17.刀剣女子なの?
「部活頑張ってね」
「うん。
じゃ、また明日」
シロを撫でてから、カエデはログアウトしていった。
なんであんなセクハラを受けたんだろう。
下品な笑い声が木霊する小部屋で私とカエデは真顔で固まっていた。
とは言え、多分稼げそうなので依頼自体は受けたけど。
午後からは部活だと言うカエデと別れ、私は宿屋の部屋で仮想ウインドウを開く。
「ま、私だけとは限らないし」
手の中にある【スライムクイーンの粘液】を全プレイヤーが使える匿名のオークションに出品。
最低落札価格は100,000。
支払いは、Gでもポイントでも可、に設定。
私がこれを二つ持っていたら迷わず参加する。
出来れば多少値段が釣り上がると良いけど。
「また明日」
ウインドウを閉じ、シロの感触を確かめてからログアウトする。
◆
「さて、ご飯を食べて『レッドエデン』に籠りますか」
『レッドエデン』は昨日見つけたFPSゲーム。
荒野を染める赤い色。それは夕陽かお前の血か。
なんてキャッチコピーに惹かれた訳ではなくて、単純に体と銃の感覚が一番RE:Uに近かったから。
そんな理由。
銃の練習にもってこいなのだ。
◆
三日目。
パタパタと尻尾を振りながらシロがカエデに飛びついていく。
私はベットに腰を下ろし、仮想ウインドウを開く。
「…………えっ……え!? ちょっと待って!?」
「なんだ? 急に大きな声を出して」
そりゃ大きな声も出るよ!
「これ! 見て!」
カエデに仮想ウインドウに表示されたものを見せる。
――――――
【スライムクイーンの粘液】落札済
落札価格:195,000
支払:ポイント
――――――
「……は?」
入札すら無いんじゃないかと思っていたけれど、蓋を開けてみれば超高額。
なにこれ。
いや、でもこの金額を支払ったとしてもギルドの依頼を達成すれば差し引き十万の儲け。
しかもポイントと違って換金可能。
そう言う事?
予想外の高値に喜びよりも戸惑いが大きい。
「……刀、買おっか」
「え?」
こう言う時はパーっと使ってしまおう。
「ヨシノのお金じゃん」
「二人で倒したドロップなんだから山分けだし。
今まで使ったポーションと、多分この先も使うポーション。
それから、この先の護衛代。それら諸々込み!」
返事を待たずに私は部屋を飛び出す。
すぐにシロが追いかけてくる。
次いで、カエデが叫びながら。
「今日は混んでるね」
商店が並ぶ一角は、昨日より人影が多い。
みんなNPCに見えるけど、多分プレイヤー。
時間帯も関係あるのかな。昨日は午前中にログインしたけれど、今日は夜だし。
「ねえ。やっぱ駄目だって」
「うるさい。いい加減覚悟を決めろ」
どうせ、ほかに使い道のないデジタルデータ。
派手に使う!」
「ならせめて服を買おうよ」
「え?」
なんで?
「え。なにその『なんで?』って顔」
「なんで?」
「人生に於いて、半裸の女に服の必要性を説く日が来るなんて予想しただろうか……」
「半裸言うな。
でも、私の中で今、着衣の優先度はとても低い。
遠距離攻撃メインなのであまり敵に攻撃されないし、他人の目は一切気にならない。
それならば、武器とスキルを充実させるべきだ。
服を買いたいなら、攻撃を受けるカエデの装備を充実させるべきなのだ!
違う?」
「一理ある。
けども、それ以前に人として服を着るべきでは?」
「お前……それ、シロの前でも同じ事言える?」
「シロ、犬じゃん」
「残念! 狼でした!」
などと言っているうちに武器屋に到着。
……店の中も結構な混雑。
「刀、刀っと……あった」
「霊刀・コテツ。
奇しくも新撰組局長、近藤勇が持っていたとされる長曽祢虎徹と同じ名だ。反りが浅く、強さと鋭さを感じさせる湾れの刃文は、長曽祢虎徹の特徴とも一致する。
切れ味鋭く、頑強と言われた最上大業物の一振り」
うわぁ。
めっちゃ早口。
ていうか、売ってるの知ってたな。
でも、説明に贋作って書いてあるよ?
「そんな刀好きだっけ?」
「刀と言うか、新撰組は基本だよね」
「へー」
ごめん。
どうでも良いや。
「じゃ、お金渡すから。
500ポイント足らないけど、出せるよね?」
「……かたじけない」
なんでいきなり武士キャラ?
「構わんよ」
その分、働いてもらうから。
Q.粘液高すぎじゃね?
A.
MP回復アイテムの素材になるので重宝する上、
現時点ではアイテムのドロップ場所が判明していない。
オークション出品者を特定して聞き出そうとしたプレイヤー勢と
純粋に素材として手に入れたかった錬金術士との
競り合いになって値段が釣り上がった。
Q.オークション出品者特定なんて無理じゃね?
A.
オークション後に金遣い荒い奴が居たらそいつが出品者じゃね?
よし、片っ端から声掛けようぜ。
Q.バカなの?
A.コンタクト制限が想定外だっただけで狙いは悪くなかった(震え声)




