第15話〜ついていきます〜
…事件関係者のため、俺らはしばらくカラノームで過ごすことになった。
ダーヌが石化されてしまったため、彼の事後経過観察のために滞在するということでもあるが、その間は俺らはカラノームで観光することにした。
カラノームでは魔法具を用いたカジノやホテル、ショー関連の施設が勢揃いしてある。
俺はあだ名が『ダイス』…つまりサイコロであるため、前の世界でもギャンブル得意説が浮上されたが、決してそうではない。
まぁ、少々運は強い方で…
「…21!?これで40回連続ですよ!?」
…たまたま寄ったカジノでブラックジャックをやったらまぁ、これだ。
俺にとっては普通…いや、おかしいか…
そんなわけで、俺は断じてギャンブルが得意ではない。運が強いだけだ。
「…そんなこと言っても誰も信じねぇぞ…」
隣にいる、観察を終えたダーヌがジト目で俺を見ていた。
そりゃ、40回連続ブラックジャックだもん。不正を疑うレベルだ。
そしてもちろん、周りにはギャラリーが集まり、カジノの従業員らしき人がざわついていた。
流石にやりすぎたか…
「ど、どうされますか?つ、続けますか?」
明らかにディーラー戸惑ってる…もうやめておくか…
「いえ、今日はこれで結構です」
俺はそう言うと、溜まったチップを持って換金所へ行き、お金に変えてもらった。
「いやー!ダイスすげぇや!これでしばらく飯は困らねえな!」
「褒めてんのか?それ…」
「褒めてるさ!」
「うそくせぇ…」
俺とダーヌは別で行動していたミミと合流した…が…
「あ!ダイス!ダーヌ!」
…そうやって手を振っているミミの後ろには、大量の袋があった…
「…おいおい、ミミちゃん?この袋はなんなんだ?」
ダーヌがおそるおそる後ろの袋を指差して、震え声で聞いてみた。
「あはは…ちょっと面白そうなスロットあったからやってみたらこれだにゃ…」
「いや、ダイスといいミミちゃんといい、どっちも強運すぎないか!?」
「知るかよ!これは全くどうしたもんか…」
「どうしたって、持って帰らないにゃ?」
「流石にまずいよ…一部は返さんと出禁になりかねないぞ…」
ただ楽しむだけがこうなってしまうのは予想外だった…
とりあえず俺とミミはお金の一部を返すことにした。
その際カジノのオーナーから逆にお礼を言われて戸惑ったが…
その後、俺らはジリッカへ帰還すべく、セリーヌさんと合流した。
「お、来た来た」
セリーヌさんが今までに見たことがないような、いたずらっ子のような笑顔を見せた。
「傷の方は大丈夫か?」
「かすり傷程度ですみました。蛇だけど毒を持っていなかったので平気でした」
俺は腕を回しながら元気に答えた。
「そうかそうか」
「それで、メノールについてですが…」
俺は果たして情状酌量得られたのか心配だったが、その不安はすぐに消えた。
「それなら、メノールはここにいるぞ」
セリーヌさんがそう言って身体を半身にすると…メイド服を着たメノールが立っていたのだ。
しかも、西洋風の長いスカートではなく、ミニスカート…おかげでガーターベルトまで見えてる…
さらにメノールは驚きの言葉を発した。
「お帰りなさいませ、ご主人様♪」
「…え?え?」
俺は思わずダーヌを見たが、ダーヌは全く知らんと言わんばかりに大きく首を横に振った。
「ほら、メノールはかつてメイドをしていたと言っていただろう?」
「いや、知っているけど…え?俺?」
極力感情を表に出さないようにしている俺でも流石に困惑の色は隠せなかった。
「ほら、情状酌量してほしいと言ったのは君だろう?」
「いや言いましたけど!こうなるのは聞いてないですって!」
「驚いたか?でも、これを提案したのは彼女なんだ」
「んなっ…マジで!?」
俺は目を大きく丸くさせた。
「はい。私はかつてある人の元にいましたが、その時はなぜこの人に尽くさなきゃいけないのかわからなかったのです。小さかったこともありましたが…」
メノールは小さく、それでもしっかりとした言葉で胸に手を当てながら話した。
「でも、ダイス様は私を救ってくれた…私に住み着こうとした魔物の攻撃を受けながら、私を説得してくれた。力になると約束してくれた。私はそれに救われました。自分では気がつかなかった優しさも気づかせてくれて…私は魔物を抑える事ができました。今では私の使い魔としていてくれますし」
メノールはそう言うと、右の手のひらをかざした。
すると、その手から光が溢れ、そこから小さな蛇が出てきた。
これにはまたまた俺らは驚いた。が、ミミは…
「わぁー!この子かわいいー!」
と、すぐにその蛇に飛びついた。
「この子、メノちゃんというの。私の名前から来ているけどね」
と、すぐに女子トークに入りそうになったので、セリーヌさんが代わりにメノールの言葉を代理で言ってくれた。
「彼女は君の献身的な姿に心を惹かれたそうだ。もちろん、彼女には君がどのようなことをしていたのか話したし、その上で彼女は君の力になりたいと申し出たんだ」
「そうなんですか…」
俺はミミと笑顔で話しているメノールを見た。
「…輝いてるなぁ…」
俺は誰にも聞こえない大きさでボソリと呟いた…
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…帰り道…
俺らはセリーヌさんが乗る馬車に乗ってのんびりしていた。
その中にはもちろん…
「…それじゃ、ミミちゃんはダイスさんのペットなんですか?」
「ペットなんだけど…今は相棒なんだにゃ」
メノールもいる。
今はミミと完全に女子トーク中。
まぁ、2人は見た目は同じくらいの女の子だから弾む話はあるだろう。
ちなみに、メノールの髪の色は白に近い青といった感じの色であるが、これは魔物との融合の結果白くなったという。
「しかし…この馬車のんびりだな…行きの時とは大違いだ」
ダーヌは横になり、あくびをしながら言った。
「ダーヌがそう言うならば、今からでも走らせるぞ」
「待って!?副隊長さん!?やめて!?」
ダーヌの間抜けな声に、セリーヌさんは優しい言葉で鬼のようなことを言い始めたので、ダーヌはすぐに止めた。
この2人の関係は、メノールの事件でダーヌがセリーヌさんを庇ったことで改善されており、セリーヌさんは多少ダーヌのことを認めている。
とはいえ、セリーヌさんの対犯罪者反応は凄まじく…
実は先程山賊が襲いかかってきたが、セリーヌさんの気迫あふれた剣さばきで見事に撃退したのだ。
おかげで俺らの出番はなかったが…
しばらく馬車を走らせていくと…
「ここで休憩するか…」
セリーヌさんが馬車を止まらせた。
のんびり走らせていたが、俺らも流石に疲れていたので、一旦休憩として馬車から降りた。
「さて、どうしたもんか…」
と、背伸びをしていると…俺はたまたまある花を見つけた。
俺はその花を摘み取った。
「…メノールにあげるか…」
と呟くと…
「私を呼びましたか?ご主人様」
「うわっ!」
まさかメノールが近くに来ていたとは思っておらず、俺は思わず大きな声を出してしまった。
「あの…その花は…」
「あ、あぁ…メノール、君にあげようと思ってたやつだ」
「え?私に?」
そう言ってメノールに渡したのは、紫色の花だ。
「ええっと…この花は…」
「ムラサキケマンという花だ。一応植物とかには精通しているから、知ってたんだけど…この花の花言葉は『あなたの助けになる』だ」
「え…でも、それは…私のセリフじゃ…」
「俺もメノールの助けになりたいと思ってる。だからこの花をね」
「あ…ありがとう…ございます…」
「いいっていいって」
メノールは顔をほんのり赤くして、花を受け取った。
喜んでもらえて何よりだ。
なんか、じっとミミがこっちを見つめてきてるようだが、気にしないでおこう…
「さて、そろそろ馬車に戻るか。まだ出発じゃないけど、すぐに出られるようにしないとな」
「はい!ご主人様♪」
こうして、新たにメイドとして、メノールが仲間に加わることになったのだった…
いかがでしたでしょうか?
もしよろしければ評価、感想等よろしくお願いします。
では次回、お会いしましょう。




