第1話〜再会は…〜
どうも、VOSEです。
とりあえず、話すことは今のところないので、本編へどうぞ。
…どうやら俺は『異世界』というものに来てしまったらしい。
周りの生い茂っている植物は、知っているものもあるにはあるが、図鑑を読み漁っている俺でも知らない植物が大半だった。
俺の持ち物は特になく、サバゲーで着ている防護服のみが唯一の持ち物だ。
最悪襲われても大丈夫なような造りになっているため、身の危険はとりあえず回避できるものの…
「…身を潜められる場所とか必要だし、食料もないからなぁ…どうしたものか…」
俺は困り果てながらさまよっていると、遠くでボロボロになっているログハウスを発見した。
「…何もないよりかはマシだな…」
俺はそのログハウスへと向かった。
ログハウスは急な斜面を少しだけ切り開いたところに立っており、屋根は半壊、壁も穴が開いて、崩れかかっていた。
幸いにも床はそのまま無事であるため、ここで俺はしばらく居座ることにした。
「…さて、次はご飯問題だが…」
次々に襲い掛かる問題に頭を悩ませていたその時だ。
「キャーッ!!」
女性の悲鳴が聞こえた。
俺はその声が聞こえたと思われる場所へ、急いで向かった。
その現場に着くと、かごを持っているローブを被った女の子が、2人の山賊らしき奴らに襲われていた。
「や、やめて…お願い…」
「そいつくれよぉ…俺らも腹が減って仕方ねぇんだ…」
「これは…みんなのものなんだから…」
「いいだろ?そのくらいさぁ…」
「ひっ!」
俺はそれを見かねてすぐに草むらから飛び出した。
「ファイアァァ!」
俺は山賊の一人にエルボーを決めた。
「んな!?」
山賊の仲間が、突然の襲撃に驚きを隠せなかった。
「今のうちに逃げろ!」
「は、はい!ありがとうございます!」
女の子はそう言うと山賊の目を盗んでその場から去った。
その時にふと、見慣れた猫耳と尻尾のリボンが付いていた。
「…いや、まさかな…」
俺はある仮説を立てたが、この場はとりあえず山賊を退治することに決めた。
「てめぇ…何しやがる!」
「なにもくそもねぇ。なんも持ってねぇやつを襲うなんてのは卑怯じゃねぇか?」
「お前も急に襲ってきて卑怯だろうが!!」
「卑怯者に言われても意味ないけどな」
「ちくしょう…やってやろうじゃねぇか!!」
2人の山賊はそう言うと、連携して俺に襲い掛かってきた。
俺は過去に空手や柔道、剣道などの武術系を習ってきていたから、こういうのには慣れていた。
実際にコンビニ強盗を倒したこともあるし…
俺は最初に襲ってきた奴を背負い投げで投げて絞技で気絶させた後、次に襲ってきた奴を寸前で避け、手刀を首に入れた。
「全く…人を襲うのはやめろよ」
俺はそう言うと、気絶した2人を目立たないかつ安全なところへ避難させた後、仲間が来るだろうと察知してその場から離れた。
そして、拠点とするログハウスに着き、座って一旦落ち着いた。
「…とりあえず日本語はしゃべることができるな…さてどうしようか…」
俺は天を仰ぎながらこの後どうしようかと頭を悩ませた。
しばらく頭を巡らせたところで、俺は女の子が走っていった方角へ向かうことにした。
その方向へ向かったということは、おそらくそこに集落があるということだろう。
そんな推測で俺は女の子が向かった方へ歩いて移動することにしたのだった…
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…山道を歩いていくと、少し開けたところに小さな町を見つけた。
高い塀に囲まれており、町の入り口と思われる門には憲兵らしき人が立っていた。
通っていく人たちはやはり西洋風の服を着ていたので、一人だけ場違いな格好に止められないか心配になってきた。
「…どっか抜け道ないかな…」
俺は周辺を回って歩いていくも、完璧というほど整備されており、どうにも入れそうになかった。
「さてどうするか…」
と、また頭を悩ませていると…
「あの!」
聞いたことのある声が聞こえた。
俺はふっと振り返ると、黒髪の女の子が立っていた。
黄色のキラキラとした目に、顔立ちが良く、右耳に傷があり、尻尾には赤いリボンが付いている、可愛らしい女の子だ。
「さっき助けてくれた人ですよね?先ほどはありがとうございます!」
「いや、人違いじゃないか?」
今までけなされてきたこともあって、こうやってお礼を言われることに慣れていない俺は、淡々と言っているように見えて、かなり照れていた。
「いえ、人違いじゃないです!私を助けてくれた人を見間違えることなんてありえません!」
「いや…人違いだ」
俺はそう言い残してその場から離れた。
あの耳の傷と、小学生の頃につけた赤のリボンが、その子がミミであることを指しているのだが、にわかに信じられなかった。
異世界に来てしまったとはいえ、ミミの特徴に酷似している女の子を目の前にして、その子がミミであることをどうにも信じきれなかった。
俺は頭をブンブンと振って、人通りの多い山道から離れて森に入っていったのだった…
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…仮拠点のログハウスに着いた俺は、お腹の虫を抑えながら、人が来てもバレない所で横になった。
これ以上外に出たら、何が出てくるかわからないからだ。
しばらく横になり、ふと気配がしたので俺は目を覚まし、静かに起きた。
キシキシと音が鳴っているので、俺は影に紛れて近寄ってくる音に襲いかかる準備をした。
そして、その音が大きくなったその時。
「…だ、誰かいませんか〜…」
心細い声が弱々しく聞こえてきた。
俺はその声を聞いて、入れていた拳を解いた。
そして、俺は影からゆっくりと出た。
声の正体は、あの猫耳の女の子だ。
手にはランプとカゴがある。
「うわっ!…びっくりしたぁ…」
女の子は驚いて尻餅をついた。
「びっくりしたのはこっちだ。なんでここにいるんだ」
俺はそう言うと手を差し出して、立ち上がらせた。
「なんでって…私、お礼がしたいんです!ここに来てから、ずっといじめられてて…こうやって助けてくれたのは、マリアとあなただけなんです!」
「…そうか…」
俺は思わず心苦しくなった。
そして、俺はその子が持っているカゴに目がいった。
「あ、これ、マリアが私にくれたものなんです!お礼をあげたいならこれをって!」
女の子は暗闇にも負けない笑顔で、俺にカゴを差し出した。
中にはパンや果物、そして…ローストビーフがあった。
「このローストビーフ、何故かわからないんですけど、私大好きなんですよね…特に中の部分が好きで…」
それを聞いた瞬間、俺はその子を抱きそうになったのだが、女の子に対する強烈なアレルギーが阻んでいた。
「とりあえず、これを食べてください!」
女の子がそれを言ったのと同時に、ぐうぅと大きな音が聞こえた。
俺もお腹を空いているのだが、決して俺ではない。
「…えへへ…私ですね…ごめんなさい、一緒に食べてもいいですか?」
「別に構わない…」
俺はそう言うと、その場に座った。
女の子も同じように座り、持っていたカゴとランプを置いて、籠の中の食料を食べた。
パンも果物も美味しかったが、ローストビーフは格段に美味しかった。
しかし、女の子は少し物足りない感じでそのローストビーフを口に運んでいた。
「…不味いのか?」
俺は単刀直入に言った。
「い、いえ!美味しいです!美味しいですけど…なんか、物足りなくて…」
「物足りない?」
「は、はい!マリアのローストビーフはとっても美味しくて、町1番って言っても過言ではないですけど!でも…なんか、寂しくて…」
「寂しい…か…」
俺はその子の言葉に、思わず口をつぐんだ。
「…そういえば、名前聞いていませんでしたね!」
「わざわざ名乗る必要なんてないだろ…」
「そんなことないです!私は、あなたの名前を一生忘れませんから!」
「…そうか…」
俺はボソリと寂しげに呟いたあと…
「…大輔だ…赤間大輔…」
自分の名前を押し殺すかのように言った。
「あ…アカマ…ダイスケ…?」
「ダイスって呼んでも構わん」
「ダイスですね!私はミミ・キャットです!私、獣人族の猫科で、さっき来てくれたあの町の中にある教会に住んでいるんです!」
「ミミ…キャットね…いい名前だ。マリアがつけてくれたのか?」
「いえ、なんかこう…不思議な感じで…なぜか、私の名前はミミっていうことだけ覚えているんです。それ以外の記憶は全く無くて…」
「なるほどな…」
俺はそう言うと、カゴの中の食料を急いで平らげた。
「ふうっ…とりあえず、これで帰りな」
「え!?でも…」
「夜は何がいるかわかんねぇ…ましてや、このボロ小屋にいつまた山賊が来るかわからねぇしな…」
「さ、さっきのはたまたまで…」
「そのたまたまがまた起きかねないだろ…というか、さっきの道、大通りからなんで離れてんのにこっちに…」
と、俺が言ったその時だ。
「うわぁぁ!」
今度は男の悲鳴が聞こえてきた。
「ちっ…またなんか厄介なことが起きたな」
俺はその声を聞いて、勢いよく走り出した。
「ま、待ってください!」
ミミといった女の子も俺を追いかけるように走り出した。
俺とミミが悲鳴が聞こえた場所に着くと、今度は馬車が山賊に襲われていたのだ。
「やめろ!それは急いで運ばなきゃいけないものなんだよ!」
「ほう…金銀財宝…こいつらはうちに蓄えられそうだ」
「や、やめてくれ!」
長い耳の男が山賊に捕まり、山賊は馬車の中を物色していた。
俺とミミは草むらに隠れ、様子を見ていた。
「た、大変…!早く助けなきゃ…」
「いや、ミミちゃんはここにいてくれ。ここは俺1人で行く」
「で、でも、山賊は10人ですよ!?」
確かに、今いる山賊は視認できる範囲で10人程度、しかも気配もあるから15人以上はいる。それでも…
「…君はとりあえず町へ行って避難するんだ。いいな」
「で、でも!」
と、俺とミミちゃんで小競り合いしていたその時だ。
「おい!そこにいるのは誰だ!」
山賊の1人が俺らの存在に気がついた。
「くそ…いいな、君は早く町へ行け!」
俺はそう言うと、草むらから出た。
「あ、アニキ!こいつです!さっきこいつに襲われたんです!」
先程ミミちゃんを襲った山賊の1人が、山賊の親玉に報告した。
「ほほう…貴様か、うちの子分に手を出したのは」
「手を出したも何も、襲っていたのはそっちだ。挙げ句の果てにはこんな馬車も襲いやがって…テメェらは頭の中トンチンカンだな」
「何…?そこまで言うなら、お前を木っ端微塵にしてやる!」
山賊の親玉はそう言うと、腰につけていた剣を取り出した。
そして…
「かかれぇ!」
親玉の一言で、子分が俺に一斉に襲いかかってきた。
俺は動きを読み取り、子分をかわしながら次々に気絶させていった。
ある程度人数が減ったところで…
「早く!馬車走らせろ!」
「は、はい!」
長い耳の男はそう言うと、なんとか中が無事の馬車を勢いよく走らせた。
「ちっ…貴様ァ!」
「俺の任務はこれでほぼ完了だ。あとは、テメェを…」
と、俺は子分が持っていたナイフを抜いて、親玉に構えたその時だ。
「キャァアッ!」
ミミちゃんの悲鳴が聞こえた。
ミミちゃんが山賊に囲まれていたのだ。
「さっきの可愛い子だなぁ…本当は奴隷にしたかったけどヨォ…さっきの鬱憤晴らさせてくれやあ!」
山賊の1人が剣をミミちゃんに向けて振り上げた。
「やめろ!」
「今だぁぁ!」
親玉は俺が一瞬の隙を狙って襲いかかってきた。
俺はそれを一瞬で避け、親玉を木にぶつけさせて気絶させたあと、ミミちゃんを庇うように山賊に背中を向けた。
山賊が振るった剣は、俺の背中を分断するかのように切った。
「ぐあっ!」
俺の背中から血しぶきが飛んだ。
「ダイスさん!」
ミミちゃんがそう叫んだその時、ミミちゃんは思わず何かを思い出したみたいに目を見開いた。
「くそっ!テメェ!」
と山賊が再び剣を振ろうとしたその時だ。
「おい!そこで何をしている!」
遠くからそんな声が聞こえた。
おそらく先程の馬車の人が憲兵を呼んでくれたのだろう。
「ちっ…ずらかるぞ!」
数分のうちに意識が回復した親玉の一言で、山賊達は撤退していった。
「君達!大丈夫か!?」
「は、はい!でも、この人が!」
「っ!?背中から血が出てるぞ!しかも大量だ!おい!早く救護馬車を呼べ!」
そんな会話が遠くの方で聞こえるように感じていた。
「しっかりして!ねぇ、しっかりって!」
そんなミミちゃんの声が遠くなり、俺はその後、意識を失ったのだった…
いかがでしたでしょうか?
はい、早速あらすじには書かれてない新キャラクター(?)でございます。
こういう感じで書こうかなとは思っているのですが、なんか色んなところから批判が来そうで…
まだまだこれからも書いていきますので、よろしくお願いします。
では次回お会いしましょう。