43.クラスチェンジ!
「お待たせ」
「お帰り。待ってた」
宿屋で休んでいた私の部屋に三人が現れる。
「何してたの?」
「デスペナ中」
「早速だけど、洞窟の場所が誰かに知られたわ」
今まで見た事のない鎧を着たクロちゃん。
新調したのか。
「……ごめん。
それ、私の所為だ。
私の不注意で」
「え?」
「今日、洞窟に入る時に目印の枝を折り忘れたの。
そしたら、他のプレイヤーが来て」
「……それ、何時の話?」
クロちゃんが眉間に皺を寄せなが問い詰める。
「ログインして一時間くらいだから、二時間半くらい前」
すいません。
「ヨシノさんの所為でバレたんじゃないと思うわ」
「……え?」
「今朝、現実の今朝ね。
もう既にスライムの粘液がオークションに並んでいたみたい」
「私がログインする前?」
「でしょう?
他のプレイヤーが見つけたのよ。
偶然か、クエスト絡みかで」
「そうだったんだ……」
よかった。
「今のが悪いニュース?」
「うん」
「気にしなくて良いんじゃねーか?
いつまでも隠し通せるもんじゃないし、祭壇の秘密がバレた訳でもない」
「そうですわよ」
カエデと市松が笑顔で私を慰める。
……嬉しかった。
「でも、のんびりして居られなくなったのは事実よね。
こっちの悪いニュース。
一つはそれ。知ってて助かったわ」
「一つ?」
「そう。
もう一つは、見てわかる?」
と、クロちゃんが両手を広げる。
その後ろでカエデが右手を後頭部に、左手を腰に当てポーズをとる。
その横で市松が神官服の裾をつまむ。
「みんな、装備が新しくなった」
「そう。
という事はつまり?」
「ん?」
悪いニュースなのよね?
「借金した?」
「違うわよ!
支払いはちゃんとした!
装備が今よりパワーアップしたの。
つまり、それだけ修理にリソースが必要なの」
「ああ! なるほど」
私の手間が増えるのか。
主に採掘と修理で。
あれ? 局所的に私にだけ悪いニュース?
「でも、わたくしも『修理』のスキルを取りましたわ。
分担できます!」
そう、市松が進み出て言う。
「それが良い方のニュース?」
と言う私の問いかけに三人が頷き、首肯。
…………そっか。
ちょっと、嬉しい。
でもね。
「それじゃ、私の良い方のニュース。
行って良いかな?」
私の問いに三人が笑顔で返事をする。
それに、頷きを返しながら話を続ける。
「私は!
この度めでたくクラスチェンジを迎えました!」
「おー!
何になったんだ?」
当然のカエデの疑問。
それに対する私の答え。
「その前にみんなのクラスチェンジ先を一度おさらいして良い?
カエデは、武芸者から侍、忍者、陰陽師でしょ?」
「ああ」
「その中で、【特殊】って書かれてたのある?」
「陰陽師がそうだったかな」
「で、選んだのが侍っと。
クロちゃんは?」
「私は、従騎士から、騎士、重装兵、守護騎士、盗賊騎士ね。
特殊は盗賊騎士。
選んだのは守護騎士」
「うん」
「わたくしは司祭、武僧とそれから特殊で祓魔師でしたわ。今は武僧ですが」
「うん。
私も複数のクラスチェンジ先が出たの」
みんなの話を聞き、核心に近い結論を得た。
「召喚術師と召喚闘士、それから特殊で死霊召喚師」
私のクラスチェンジ先。
それは、こんな感じ。
召喚術師(二次クラス)
召喚のみならず、魔法の扱いにも長けた術師。
新入手スキル:
連続詠唱
取得経験値増(召喚獣)
クラスチェンジ条件:
召喚士の心得
召喚闘士(二次クラス)
召喚のみならず、近接戦闘にも長けた戦士。
新入手スキル:
連携攻撃
取得経験値増(召喚獣)
クラスチェンジ条件:
召喚士の心得
【特殊】死霊召喚師(二次クラス)
生ならざる者を呼び寄せ操る術師。死者への深い理解が必要。
新入手スキル:
死霊召喚術
取得経験値増(召喚獣)
クラスチェンジ条件:
召喚士の心得
アンデッド系モンスター一定数撃破
「特殊な死霊召喚師はクラスチェンジ条件に『アンデッド系モンスター一定数撃破』と言うのがある。
これは遺跡でスケルトンを山程倒したからだと思うの。
多分、みんなのもそう」
「確かに、そうだったわね」
「わたくしもそうでした」
苦笑いで誤魔化そうとするカエデは覚えてないのだろう。
「それとね、更にもう一つ。
多分、これは壁画で語られていたクラス」
【特殊】陣術師(特殊クラス)
術の行使に魔法陣を用いる特殊な魔導師。召喚術師の礎とも言われている。
新入手スキル:
魔法陣生成術
クラスチェンジ条件:
召喚士の心得 or 錬金術師の心得
陣術師の知見
魔力操作系スキル所持
神智系スキル所持
「そして、これこそが私達を勝利に導く鍵となるのだと私は確信している!」
その所為で、市松が手に入れた【修理】は完全に無駄になってしまうかもしれないけれど。
◆
「……と言う事で、じゃ、ひとまずリハーサルと行こう!」
陣術師にクラスチェンジした私が、新たなスキルを得たところで結局グアンナに挑み勝たなければならない。
幾度となく挑戦する必要はあるだろう。
「……ちょっと待って」
拳を振り上げ、同時にテンションを上げた私にクロちゃんが待ったをかける。
なんでさ。
彼女は仮想ウインドウを開いている。
「最悪のニュースよ」
「え?」
「今届いた運営からのメッセージ。
仕様変更のお知らせ。
それによると、プレイヤー同士のコンタクト制限が撤廃されるわ。明日零時から」
「ええ!?
それ、不味いよ!
コンタクト制限が無くなれば他の人から私達が何してるのか丸わかりになっちゃう」
「同じパーティが同じ場所に出入りをしていれば、嫌でも目立ちますものね」
「それに、ヨシノはそんな格好だしな」
「ああ! その問題もあるのかぁ!!」
「アタシ嫌だよ。衆人環視の中、そんなヨシノの横歩くの」
「私だって嫌だよ! そんなさらし者!」
ヤバい!
明日までに早急に服を整えねば!
「ひとまず、服の問題は置いておくとして」
いや、置いておかないでよ!
「今日が最後のチャンス。
それくらいのつもりでいないとまずいわね」
「なら、そのつもりで行けばいい!」
「グアンナは相当強いわよ?
四人で戦って勝てる保証は何もない」
「あとは、気合と根性!」
「気合や根性なんて、決められた数値の前では無意味だけれど……今はそれを信じるしか無いわね」
「後は、友情ですわ」
おおう。
市松さんがさらりと結構恥ずかしいことを口走った。
「そうね」
おおう。
クロちゃんが、この中で唯一否定しそうなクロちゃんが静かに頷いた。
「よし!
じゃ、ぶっつけ本番!
でも、今日が駄目でもまだ私達には十分なアドバンテージがある。
絶対にグアンナに勝とう!」
「「「おー!」」」
声と共に四人で拳を突き上げる。
シロは相変わらず舌が出っぱなし。
Q.何でコンタクト制限の設定変わったの?
A.一部プレイヤーの行動が出資者の怒りを買った。
具体的には他人の視線がない事をいい事に街中で擬似●●●に及ぶプレイヤーが数名。
尚、告知なくBanされた模様。
Q.神智系スキルって?
A.鑑定、識別などの名前や性質が認識できるスキル類。
本人の知識ではなく神の知識を利用しているという世界設定。アカシックレコードから答えを参照している感じ。




