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その花の花言葉  作者: 9カブ心1
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赤いアスター


人は、当たり前に過ごす日常に不満をかかえるものもいる。それは、当たり前の幸せに気づいていないもの達だろう。


 この世界は、陸と海の比率が7:3でできている。

その陸は3つに分かれ、1つは陸の中でも4割を占める「サンザシ」、1つは2割を占める「シーマニア」、最後に1割を占める「コルチカム」。


 コルチカムの南西にある「キョウチク島」という島があった。島には村があった。島を上から見ると、村はまるでドーナツのような形をしていた。島の端から端までをなぞり、円のようにした村だった。その村の中心には壮大な野原があった。野原の真ん中に行ってしまえば周りを見渡せば地平線が続いていた。

 村には人口は10万人程度いた。その村には6人の有名な子供達がいた。

 小さい頃から6人はいつも一緒だった。村では、いや、島ではその6人を知らないものはいなかった。

いつしか大人からこんな呼ばれかもした。

 「陽気な子」ラークス・タイム 16歳

 「天才な子」ラン・ラタナ 16歳

 「無邪気な子」デイジー・カルミア 15歳

 「情熱な子」イヒバ・ゲイト 15歳

 「華麗な子」イキシア・カラー 14歳

 「内気な子」オシロイ・エーデル 14歳


 タイムの1日は、朝起きて顔を洗い、朝ごはんを食べて歯を磨く。昼ごろに支度をして6人でいつも待ち合わせ場所にしているなにもない壮大な野原に駆けつける。

 壮大な野原で6人の目印となるのは野原の中で高々と風に揺れる6人の旗だ。旗といっても赤い布を木の棒にくくりつけただけの旗にすぎない。6人は集合したら、くたくたになる夕方まで遊ぶ。そんなことを何十年も続けていた。今日もそんな日だった。

 いつもと変わらない日常を過ごしていたタイムは空を見上げていた。

「なーんかつまんないよな。」

 そんなことを口にしたタイムにラタナは言う。

「だから何年も前から私は言ってるじゃん。」

「そうだけどさー、なんか飽きた!」

 ラタナが何年も前から言っていることが分かってきたタイムはようやく新しいことをしようとしていた。

「2人ともそうゆうけど、なんか案あるの?」

 最年長の2人の会話に2つ下のカラーは言った。

「んー……ない!」

「ないのかよ!!」

 カラーの質問に対して、腕を組み真剣に考えたようだが5秒ほどで結論を出したタイムにカルミアとゲイトは素早いツッコミを入れた。

「バカは考えないで言うから嫌いなのよ」

 タイムの陽気さに呆れたラタナは言った。

「なんだと!!やんのか?!」

「すぐバカは力で勝負しようとする。本当に脳みそあるのかしら。」

 ラタナにバカにされたタイムは怒り立ち上がるが、ラタナの口のうまさに乗せられまた怒る。まぁまぁと間に入るカルミアとカラー。それを見てワハハハハと親父のように高笑いをするゲイト。

 騒がしい光景だが、これも毎日のような出来事だった。

「タイム兄とラタナ姉の言ってることなら、明日みんなで考えよう?今日はもう日が暮れるから帰ったほうがいいよ。」

 ここで年下のエーデルが冷静に判断して発言するのも、いつもと変わらないことだった。

「そうね、今日は帰りましょ」

 エーデルの言葉を受けてラタナは立ち上がった。

「エーデルの言う通りだ。明日みんなで考えよう。覚えてろよラタナ!」

 エーデルの言葉で冷静になったタイムだが、ラタナへの怒りは忘れてなかった。

「じゃあ俺らも帰ろう」

「うん、お腹減ったー」

「じゃあ、またねー」

 立ち上がり、ゲイトはカルミアに言った。2人は同じ家に住んでいる。小さい頃にゲイトの両親は亡くなってしまった。理由は未だに判明してなかった。1人になったゲイトをカルミアの両親が引き取ってくれた。普段はふざけているゲイトだが、カルミアとカルミアの両親への恩をとても大切に思い。いつか返したいと思っていた。2人はいつものように最初に帰っていった。

「じゃあうちも帰る!バイバーイ!」

「あ、待ってよ!」

 カラーは、年下にも関わらず誰よりも体力があった。いつも帰る時は有り余った体力で走って帰っていく。それをエーデルは追って行く。その2人を見てタイムとラタナは手を振る。

「変わんねぇなぁ……今日も」

 いつもと同じ光景を目にしていたタイムは手を振りながら走っていく2人の背中を見て言った。

「俺たちも一緒に帰るかー」

 タイムのこの言葉はいつも言っている。普通に聞けば一緒に帰ろうと誘っているタイムだが、タイムは東に帰るがラタナの帰る方向は反対の西だった。一緒に帰ればかなりの遠回りになってしまう。そのことを分かっていて、わざとタイムはラタナに言う。それに対してラタナはタイムに厳しい言葉を最後ぶつけてから帰る。

 いつもならそれが普通。タイムにとって。この日常が6人にとって「当たり前」だった。

「俺たち一緒に帰るかー」

 変わらない日常がつまらないと言っていたタイムだったが、最後はいつもと同じ通りに終わることを期待していた。しかし、ラタナに返事がなかった。

 違和感に感じたタイムはすぐにラタナの方を向き、驚いた。

 ラタナは夕陽の沈む綺麗なオレンジ色を眺める綺麗な青い瞳から涙を流していた。ラタナは泣いていた。こんなことは初めてだった。

「ラタナ?おい!ラタナ!」

 返事がないラタナにタイムは大きい声で呼んだ。

「あ、うん。ごめん。」

 タイムの言葉に我に戻ったラタナは涙を拭いた。

「あ、おう。大丈夫ならいいんだ。」

「うん。じゃあ私かえるね」

「ああ、じゃあな」

 涙を拭いたラタナは笑顔で帰った。タイムはラタナの背中を見送り、東の方向へと帰っていった。

「明日は楽しみだなぁー……」

 帰り道に1人で呟いたタイムだったが、やっぱりラタナのことが気になっていた。

「まぁ、明日になれば平気だよな」

 気になりつつも明日になればラタナも平気になると思い、ラタナの元へは引き返さなかった。

 

 明日になればきっと平気。明日はいつもと違う日常が待っている。そんなことを考えて帰ったタイム。

 こんな平和な日常が今日で最後になると、誰が知っていただろうか。

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