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未来が分かる人  作者: 安倍隆志
5/12

翌日

 解決策が見つからないまま夜が明け、学校へ行く時間となった。自分が何を考え、行動して、どういう状況に陥っていようとも時間は流れる。時は待ってはくれず、ただただ時間は過ぎていく。日常は容赦無く自分を襲い、対応していかなければならない。順応出来なければ、日常から外れ、脱落者となる。日本は平等の権利を持っているが、自分を待ち受けている状況は決してそうではない。不平等に訪れる試練に打ち勝ち、過ごしていかなければならない。

 

 普通の日々を送るのは簡単そうに見えて簡単ではない。一歩間違えば皆、脱落者になる可能性を秘めている。仕事をしている人でも辞めて就職活動をしなければ無職になるし、期間が長くなれば国からお金も貰えなくなる。学校生活を送っている時もそうだ。何がきっかけでいじめの標的になるかは分からない。人は弱い生き物であるから心の奥底では誰かを下に見ていたいという思いがある。自分が駄目では無意識化で、自分より下の誰かを思い浮かべる事で自分を保っていられる。常に自分が最下層にならないように生きている。


「隆、昨日はどうだった??」例の如く、親友が話掛けてきた。

「どうだったって何だよ。」

「昨日、犯罪すれすれのストーカー劇を繰り広げていたじゃないか」戯けたように言う。

「何だその言われようは。。。」

「で、どうだったんだよ。」

「話は出来て、仲良くなったよ!!」

「それだけか?!」

俺は昨日あったことを話す訳にはいかないので、はぐらかす事にした。

「寂しい男子2人で何を話てるの??」和人と早川がいつものように小競り合いをしている。

 そこに小学生からの幼なじみである早川沙紀が話かけてきた。早川とは小学4年生からずっと同じクラスで事あるごとに一緒の時間を過ごしてきた。小学生の頃から遊ぶ機会が多く、カップルだと茶化されたこともあったが、今でも関係は続いている。お互いに男女の感情は一切ないと俺は思っている。

 親友の和人とも共通の知り合いで、中学生の時、同じクラスであった。親友と同様、なんでも話ができる仲で、人生の岐路になるような重要な決断も相談したりしていた。

 しかし今回ばかりは巻き込むことが出来ないと俺は思っていた。今まで相談してきたこととは重さが違い過ぎる。死が関わってくるからだ。


 ふと目線を小田原の方に向けてみると、昨日と変わらない様子で複数の人と笑顔で談笑している。この風景だけみていると昨日のことは嘘だったのではないかとさえ思えてくるから不思議だ。


 

 昼休みになると和人と2人で、屋上で昼食をとることとなった。基本的には侵入禁止となっている。しかし、学生というのは駄目と言われるとやりたくなってしまう生き物である。伝統で、入り口近くに鍵が隠しているらしい。一部の学生はこの鍵を利用し昼休みや放課後に侵入を試みるらしい。学校側としても黙認状態になっているらしく、四方は高いフェンスで覆われており、安全性は確保されている。

 和人は売店でパンを買ってくるとのことで、お弁当族の俺は先に屋上で待っていることとなった。


 先に屋上に着くと、そこには小田原菜摘が立っていた。

「どうも」と俺は出来るだけ自然を装って言った。

「どうも。隆くんは弁当なの??」

「そう。作ってもらってる。昨日は眠れた??」

「うん。ぐっすりと」

彼女は昨日のことが無かったかのように自然な笑顔で話をしていた。俺もそれから、見ているテレビ番組の話や動画の話、小説の話などをしていた。とても楽しい時間だったが、それは突然終了させられる。


「俺が売店で戦いを繰り広げている時にお前は何をしているんだ?」と怒ったような笑っているような何とも言えない表情で和人が屋上に登ってきた。この学校の売店は生徒数の割に小さいらしく、人気の惣菜パンは壮絶な戦いを繰り広げないと手に入れることは出来ないらしい。売店は1階にあり、我々1年生は3階で不利な状況にもある為、気持ちは察することが出来た。

「こいつは俺の親友の和人」俺はすかさず親友を紹介した。


それからは3人で楽しい話をしながら昼食をともにした。途中から早川も噂を聞きつけてやってきた。

「私だけ置いてけぼりにするなんてずるい。混ぜろ〜」

 4人になった我々は時間も忘れて話をしていた。自分が好きな親友と小田原が一緒にいるのがとても心地よく感じていた。自分の感情がどういう方向に向いているかは分からなかったが、好意を抱いていた。

 気づけば小田原も昔からの友達のように場に馴染んでいた。お喋りな和人と早川、そしてどちらかといえば静かな俺と小田原が上手いこと噛み合っていた。2人の掴み所がなく、中身のない話を聞きながら俺がツッコミを入れ、小田原さんは笑いながら話の方向性を変えたりしていた。

 俺はこの時間が永遠に続けばいいのになと考えていた。それくらい心地よい空間だった。


 幸せな時間も昼休みの終了を知らせるチャイムとともに終わりを告げた。時間を忘れて騒いでいた我々は走って教室に戻った。

 



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