不思議な力II
結局何も起こらないまま放課後になり、校門で彼女を待ち伏せすることにした。目立つ場所は避け少し離れた場所に大きな木が育っていたので、背もたれにして待つことにした。
すぐに彼女はやって来て目の前を素通りしていった。待ち伏せしていた場所から200m程離れた場所を通過した為、俺の存在には気付かなかったようだ。
すぐに追いかけようとしたが、木の幹に躓いてしまい見失ってしまった。彼女が進んだであろう方角に向かって走ってみる。学校の廻りを1周するように見て回っている公園でベンチに腰を掛け猫の頭を撫でている所を発見した。あまり面識のない女の人に話し掛けるのはとても緊張するが、それよりも好奇心と探求心が勝り、正面に周り話し掛けることにした。
「今日の朝はどうも、、、。隣に座ってもいい??」我ながらなかなか気持ち悪い切り出し方だとは思いながらよく話掛けたと自分を褒めることにした。すると彼女はまん丸な目でこちらを見上げ無言でうなづいた。そっとベンチに腰を掛けた。その瞬間に彼女の膝に座っていた猫は何処かへ行ってしまった。
「自己紹介がまだだったよな。俺、佐藤隆。」
「私は小田原菜摘。よろしくお願い致します。」朝の雰囲気とは違い、おしとやかな口調だった。
「朝はびっくりしたよ。なかなか衝撃的な出合い方だったね。まさか同じクラスだとは思わなかったよ。」
「朝はごめんなさい。びっくりさせましたよね。」
「まぁびっくりしたけど、、、何かついて、、、」いたの??と聞こうとしたら途中で話を切られ、先程の口調が嘘のように大きな声で「私、未来が視えるんです!!」と教えてくれた。
俺が驚き口を閉じたまま目を見開いていると彼女は急に饒舌になり語り始めた。
「信じられないですよね。中学生になったくらいから徐々に視えるようになってきて、今でははっきりと視えるようになったんです。」そう言った後、彼女は俺の肩に手を添えた。
「このように人の一部に触れることで、その人の未来が視えるんです。情報量が多いので、全てを受け入れようとするととても体力を消耗するので、一部分しか視てはいません。自分が知りたい情報をコントロールすることもできて、いつ頃の未来が知りたいのかを念じるとその付近の未来を視ることがことができます。全て視ることが可能です。もちろん死ぬのがいつかも知ることが出来ます。先程ここにいた猫は明日、公園の前の道路で車に轢かれて死にます。死んだ後は黒いモヤがかかったような映像がひたすら流れ続けます。」
「そこまで分かっているんなら助けてあげようぜ。自分の家で保護していればいい」
俺は特別猫が好きな訳ではないが、死ぬのが分かっているのであれば命を救ってあげたい。見る限りまだ若い猫だろう。毛の艶が物語っている。
「未来は変えることが出来ないんです。最初にこの力が芽生えたのは母親に触れた時でした。母もまたその猫と同じように交通事故に巻き込まれる運命でした。正確には自分が運転している乗用車で電柱に突撃してしまう映像が視えました。
初めはただ疲れて変な映像を見てしまったんだ。疲れていたんだと思いました。しかし、それは紛れもない真実を告げる映像でした。母に何度も触れる度、映像の精度は上がっていきました。段々それは具体的になり、現実と区別がつかないような体験を私にもたらしました。母以外の人にも触れて確かめました。数人に触れる内に自分には未来を視ることができる能力があると思いました。
色々と自分の能力について確かめている内に事故の前日になりました。」
「そこで未来を変えようとしたのか??」俺は声にもならない声で聞いた。
「変えようとしました。当日車の運転をしないようにする為、車のタイヤに穴を開け運転出来ないようにしました。それでだけでは不十分だと思い、家から出ないようにする為、人生で初めて仮病を使いました。今まで良い子で生きてきたので、簡単に信じてくれました。しかし、これだけでは薬を買いに出かけたり、病院に連れて行こうとしたり、色々な可能性が考えられました。私は徹底的に甘えました。今までしたことがないくらい母の愛を求めました。
ここまでは順調でしたが、演技をするのに疲れていた私はふとした瞬間に布団の中で眠りについてしまいました。気づいた時にはもう遅かった。リビングでは私の体調が悪い為に早退をしてきた父がテレビを見て狼狽えていました。テレビの画面に目を移すと母の名前が下の方に表示されておりました。買い物に行った際に通り魔にナイフで心臓をひと突きされたようです。交通事故の映像時も心臓に何かが刺さり死に至ったので、直接的な原因は同じでした。」
「そんなことって、、、。」
「それからも小さな動物であったり、虫であったりで、未来を変えることが出来るかを試しました。何回やっても過程は変わっても結果は同じでした。
いきなりこんな話をしてごめんなさい。でもどうしてもあなたにお話しをしておきたかった。」
「どうして??」
「あなたの未来が視えないんです。」