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第17話〜新生活〜

…朝日が俺の瞼をくすぐってきたので、俺はようやく目を覚ました。

木の天井が見え、ようやくログハウスに引っ越してきたことを実感させた。

俺らのオフィス兼住宅のログハウスが、外も中も完成したので俺らは早速一晩寝ることにしたのだ。

思いの外よく眠れた俺は、体を起こして背伸びをした。

それと同時にノックの音が聞こえた。


「ご主人様。起きられていますか?」


ノックの後、メノールの声が聞こえた。

おそらくモーニングコールであるだろうが、俺は昨日そんなことは頼んでいない。

ということは…


「起きてるよ。でも、なんでメノールがそこに?」

「メイドの時の習慣です。確認も込めてノックをした次第でございます」


やはり、小さい頃からメイドを強要させられていたことだけある…

でも、俺はそこまで偉い人というわけでもないし、メノールには自由にしてもらいたい気持ちがあったから…


「なるほどね…でも、別にしなくてもいいよ。今後メノールも疲れた日の次にこれをやるのは流石にきついだろうしね」


俺は今日限りにしようと思って話した。

が…


「いえ、私は大丈夫です。助けてくださったご主人様の為なら何でもします」


なぜかメノールは一歩も下がろうとしなかった。


「いやいやいや…そんな大したことしてないぞ?俺…ただ応援するとしか言ってないし、救ってもない気が…」

「その言葉に救われたのです。私にとってあなたは恩人なのです。なので、私は自由に、あなたについていこうと思っているのです」


そこまで言われたらそのあとは何も言えなくなった。

俺は仕方ないと言わんばかりにため息を吐いて…


「…わかった。後で今後のことについて朝ごはん食べながら話すか」

「わかりました。ご主人様」


メノールがそう言ったのが聞こえると、軽いステップを踏むかのような足音が遠ざかっていった。


「…全く…」


俺は勢いよくベッドから降りて、着替えに入った…


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


今回オフィスも兼用するということで、少々高めのソファとテーブルを用意して簡易的な応接間をリビングに設置した。

リビングは結構広めに作り、ダイニングキッチンがついている。

そのリビングには大きなテーブルと椅子があり、そこでご飯を食べるようにしてある。

また、応接間用とは別に6人並んで座れるベッドを直角に2つ配置し、ゴロンと寝られるようにしてある。

リビングから伸びる廊下には上へあがる階段とゲストルームがいくつかあり、その奥にはお風呂がある。

お風呂はメノールとメノちゃんの力によって作られた石で作られており、単純泉の温泉である。

おそらく疲労回復のために入っていたのだろう…

2階は各々の部屋があり、階段登って手前からメノール、ダーヌ、ミミ、そして俺である。

広さはそこまで広くなく、逆に狭くもない設計にしてあるので、悠々と過ごせる。

また、今後の改築も見越して、1階と2階の廊下の突き当たりは何も部屋を用意していない設計にもしてある。

俺は部屋から出て階段を下ると、ものすごくいい匂いが立ち込めてきた。


「すげぇいい匂いだな…」


思わず独り言を言うほどの美味しそうな匂いにお腹をすかせながらリビングに入ると…


「あ、来ました。ご主人様」

「お!ダイス!見てみろよ!すげぇ美味しそうな飯だぞ!」


すでに起きていたミミとダーヌが飯を食べており、メノールが追加のおかずを作っていた。

ちなみにその追加のおかずというのは、ミミが魚でダーヌが肉で、結構大量に作っていた。

今日の朝ごはんはパンに目玉焼き、サラダ、野菜のスープに、任意で肉か魚を選んでもらうような感じの朝ごはんだ。


「これだけの献立を昨日考えるなんてすごいな…」

「小さい頃から料理も学んでいましたから。献立、掃除、洗濯…ありとあらゆる家事をこなしてきましたので、このくらいは余裕です」


メノールは胸を張って自慢げに話してくれた。


「それだったら俺が出る幕なさそうだな…」

「ん?ダイスは家事出来るのか?」


俺がボソリと言った言葉に、ダーヌが思わず反応してきた。

目を丸くしてるから珍しいのだろう。


「まぁ、前の世界では何もかも自分でやっていたからな。それこそメノールがやってるようなことをやってたよ」

「うんうん!特にダイスのローストビーフは絶品だにゃあ〜」

「ローストビーフ!?なんて贅沢なもん食ってんだよ…」

「いやいや、猫にローストビーフは結構いいんだぞ?もちろん塩分とか取らせないためにソースはかけなかったりするし、牛ばっか食べると偏食になるから他のもんも食わせるようにしてあるけれどさ…」

「にしても、ご主人様も料理をお作りになられるとは…」

「今度作ってやるよ。とりあえず飯を食わんとな」


という事で、俺はひとまず朝ごはんを取ることにした。

その後にようやくご飯を作り終えたメノールも合流し、4人の食卓に。

と言っても、ミミとダーヌはすでにお腹が膨れるまで食べており、俺とメノールの2人のみの食事になった。


「ここんところは少しばかり慌ててたから、こうやって朝飯を食えることがほんと、楽でいいんだよなぁ…」

「そうだね〜。でも、ちゃんと仕事はやっておかないといけないにゃあ〜」


俺はぐいっと背伸びしながら独り言のように話し、ミミはその言葉に呑気に答えてくれた。

一方でダーヌは冷静に今後のことについて聞いてきた。


「そのためには、まずはどの仕事をするんだ?」

「んまぁ、傭兵とは言ったものの、実質何でも屋みたいなことをやろうかなって。俺らにしかできない仕事とかね」

「私達にしかできない仕事?」


メノールも俺の言葉に食いついてきた。


「んまぁ、本当に色々だ。鉱石探しだったり、救援だったり、敵の殲滅だったり…」

「まるでギルドみたいだにゃあ〜」

「ん?ギルド?」


俺が今後のことについて話し、それに対して言った言葉に、俺は思わず話を止めてしまった。


「うん。この世界には『ギルド』があるにゃ。それも色々なギルドがあって、それぞれの街に支部があるんだにゃ。私が言ったギルドは主に冒険者ギルドや採鉱ギルドとかだにゃ。」

「あるんだ…」

「ええ。ありますよ。ご主人様の前の世界にはなかったのですか?」


メノールが頭を傾げて俺に質問してきた。

ちなみに俺とミミが別の世界からやってきたことについては、前の女子トークの中で出てきたので、メノールも俺とミミの事情は知っている。


「んまぁ、名前が違うだけであるっちゃあるんだよな。こっちだと『組合』という感じだけどな」

「そうなのですね」

「でも、俺らはそういうのは入らないでおこうかな。制約あったら動きづらくなるし、ギルドには頼めない依頼が来るかもしれないしね」

「わかったにゃ〜!」


そして、今後しばらくは軍からの依頼…といっても、おそらくマカノンからの請けでやる感じではあるが、いずれは困っている普通の人の依頼をこなすことに力を入れることで方針が固まった。

最初は依頼が来ること自体レアなので、来た依頼に関しては断らないようにしようとも考えている。


「さてと…少し落ち着いたことだし…俺とダーヌでちょいと出かけてくるから、2人は留守番にしててくれ」


俺はダーヌとの約束を守るため、男2人で出かけようと思って言ったのだが…


「何でにゃ!?ミミも行く〜!」

「ご主人様をお守りするのが私の役目です。お供させてください」


と、女子2人に押されてしまった。


「別にいいんじゃねぇか?ダイス」

「いいのか…?」


ダーヌも2人の同行に好意的であったため、今回も4人で出かけることにした。

アルフから譲り受けた馬車を使って、前に射撃の試し打ちをしたクサモリ平原へ向かった。

ちなみに俺らがいるログハウスはジリッカの南東に位置しており、ジリッカを経由してからクサモリ平原へ入るルートで向かっている。

そのクサモリ平原へはおおよそ2時間で着いた。

まぁ、馬車自体ゆっくり走らせていたから時間かかったけどね。

着いて早々、俺はダーヌに向かって質問した。


「さてと…ダーヌ。この前俺の武器について知りたいんだよな?」

「あぁ。ダイスが使ってる武器ってなんだそれと思ってな」


ダーヌは俺の腰に付いてあるハンドガンを指差して言った。


「んまぁ、これは前の世界にあった武器を模した魔法具だな。形としてはまんま俺が使ってた武器と一緒だけど…この武器の名前は『銃』っつうんだ」

「ジュウ?」


ダーヌは何て呼べばいいかわからない様子で、真似て言葉にしてきた。


「まぁ、そんな感じだとこの世界にはないだろうね。とりあえず百聞は一見にしかず。見てみて欲しいのと、あと耳だけは押さえてくれ。ミミとメノールも同じく塞いでおいて」


俺はそう言って、100メートル先の板に銃口を向けた。

もちろん、基本だから両手で押さえて発砲させる。

パンッ!

トリガーを引いて、乾いた銃声が平原いっぱいに鳴り響いた。


「うるせぇ〜!何なんだ!その武器は!」


ダーヌが大声で俺に怒鳴りつけた。


「まぁ、そういうもんなんだ。んで、板の方を見ると…」


俺は板を取って、銃口が当たったことを確認させた。

ちなみに今使ったのは本物の銃弾。レベルとしてはMAXくらいだ。


「ん?これ…鉄の塊か?」

「銃弾って言って、素材はまさしくその鉄なんだ」

「す、すげぇ…めり込んでる…」

「これが人に当たると、時には貫通して死ぬことがある」

「え…」


死ぬというワードにダーヌはもちろん、聞いていたメノールも驚きを隠せなかった。


「そ、そんな危険なものを何で持ってるんだ…?」

「俺が使っていたものは危険なものではないけど…いや、危険か…少なくとも命の危険を晒すようなものではないが…んまぁ、この武器なら扱いやすいし、慣れてるからな」


そして、俺は銃の安全装置を作動させた。


「それに、扱いさえしっかりしておけば他人に当たることはほぼない。逆に粗末にしたら自分にさえ危険を及ぼすものでもあるんだがな」


俺はそう言うと銃をクルクル回した。

ダーヌとメノールの怖がって思わずしゃがんだが、ミミは扱いを見てきていたのでそれほど怖がることはなかった。

ただビクッとしたけどね…


「こ、怖いなぁ…」

「まぁ、今のはこの銃のレベルをマックスにしたからな」


俺はこの世界でついたレベルを変えられるつまみをダーヌに見せ、同時にそのつまみを回して見せた。

そして、板を再び設置して、安全装置を外し、その板に向かって発砲した。

パンッ!

先ほどと同様の銃声が鳴ったが、当たったのは魔力が込められたBB弾が放出された。

BB弾は板に当たると前と同様にどこかへ行ってしまった。


「…まぁ、こういう武器ってことだな」


俺はハンドガンのグリップをダーヌに向けた。


「…え?」


ダーヌは突然俺がハンドガンを渡す素振りを見せたから驚いていた。


「実際に撃ってみ?もしかすると扱うかもしれないからな」

「お、おう…」


ダーヌは恐る恐るハンドガンを手に取り、俺と同じように銃を構えた。


「俺は教えるのは下手だからあれだけど…撃って反動があるからそれに負けないようにちゃんと腕を落とさずにしっかり構えること。いいな?」

「わかったわかった…」


ダーヌはしっかりとハンドガンを構え…トリガーを引いた。

パンッ!

ダーヌが撃った弾は板に当たり、どこかへ飛んで行った。

と言っても、狙っていたところよりはるかに上であり、当たった理由がダーヌの身長が低かったことで何とか板に当たったという感じだ。

撃ったダーヌは目を丸くしていた。


「んまぁ…まだまだってとこだし、使うこともないからどうしようもないけどな」


俺はダーヌからハンドガンを返してもらい、ポケットにしまった。


「そんな武器だったんですね…」


ずっと目をつぶっていたメノールは、俺のハンドガンを見てぽかんとしていた。


「でも、この武器でいろんな人を亡くしているのも事実なんだ。むやみに使うことはしないさ」


俺が笑顔で答えると、メノールがある疑問をぶつけた。


「それでは…ご主人様は近接戦の時はどうされるのですか?」

「そういや…」


俺は近接時の戦い方のことを考えてなかった。


「とりあえず、困ったときのアルフかな…帰りにアルフの店に寄るとしよう。今日はせっかくだし、このまま平原でのんびりするか」

「確かに、この平原は美しいですね。せっかくならピクニックでいろいろなものを用意すればよかったのですが…」

「急遽決めたことだ。また今度、その時はピクニックとしてみんなで来よう」

「そうしようにゃ~」


俺らはクサモリ平原で、ダーヌから銃の説明をしながらのんびりをすることにしたのだった…


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


…ところ変わって、ジリッカの国軍施設…


「…隊長、失礼いたします」


セリーヌが隊長室に入った。

中ではマカノンが書類の整理を行っていた。

と言っても、ちょうどその書類の整理が終わり、そのタイミングを見計らってセリーヌが中に入ったというような感じだ。


「お、セリーヌ来たか」

「はい。隊長が欲しかった調査結果が出ましたので、ご報告に上がりました」


セリーヌは持ってきた書類をマカノンに渡した。

その書類を見たマカノンは、やはりと言わんばかりににやりと笑った。


「しかし、どうしてこのことが分かったのですか?」


セリーヌはまるで預言者に問うような感じで聞いた。


「おかしいと思わなかったか?なぜあの事件が表沙汰になった…今まで『悪魔の種』はあくまで噂程度なほどで我々が感知できなかった。それなのに今回は一般の人に、寄生されたメノールが知られることになった。そもそも彼女の欲が『復讐』ではあったが、それでなら『悪魔の種』を植え付けると周りに認知されることは確実だったはずだ」

「なるほど…」

「それにもう一つ気になることは、彼女はなぜ『悪魔の種』を手にしたのかということだ。彼女の話では、家に置いてあって愚痴をこぼしたらその通りの事件が起きたという。そしたら欲望のままにアレに欲をぶつけたらしいが…」

「確かに…ヨーキリスの事件の時は裏ルートから手に入れたもので間違いないのですが…」

「それの答えがこれだ」


マカノンはそういうと持ってきた調査書を掲げた。


「それで、この事件についてはダイス一行も一緒にやってもらおうと考えている」

「彼たちをですか?確かにお世話になりましたが、これ以上は…」

「彼の眼は正義にあふれている。そんな彼がいれば、この事件を解決できると思ってな。ただ…」


マカノンは期待を込めている反面、少し心配していることがあった。


「彼は今は傭兵だ。最悪容疑者を殺すことも考えるかもしれない。その時はセリーヌ、君が止めてくれないか」


マカノンは心配そうにセリーヌを見つめたが、彼女はその言葉を聞いて思わず微笑んだ。


「それはないと思います。彼は優しい人です。よほどのひどい相手ではない限り、彼は殺すことはないと思います」


その言葉を聞いたマカノンは、心配そうな顔からすぐに明るい顔になった。


「そうだな…彼は信頼に足る男だ。今回の事件、頼んだぞ」

「わかりました。あとで彼の家を訪ねます」


セリーヌは笑顔で、マカノンに一礼して部屋を去ったのであった…

いかがでしたでしょうか?

もしよろしければ評価や感想など、よろしくお願いします。

では次回、お会いしましょう。

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