6.召喚!
「さ、反省会しようか」
「この銃、全然当たらん」
「この刀、全然切れん」
初回の戦闘、ゴブリン三体を倒し即反省会。
「と言うか、戦い方雑じゃない?」
「そりゃ多対一だし?」
そう言いながら、メニューを操作するカエデ。
その手に小さな小瓶が現れる。
「それは?」
「ポーション。
一つ300ポイント」
「残りは?」
「あと九つ」
カエデの手からポーションが消え、一瞬彼女の体を黄色の光が包む。
「今の成果は?」
「【妖魔の歯】が一つ」
それが、戦闘後に私のアイテムボックスに格納されていた。
「こっちは【妖魔の爪】が二つ、歯が一つ。
これがさ、ポーション一つ以上の価値がなかったら赤字なんだよね」
「回復魔法、要るかもね」
でも、その為には幾ら必要なのだろう。
「アタシの戦い方も雑だったからなぁ。
そもそも竹刀と違うから、打つんじゃなく、斬る」
そんな物騒な事を言いながら刀を振り下ろすカエデ。
「部活に差し支えない?」
「平気っしょ」
カエデは剣道部に所属している。
だからと言って、ゲームで強いと言う事には直結しないらしい。
私自身も想定外だった。
この銃、当たれば威力はある。
だけれど、当たらない。そして、弾数の制限が結構シビア。
一回の戦闘で結論付けるのは早計だけれど、武器選び間違ったかもしれない。
このゲームは絶対に他人との競争だ。
ならばこそ、初手のミスは痛い。
リカバリーは早めにすべき。
「どう思った?」
刀を振り回すカエデに銃を見せながら問う。
「流石の威力だと思った。
多分、五倍くらいダメージ差があるよ」
「そんなに?」
「アタシの感覚値だけど」
ふむ。
他から見ればハズレとまでは言えないのか?
ならば、私に必要なのは……敵に近づかれる前に足を止める役。
ではやりましょう。
私の本命。
「ん? なにそれ?」
「魔石」
アイテムボックスから取り出した七色に輝く石。
それを見て素振りをやめ、カエデも近寄ってくる。
「これから、私のパートナーを召喚するのだ」
「サモナーか」
「どんなのが良い?」
「もふもふしたやつ」
ですよね。
メニューを操作し、召喚リストを表示。
・【白狼】ホワイトウルフ
・【炎鼠】フレアラット
・【風鷹】ウインドホーク
・【夜蝙】ナイトメアバット
・【魔蜘】オウガスパイダー
・【妖精】フェアリー
選べるのはこの六つ。
あれ?
動画に出てた悪魔みたいな強そうな奴は?
流石に最初っからそんなのは選べないって事かな。
さて。
それでは改めて、それぞれの説明を表示。
【白狼】ホワイトウルフ 召喚モンスター
機動力に長け、戦闘や索敵など様々な場面で活躍する中型モンスター。
契約に魔石を一つ消費する。
【炎鼠】フレアラット 召喚モンスター
特殊な行動を備え魔法に似た攻撃を繰り出す小型モンスター。
契約に魔石を一つ消費する。
【風鷹】ウインドホーク 召喚モンスター
空からの広範囲索敵と、素早い攻撃を繰り出す中型のモンスター。
契約に魔石を一つ消費する。
【夜蝙】ナイトメアバット 召喚モンスター
夜間や暗闇の中での行動に特化した小型モンスター。
契約に魔石を一つ消費する。
【魔蜘】オウガスパイダー 召喚モンスター
敵を異常状態にする事に長けた小型モンスター。
契約に魔石を一つ消費する。
【妖精】フェアリー 召喚モンスター
攻撃力は皆無だが回復や補助魔法を行使する小型モンスター。
契約に魔石を一つ消費する。
ふむ。
説明を読むに、今私たちに必要なのはズバリ、フェアリーか。
よし。
「決めた」
あんまり迷ってると、またモンスターに襲われちゃうし。
えっと、これを読み上げれば良いのかな?
「契約陣・起動・白狼」
両手に魔石を包み様に持ち、虚空に呼びかけるように読み上げる。
手の中の魔石が砕け散り、地面に小さな魔方陣が出現。
下から光が柱状に立ち上り、そしてその中から現れたのは白い毛玉。
「きゃー!」
カエデが黄色い悲鳴を上げた。
耳をピクピクと動かしながら、キョトンとした顔を向ける私の召喚獣。
ホワイトウルフ。
……て言うか、君、犬でしょ?
真っ白な幼犬。
とりあえず、その舌、仕舞いなさい。
◆
「可愛すぎる!」
カエデが恐る恐る私の召喚モンスターの背を撫でる。
「良し。決めた。
君の名前はシロだ」
【シロ】ホワイトウルフ Lv.1
機動力に長け、体当たりや噛み付きで攻撃する。敵の気配を素早く察知する。
スキル:
噛み付き
体当たり
気配察知
「シロか。まんまだな。
シロ!」
「ワン!」
カエデの呼びかけに答えるシロ。
ワンって言ってるし、尻尾丸まってるし、舌出してるし、どう見ても柴犬にしか見えない。
狼だよね?
「シロ。
飼い主は私。
これからよろしく」
お座りしたワンコの前にしゃがんで声をかける。
「何で首をかしげるのさぁ」
可愛く首を傾けたシロのほっぺを引っ張る。
おお、よく伸びる。
「よろしく!」
「わん」
わかればよろしい。