2.キャラメイク
『それではまず、性別をお決めください。
性別による能力差はございませんのでお好きな様にお選び下さい』
「女子で!」
『続きましてアバターの設定です。
ヨシノ様の生体データから作成したモデルを元にカスタマイズをお願いします。
なお、あまり極端な身体特徴の変更を行いますとゲームを終了し現実へとお戻りになられた際に違和感を抱かれる事がございますのでお気をつけ下さい』
「はい」
私の前に、無表情なマネキン人形が浮かぶ。
えっと……髪色はパステルピンクにして、ついでに瞳もピンクに。
いや、ありえんでしょ。これ。
でも髪の触り心地は私の地毛よりずっとサラサラ。ムカつく。ありえんついでに腰を少しキュっと。
「はい。オッケーです」
どうせ自分じゃわからないし、こんなもので良い。
『それでは、初期職業とスキル、初期装備をお選び下さい。
上限は50,000ポイントまでとなっております』
「上限50,000ポイント?」
『はい。
その中でお好きなだけ自分に必要と思われるものをお選び下さい。
なお、余ったポイントは消滅いたしますので出来る限りお使いいただくことを推奨いたします』
浮かんだ仮想ウインドウの中に職業やスキル、それとアイテムの名が並ぶ。
職業は一択。
おそらくこのゲーム、複数人の協力と役割分担による攻略を想定しているだろう、とはゲームに明るい知り合いの談。
しかし、複数人で協力した場合、その分け前は分割になる可能性がある。更に、そんな場面で後ろからグサリとやられでもしたら。
そんな事を考えだすと、ゲーム内でどういった人間関係が構築されて行くのか予想がつかない。
しかし、一人で複数の役割をこなせれば良いのだ。
事前に紹介された数少ない情報の中に、トレーラームービーがあり、その中にほんの一瞬、超強そうなモンスターを召喚するキャラの姿があった。
これらのことから導き出した職業を仮想ウインドウの中から見つける。
【職業】召喚士 10,000ポイント
召喚獣を使役し共に戦うことに長けた職業。
得意武器:弓、杖
初期スキル:
召喚術
杖技(オプション)1,000ポイント
弓技(オプション)1,000ポイント
視力強化(オプション)1,000ポイント
魔力強化(オプション)1,000ポイント
攻撃魔法(オプション)1,000ポイント
付与魔法(オプション)1,000ポイント
「この、オプションって何だろう?」
『職業選択時のみ選ぶ事が出来るスキルです。
単独のスキルを選ぶ場合よりお得になっております』
へー。
サモナーで10,000ポイント。
スキルは後回し。
残り、40,000ポイント。
武器はどうしよう。
攻撃魔法があるから杖?
考えながら武器のリストをスクロールさせていく。
剣、槍、グローブ、斧、ハンマー…………あれ?
魔導小銃……25,000ポイント。
他の武器が軒並み10,000ポイント以下なのに、これだけ頭二つ飛び抜けて高い。
【魔導小銃】マスケット 25,000ポイント
魔力を光弾に変換し撃ち出す魔導機械兵器。
最大装填数:6
基本装填時間:30秒
有効射程50m
高いと言う事は、それだけ強いのでは?
よし。
武器はこれにしよう。
体を動かして戦う剣なんかより向いてそうだし。
残り15,000ポイント。
じゃ、スキルで……あった。
銃技……1,500ポイント。
他のスキルと同じで必要ポイントは1,500。
成る程。
召喚士のオプションの方が500ポイント分お得なのね。
なら……付与魔法に攻撃魔法、それから魔力強化と。
「視力強化って、何?」
『暗闇を見通せたり、遠くを見渡せたり、それから動く的に投射物を当てやすくなったりします』
便利そう。
これで、残りは9,500ポイント。
後は防具かな。
『ヨシノさま』
「はい」
『さしでがましいのですが、一つ宜しいでしょうか』
「なんでしょう?」
『サモナーがパートナーを召喚する為には、魔石が必要となります』
「魔石?」
仮想ウインドウにそのアイテムが表示される。
【消費アイテム】魔石 10,000ポイント
術士が様々な儀式に用いる魔力の結晶
「……足りない?」
『そうなりますね』
「今じゃないと手に入らない?」
『アイテムの流通量に関しては予測が出来ませんのでなんとも言えませんが、道端に落ちているといったありふれたものではありません。
そう言った意味でこのチュートリアルは確実に手に入れる事の出来る機会となっております』
むー。
少し考え、攻撃魔法を外す。
攻撃は銃に任せよう。
その代わりに魔石を手に入れ残り500ポイント。
「これで終わりかなぁ」
『ヨシノさま』
「はい」
『さしでがましいのですが、もう一つ宜しいでしょうか』
「なんでしょう?」
『こちらをご覧下さい』
私の前にさっき自分で設定したピンク髪のアバターが現れる。
手には銃を持っている。
だが……。
『防具、或いは服を装備されませんとこの様な格好となります』
「えぇー!!?」
上は真っ裸、申し訳程度に胸の先に丸いニプレスが着いているのみ。
下はベージュのローライズのショーツ。
『なお、乳頭部の処理に関しましてはお好みで変更できます。
例えば……』
ニプレスが星型へ変わる。
「いやいやいやいや」
『こう言う形状も」
薄ピンクのハート型のニプレス。
「ありえんて」
『こう言った処理も可能です』
ニプレスが消え、代わりに真っ黒の四角が現れる。
まるでドット欠けの様。
て言うか、海苔?
「ヤバさが加速してない?」
『あとは、こちらです』
モザイク。
胸の先端にだけモザイク……。
「逆に卑猥!」
控えめに言って変態では?
『ですので、何かしら装備なさる事をお勧めします』
「500ポイントで買える服を!
出来れば上下セット。もしくはワンピース!」
『残念ながら、その条件に当てはまるアイテムはございません』
「マジすか!?
とりあえず、安い順に並べて!」
流石にモザイク貼り付けて歩くのは無理だ。
いくら仮初めの体とは言え。
しかし、そうするとスキルを一つ削らなければならない。
Tシャツ……1,000ポイント。
「これ、試着できます?」
『はい』
アバターが白のTシャツを纏う。
「丈が! 短い!」
下からショーツをチラ見せ。
逆に視線が気になる!
『因みにショーツの色も変更できます』
「なにその機能!?
なら、黒にしておいて!」
くそう。
スキル一つではダメか!
根本的に武器とスキルを変えた方が良い?
『残り三分でサービス開始です』
「いやー!!」
そんな時間は無さそう!
「これは!?」
私はジャスト500ポイントで買える物を発見する。
【頭部アクセサリー】鉢巻 500ポイント
気合いの証。
物理攻撃力上昇(微)
『頭部へ装備するアクセサリーですね』
「胸にも巻ける筈!」
『素材と形状を鑑みるにそれ自体は可能ですが、指定部位以外への装着は装備効果が発生いたしません』
「それでも良い!」
私はそのアイテムを手にアバターの後ろへ回る。
その細い鉢巻を胸に一巻き。
辛うじて先端は隠れた。
完璧だ。
これしか無い。
勝利を確信しながらアバターの正面へ。
トップスは水平に一筋のラインを真っ直ぐにあしらい、ボトムスは余計な装飾を排除したローライズスタイル。
色は上下合わせてブラックにコーディネート。
ともすれば、可愛いだけに見られがちなピンク髪のアバターが大人の雰囲気を醸し出す。
「いや、ど変態!!」
どう言い繕ってもただの露出狂!
『装着したアイテムは勝手に外れたりずれたりする事はありませんのでその点はご安心ください』
「やった!」
いや、やってない!
だが最早時間は残されてはいない。
残り一分程。
ならば捨てるのは……羞恥心の方だ!!