったという。

そのためアカギちゃんの家を主体とする自警団が、憲兵の代わりとして何者かを倒すべく立ち上がったのだが…結果は全滅…

唯一残ったアカギちゃんとウンゼンちゃんが何者かを倒そうと動いたのだが、力の差が歴然。

アカギちゃんは倒され、ウンゼンちゃんが連れ去られたのだ。

そして、ウンゼンちゃんを連れ去った男の会話を聞いたアカギちゃんは、その言葉に絶句した。


「…この子をカラノームの奴隷商に売ったら儲かるぞ…だって…」


男の会話を聞いたのはそこまでで、アカギちゃんはその後意識を失った。

幸いにも生き延びた村人達によって、アカギちゃんは意識を取り戻すも、ウンゼンちゃんのことを助けたいと思い、制止を振り切って村から出たのだという。


「…通りで、その怪我を…」


ボロボロになった体の応急処置をしていたメノールが、悲しい声をあげた。


「…私は…あの子を守らなきゃいけないのに…情けなくて…」


アカギちゃんは顔を俯かせたまま呟いた。

責任を感じているのだろう…


「…それで、妹ちゃんを連れ去った犯人の目星は付いているのかにゃ?」

「わからないです…」


1番重要なところなのだが、犯人が分からなければ、妹の救出も難しいだろう…


「…どうしたもんかな…」


俺はこの状況証拠の少なさに頭を悩ませていると、意外…いや、やや想定内の話が舞い込んできた。

その話をしてくれたのは…メノールだ。


「…あの…もしかしてですけど…その境遇、私に似ています」

「「え?」」


メノールの言葉に、ミミとアカギちゃんは驚いたが、俺はその言葉を聞いてある事を思い出し、ピンときた。


「そうか…メノールも確か連れ去られたんだっけ…」

「えぇ。あの時は私は犯人が分かったのですが、その状況と似ているのです。私の家族を殺し、そして連れ去られた…」

「そ、それは本当ですか!?」


メノールの告白に、アカギちゃんは大きく目を見開いて迫った。


「え、えぇ…あの時は貴族が犯人でしたが…あ」


その時、メノールは俺の方をチラッと見た。

俺はその目線に合わせると、首を小さく縦に振った。


「…どういうことかにゃ?ダイス〜」

「おそらく…ウンゼンちゃんを連れ去った相手がわかった」

「本当かにゃ!?」

「予想だけど…いや、十中八九こいつらだろうな」


俺はそう言うと、立ち上がってダーヌに耳打ちした。


「ダーヌ。あとどのくらいかかりそうだ?」

「急いでいるんだが、あと2時間くらいだ」

「そうか…あと少しだけ、頑張ってくれ」

「分厚い肉3枚分、追加でおごりな」

「わかったわかった」


俺は今の進捗を聞いたあと、すぐに馬車に入った。


「それで、犯人は…誰なんだにゃ?」

「ミミならすぐにわかるだろ…」

「え?ど、どういうこと?」


ミミの頭にはてなマークがずらりと並んでいる。


「わからねぇのかよ…いや、こっちが事前に調べた資料にあっただろ…人身売買に関する話ってさ…」

「…え?もしかして…」


この言葉に、ようやくミミが理解した。


「…おそらくウンゼンちゃんを連れ去った連中は…俺らの敵…スタングだ」


俺は深刻な顔をして、ミミ達の緊張した顔を見たのだった…

いかがでしたでしょうか?

ぜひよろしければ評価や感想などよろしくお願いします。

では次回、お会いしましょう

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