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49.この先の方針

 ロビーに全員が揃う。

 メンバーは当然、今日結成を宣言した『ファスティ』の四人。


「では、改めてよろしく!」


 三人の顔を順に見てから手をあげる。


「で、クランってどうやって結成するの?」

「冒険者ギルドで申請。

 そんな事も知らずに言ってたの?」

「えへへ」

「確か、拠点となる場所が必要なのでしたよね?」

「そうね」

「拠点か」

「基地だな」

「それは、どうやって手に入れるの?」

「知らないわよ。

 どうして私に聞くのよ」

「いや、クロちゃんならなんでも知ってそうだし……。

 なら、まずはギルドかな」

「その前に服屋じゃないのか?」

「それな!」

「でも、ヒノトウシで買い換える事になるんじゃない?

 キノトネで買うのは無駄じゃないかしら?」

「なるほどー。

 ちなみに一式揃えるとおいくらぐらい?」

「重装なら八万。

 軽装なら四万。

 ヒノトウシならその倍。

 だいたいそれくらいね」


 高い。

 でも、お金ならある!


「でも、あんまりおおっぴらに使わない方がいいわ」

「なんで?」

「既に話題になってるからよ。

 五千万を手に入れた四人組の事が」

「へー。

 クロちゃんさ、結構その辺の情報詳しいよね?」

「ネットでちょっと調べただけよ!」

「いや、隠さなくても良いよ。

 シバルツさん」

「それ私じゃ無いって言ってるでしょ!

 止めてよ! 露出狂!」

「露出狂じゃない!」


 なんて事を言うんだ!


「えっとね、クロちゃんに聞きたいのは、私達が今どの辺にいるのかって事。全体から見てどの辺にいるのかなって」

「多分、本当に最前線にいるグループは情報を隠してる。ネットでの発言なんてもってのほか。

 なので、推測でしかないけれど……」


 そう前置きしてから、クロちゃんが続ける。


「まず、レベル。

 これは恐らく、私達がトップ層に近いわ。

 クラスチェンジの情報がごく最近出回り始めたぐらいだから。

 元々、プレイ時間に制限があるので、差がつきにくい仕様。

 私達があの洞窟で経験値稼ぎを出来たのは僥倖だったわね」


 ふむ。


「だけど、その場所も明るみになった」

「ええ。

 でも、トップグループは三つ目の町まで進出している。

 彼等が、片道およそ二時間。往復で四時間。

 つまり一日の行動時間の半分を費やしてでもここに戻るとは考えにくい」

 

 成る程。

 移動に消費する時間も馬鹿に出来ないのは皆同じなのね。

 

「次に資金。

 これは、言うまでもなく私達がトップだと思うわ。

 まあ……額が額だけに使い方を考えなければすぐに噂になるでしょう。

 そう言った意味で、大きく使うのは控えるべきだと思うわ」

「いっそ、私が全額引き出して引きこもろうか」

「軽蔑するわ」


 既に軽蔑しているかの様な冷たい目のクロちゃん。

 冗談だよ?


「部屋に乗り込むぞ?」


 そうだった。

 カエデは私の部屋までノンストップで進入できるくらい顔馴染みだ。


「けしかけますわよ?」


 ……誰を?

 え、誰をけしかけるの?

 西七辻家専属のSP?

 いそうで怖い。


 やばい。

 五千万の配分と使い道を早々に決めねば。


「そして進行度合。

 言った様に先頭グループは既に三つ目の町。

 これは、目指そうと思えば今日にも行けるとおもうわ」


 ふむ。


「行っちゃおうか?」

「先に進むのも必要だとは思いますが、どこに何があるのかわかりません。

 それぞれよく調べるべきではないでしょうか?」


 そう意見を出したのは市松。


「そうね。

 先に進むのが必ずしも正解ではない。

 それは、奇しくもヨシノさん、貴女が証明したのよ?

 スタート地点のほど近くに5000万の賞金首の手掛かりがあったのだから」

「うーん。

 グアンナを見つけたのって、完全に偶然の産物なんだよね。

 だからさ、よく調べれば見つかるかと言えば、どうかな?」

「調べる為に半裸のヨシノを引き連れてたらとんでもなく目立つなぁ」


 いや、もう半裸無理だよ?

 みんなの目がある。

 こちとら羞恥心を取り戻した花も恥じらう乙女。生まれ変わった私を纏っているのだよ。


「私は、服が着たいです!」

「それは、着れば良いと思うわ」


 ていうか、何で私はこんな事を懇願してるのだろう。

 悲しくなってきた。


「はい。着ます。

 で、取り敢えず三つ目の町まで行っちゃおうと思う。

 えっと、一応理由もある」

「聞きましょう」

「えっと、まず私達にはお金の余裕がある。

 これはイコール、装備を更新する余裕があるという事。

 あと、スキルも。

 先へ進めば進むほどお店で売っている装備品は良いものになってる。

 それを考えると三つ目どころか、その先を目指しても良いと思う」

「先へ進むんだな」

「うん。

 グアンナは確かに最初の町にいた。

 でも、50億の賞金首はもっと、ずっとずっと先だと思うんだ。

 だから、今は進むべきだと思う」

「私は、異議はないわ」


 すかさずクロちゃんが同意し、市松の方を見る。


「わたくしも、反対はしませんわ。

 誰も踏み込んでいないまっさらな未開の地。

 先陣をきって踏破する。

 それもまた、栄誉ですもの」


 楽しそうに笑う市松。


「カエデは?」

「ん? 方針は任せるよ」

「りょ。

 じゃ、先へ進もう!

 そして、出来れば街道が交わる様な交通の要所となる街にクランを設けるのがベストかな。

 それから……」


 ◆


 それは、ちょっとした企み。

 先頭グループに限らず、高額の賞金首を狙っている。

 他人より先んずるためには、自らがより早く動くこと。

 そして、他人の足を止めること。


 私は市松がシーツを改造し拵えた外套を身に着け道具屋に。

 横には同じく外套姿の市松。色は紫。

 二人共、フードを目深に被った一見すると怪しい風体。

 ご丁寧に、口元には揃いのマークを付けた布を巻いてマスク代わりにしている。


「女将。回復アイテムを全部でいくらになる?」


 私はわざと声を大きくし、店内中に聞こえるように言う。


「はいよ。

 HPポーション、300個で27,000。

 MPポーション、300個で900,000。

 だね」

「全部もらおうか。支払いはGで良いかな?」

「そりゃ、構わないけど」

「お、おい。ちょっと待ってくれ」


 いきなり店内に居合わせた別のプレイヤーが割り込んで来る。

 はい、釣れた。


「何か?」

「買い占めは困るんだが」

「金があるのに使って何が悪い?

 こっちには必要な物だ」

「……随分と金を持ってるんだな?」

「それが何か?」

「どうやって稼いだか、教えてもらいたいもんだ」

「そんなの、決まってる。

 懸賞金だ」


 私の言葉に聞き耳を立てていた店内のプレイヤーがざわつく。

 それを待っていた市松が、片手をフードの上から耳にあて、まるでイヤホンで会話しているかの様な仕草をする。


「不味い。標的が動き出した」


 私の耳元に口をよせ呟く。呟きと言うには少しばかり大きな声で。


「何? ……仕方ない。

 女将、それぞれ30ずつ。

 それで良いな?」


 絡んできたプレイヤーにそう告げる。

 答えを待たずに支払いを済ませ、市松へ声を掛ける


「急ごう。今逃げられたら、元も子もない」

「ああ。次なる懸賞首も我らヴァイオレットシャドウの手で」


 そう言い放ち、私と市松は店から走り出る。

 通りへ出て直ぐに裏路地へ。そして、素早くログアウト。


 再びログインした先は宿屋の一室。


「おかえり」

「悪巧みはどうだった?」


 そこで待っていたのはカエデとクロちゃん。


「さあ?

 後は噂になってくれれば良いね」


 ヴァイオレットシャドウという、謎の集団。

 揃いの紫の衣装を身にまとったその二人は懸賞首を狩ったらしい。

 更にこの近くにまだ懸賞首が居る、とも。


 そんな嘘の噂を振りまいて、一体どれほどの人が信じるかはわからないけれど少なくとも私達からは目を逸らすことが出来るだろう。


 私はカエデが買っていた地味なベージュのマントを羽織り直す。


「じゃ、ヒノトウシへ。

 そして、三番目の街、カノエトラへ行こう!」


 今日中にたどり着ければ良いけれど。

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― 新着の感想 ―
[一言] 『ヴァイオレットシャドウ』 ベニトカゲ団を彷彿させて草 (*´∀`*)
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