19.リツコさん
歌を歌えば暇な時間も誤魔化せる。
と言う訳で、いつの間にか洞窟はカラオケボックスに早変わり。
歌に合わせ採掘ポイントにピックルを叩きつける。
そう!
私はドラマー!
「どっちかって言うと、和太鼓?
格好は最高にロックだけど」
「それ、褒めてる?」
「どっちかって言うと、バカにしてる」
「シロ! 噛め!」
「わん?」
飼い主の言うことを聞けよぉ!
「あ、取れた」
「おし。これで500か」
「やっと半分。
残りは明日にしようか」
「だね」
正直、飽きた。
「じゃ、最後にボスを倒して終わりにしようか」
「りょ!」
私達は今日の採掘を切り上げスライムクイーンを倒しに行く。
目的はもちろんドロップアイテム。
戦いはほとんどカエデがしていたから私のMPにはまだ余裕がある。
「にしても、この洞窟広いな」
洞窟が深い上に分岐も多い。
上に下に左に右に。
採掘をしながらだけれど、一日かけてもまだ回りきれてない。
………………。
「カエデ?」
「何?」
「道、わかってる?」
「多分、こっちだと思うんだけどなぁ」
しまった。
自信満々に先頭を行ったからてっきり道を覚えているのだと思い込んでしまった。
「つまり、迷ってる?」
「多分、こっちだと思うんだけどなぁ」
「シロ! 出番!」
首を傾げるワンコ。
役に立たぬ。
結局、迷って歩いている最中も採掘を続け、総数が600を超えたあたりで目的の縦穴へと辿り着く。
「よーし。行こう」
カエデとシロが小走りで壁沿いの狭い道を下って行く。
怖くないのだろうか。
私はゆっくりと追いかける。
「いない?」
縦穴の底。
その中心で待っていたカエデとシロに声をかける。
一昨日いたスライムクイーンは見当たらず。
私が下りる間に既に倒したと言う訳ではないだろう。
「一回しか戦えないとか?」
「かなぁ?」
となると、早々に売りに出したのは失敗だったかな?
「どうする?
もう、時間ギリギリだけど戻る?」
「うーん……」
「ワン!!」
完全に油断していた私とカエデにシロが警告の声を上げるが、時既に遅し。
「どうしたの?」
「ワン!!」
シロは私達を見上げ再度吠える。
……いや、私達を見ているのではない?
「上?」
シロの視線の先。
私は天井を見上げる。
「!……!?」
それを認識した瞬間。
悲鳴を上げる暇すらなく私達はそれの体内へと取り込まれた。
そして、景色が切り替わる。
◆
「……は?」
街中へと転送された私とカエデ。
シロは…………ごめん。
また、死なせちゃったみたい。
「え? 何が起きたの?」
カエデは状況を理解していなかった。
「上から、スライムキングが落ちてきた。
で、それに潰されて死んだ」
厳密には少し違うけど。
スライムに取り込まれ、ステータス異常になりHPがゼロになったのだ。
ほんの数秒で。
「初見殺しってやつだね」
「卑怯だな」
まあ、そう言う仕掛けもあるだろう。
それは仕方ない。
無警戒だったこっちが悪い。
「次引っかからなければ良い」
「あれ。怒ってる?」
「当然。
シロの仇」
私の飼い犬をいじめた奴は許さない。
「明日、きっちり詫び入れさす」
「だな」
その為の準備は惜しまない。
【スライムの粘液】だけでも36個手に入った。
これを売って明日に備えよう。
◆
四日目。
鑑定済みの【スライムの粘液】などを道具屋で買い取ってもらって一人、50,000の収入。
あの洞窟、ちょっとした稼ぎ場かも。
私達はそれを使い、それぞれスキルとアイテムを購入する。
宵越しの金は持たない。
全ては、大金を掴む為の布石!
と言う訳で、私の買い物は次のようになった。
スキル
【料理】5,000
【採取】5,000
【マッピング】5,000
【毒耐性】5,000
【潜伏】5,000
アイテム
【料理キット(調味料付き)】10,000
【MPポーション】 3,000 ×3
【毒消し】1,000 × 5
で、一応宿代も残す。
完璧。
大満足の私を何か言いたそうにカエデが見ているが無視。
「今日の内に採掘の依頼は終わらせよう!」
「おう! そして、あのデカブツにリベンジだ!!」
と、刀を掲げるカエデ。
街中で刃物を抜くのは止めて?
◆
慎重に夜道を抜け、私達は洞窟へ。
一度に取れる量が多くなった。採取スキルは正解。
潜伏スキルのおかげで、敵が私の方へ向かって来るとこもほとんど無くなった。
結果、三時間ほどで、目標だった千個の鉱石採取を終わらせる事が出来た。
「お味見どうぞ」
洞窟の地面の上に料理キットを広げる。
セットの食器セットの中からティーポットとカップを出して、来る途中の道端で摘んだハーブを一握り。ペパーミントとローズマリー。そこにたっぷりのお湯を注ぐ。
ポットを少し蒸らしてから、カップ二つにお茶を注ぐとふんわりと立ち上る良い香り。
その一つをカエデへ差し出す。
「いただきます!」
「シロはまた今度ね」
お肉とか焼いてあげるから。
鼻をひくひくとさせるワンコの頭を撫でてからカップに口をつける。
ん。
美味しい。
鼻から抜けていく香りが、現実と遜色ない。
「ハチミツ入れても良いな。これ」
「私も同じ事思った」
「よし。なんとしても手に入れよう!」
「次の敵はハチと熊かー」
ついでにクッキーとかもあったら楽しそう。
食材とか売っているか後で見に行こう。
「ご馳走さま」
「お粗末さまでした」
使った食器は、メニュー操作一つでお片づけ。
便利。
次はレジャーシートを用意しよう。
「よし。このまま気持ちよく勝って帰ろう」
「だね」
デカブツまでの道のりは地図化が済んでいる。
あとは、倒すだけ。




