第16話〜住む家が完成!〜
…ジリッカに戻り、セリーヌさんと官舎で別れた後、俺ら4人は建設途中のログハウスへ戻った。
「…ここが…ご主人様のお宅なんですか?」
「まだ建設途中なんだけどな…」
再建途中で仕事が来たから、いかんせんあちこちで木が散乱している…目も当てられない状況だ。
「さてと…これからどうしたもんか…」
「とりあえず木を切ってくるかにゃ?」
「そうだね…疲れてるところ悪いけど、出来るか?」
「ダイスのためなら頑張るにゃあ!」
ミミはそういうと張り切って拳を上げた。
「それでしたら、私もお手伝いしましょう」
メノールもミミと一緒に木を切ってくると言ってくれたが.
「メノールは大丈夫なのか?ミミは力があったりとか魔法具とかで対応できるが…」
「大丈夫です。私は魔物を使えると言った事がありますよね?」
「あぁ、そうだな」
「メノちゃんはですね…」
ミミはそう言うと、手のひらを今度は地面にかざすように出した。すると、手のひらから光が放出され、その光が地面に着くや否や形となっていった。
そして現れたのは、俺らより少々大きいメノちゃんだった。
「メノちゃんはこのくらいのサイズにもなるんですよ。力もありますから、手伝ってくれます」
「でも、元々メノールを食おうとしてたやつだろ?」
「はい。でも今は和解してますので」
「和解…?」
「私がメノちゃんの身体に住み着く代わりに、私に力をくれるという約束をしたのです」
「そ、そうなんだ…」
細かいところはどうしようもないから、これ以上は踏み込まないとして…
女の子2人に木を運ばせるのもアレだが、ミミはなぜか力持ちだし、メノールも大丈夫というならば…ということで、2人には木を切ってもらう作業をやってもらうことにした。
俺とダーヌは木をさらにログハウスに適した形にするために加工する作業に着手した。
「…というかさ…一つ気になったんだけどさ…」
作業中、ダーヌがボソリと俺に向かって呟いてきた。
「ん?なんだ?」
「ダイスが持ってるその武器って…なんなんだ?」
「あぁ…そういえば言ってなかったっけか…」
銃のことについては極力言葉は控えるようにしていたので、俺の武器について知っているのはミミとアルフくらいしかいない。
「んじゃ、ログハウスが完成したら教えるよ。まずは住むところなんとかしないとな」
「わかった。約束だぞ」
「あぁ」
その後のダーヌの気合の入れようはかなりすごく、俺の3倍くらい作業を終わらせたとかないとか…
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…その日の夕方…
「…マジで早く終わったな…」
俺は再建されたログハウスを見て驚いていた。
というのも、ダーヌの気合の入れようにミミとメノールが感化されてしまい、俺の予想より遥かにスピードが上がっていたのだ。
俺とミミ、ダーヌ、メノールの部屋の他、ゲストルームも付けるような構造にしようと思っていたので元の家より広めに作るという想定外の建設があったのにも関わらず、完成まで残り3分の2程度だったところからほぼ半日で完成させるという荒技をやってのけた…
「これが私たちの家かぁ…」
ミミは新しい家に目を輝かせていた。
「さて、今日からこの家に住む…と言いたいところだけれど、まだ家具とか買ってないし…今日も教会に戻って一夜過ごすことにしようか」
「あれ?元々あった家具は?」
ミミはてっきり、俺らが来た時の家具をそのまま使うものだと思っていたらしい…
「いや、今回は家具とかも自前で用意しないといけないんだ。元々は軍の施設だからね。だから備品とかは全部軍に返さなきゃいけないんだ」
「えぇ〜、めんどくさーい」
「仕方ない。そういう約束だったからな…」
「家具はどこで調達するんだ?」
「アルフの店に行ってみるよ。アルフのところは品揃えが桁違いだから」
アルフの店は入ったことはないが、そもそもの商店の建物自体がかなりの広さで、何かしら色々と置いてあるだろうと予想していた。
「んで、家具のデザインとかどうするんだ?」
「それはみんなに任せるよ。ミミならわかるだろうけど、俺の前の家なんてのは…」
「うん…なんというか…殺風景…」
俺の言葉に、ミミは思わず肩をすくめながら答えてくれた。
そもそも俺はそういうデザインとかには興味が湧かず、必要最低限なものだけを選んで買ったくらいで、デザインとかについては考えた事がなかった。
「なるほど…わかりました。ご主人様の力になります」
「俺も感じ良さそうなものは選ぶつもりだ。まぁ、基本メノールかミミに最終的に決めてもらうけど」
「ありがとう、助かる」
ということで、ひとまず家の外観が完成した俺らは町へ戻ることにした。
その道中…
「…ご主人様。教会に戻るとおっしゃられましたが…なぜ、教会へ?」
あまり事情を知らないメノールが質問してきた。
「住む家ができるまで居候させてもらっているんだ。流石に野宿じゃきついしね」
「そうだったのですか」
「まぁでも、そろそろ俺らはおいとましないとね。マリアにはほんと、お世話になったから」
そんなこんなで、俺らはジリッカまで下山、マリアの教会で一晩過ごした。
ちなみに、初対面のマリアとメノールはお互いに丁寧に挨拶してすぐに意気投合したとかないとか…
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「…本当に行っちゃうのね」
別れる間際、俺らとサヨナラをするということで、マリアと孤児院の子たちが見送りに来てくれたが、やはり悲しい目をみんなしていた。
特に双子のペネとペルはかなり寂しげだった。
まぁ、俺の飯を盗もうとして俺が優しく叱った時以降は寡黙だったペルが饒舌になるほど仲良くなったしな…
でも…
「はい。行きます」
俺の意思は固かった。
「それに、いつでも会えますから。すぐそこの山なので」
「そうね…それじゃ、時々会いに来て。この子達も歓迎するから」
「はい。ありがとうございます」
そして、俺はちびっ子達の目線になって話し始めた。
「みんな。今日でお兄さん達いなくなるけど、また遊びに来るから。それまで元気でな。生きていれば必ず会える。絶対にね」
俺は優しく微笑み、子供達はそれを見てつられて笑顔になった。
「…本当に、お優しいのですね。ご主人様は」
俺の後ろで、メノールがこそこそとミミとダーヌに話しかけた。
「俺もあんなに子供達に信頼されてるのは初めて見た…ダイスってそんなに凄いやつなのか?」
「そういうことはにゃいと思うけど…ダイスは他の人に優しいんだよね…汚いやつ以外は…」
「そういやヨーキリスっつうアホ野郎を倒したんだっけか…」
「そうそう。でも、子供とか純粋な心を持ってる人には誠心誠意、心込めて接しているから、信頼されるんだよね」
「わかります…ご主人様の言葉に、私も救われましたから…」
ミミ、ダーヌ、メノールは子供達との最後の挨拶をしている俺の姿を見て、優しい目で微笑んだ。
そして俺らは、孤児院の子達と手を振って別れたのであった…
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…教会のみんなと別れた俺らは、早速アルフの店に赴いた。
「お!ダイスいらっしゃい!」
相変わらず商店の人達が慌ただしく作業をしている中、書類とにらめっこしていたアルフが俺に気がついて挨拶してくれた。
「どうも、アルフ」
「どうしたんだ?こんな時に来て。それに仲間が増えたみたいだけど…」
「初めまして、ダイス様のメイドのメノールでございます」
「ん?メイド?」
アルフが案の定、目を丸くさせた。
「そんな反応するよな…んまぁ、色々事件があって、その時に知り合った子だ。正直メイドはいらないと思ったけど、彼女の意思でやってるから黙認している」
「なるほどね…それで用件は?」
「家具を見たいんだが、あるか?」
「あるよ!うちは品揃えいいからね!んじゃこっち来て」
アルフは俺らを奥に催促した。
俺らはアルフについていくように中に入ると、そこには椅子やテーブルなど、様々な家具が綺麗に並んでいた。
「ここが家具のコーナーだ。好きなもの選んでくれ。会計は後で僕が見るよ」
「ありがとう」
アルフはそう言うと、すぐに書類を片付けに戻っていった。
俺らはログハウスに合うような家具を見るため、部屋の中をくまなく見渡した。
「ダイス〜!こいつはどうだ?」
「木のテーブルか…しかも年輪がくっきりしてる…いいんじゃないか?」
「大輔!これはどうだかにゃ?」
「クッション柔らかいし、疲れた時にはちょうどいいな。ただサイズは小さいのが難点だけど…」
「ご主人様。これはどうでしょうか?」
「可愛らしい花瓶だな…でもいるか?」
「ご主人様…本当にインテリアに興味ないのですね…」
みんなで色々な意見を出し合い、ログハウスに必要な家具を次々に揃えていった。
ちなみに、ベッドを探そうとしてた時に…
「私はダイスと一緒がいい!」
と、ミミが言ったので、俺はすぐに却下した。
仲がいいとはいえ、流石に年頃の女の子とは一緒にいられないというか…結構キツくなるからやめておいた。
「さて、家具も買ったし、今日はレストランで奮発してたらふく食べるか」
「お!いいのか!」
「ちゃんと節度は持ってくれよな?」
アルフに家具リストを渡した俺らは、意気揚々とレストランへと向かったのだった…
なお、この後ダーヌがいつもの大食いを発揮したおかげで金欠になりかけたのはまた別の話…
いかがでしたでしょうか?
ぜひよろしければ、感想や評価などしてもらえると嬉しいです。
では次回、お会いしましょう。




