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16.きっと森の神のご褒美

 街に戻り、シロを呼び出す。

 戦いの途中で召喚解除されたのが不満なのか寝そべって顎を地面につけるワンコ。


「いじけるなよー」


 頭を撫でながら声を掛ける。

 目の前で死なれるとちょっとショックなんだよ。

 シロをなだめながら待っていると、カエデが転送されて来た。


「圧死って」

「私、毒殺」


 さて、死因としてどっちがマシだろうか。

 どっちもどっちだな。


「鍛冶屋さんへ行こうか」


 シロを抱き上げ頬ずりするカエデにひと声かけて歩き出す。


 ◆


「こんばんは」

「はーい」


 相変わらず、第一声は元気な奥さん。


「何の御用でしょうか?」

「昨日はどうも。旦那さんの具合はどうですか?」

「ああ!」


 私の一言で、奥さんの役柄が切り替わる。

 そう言えば、私達的には昨日だけれど、彼女からしたらまだ今日のことなのか?


「おかげさまで。

 主人も礼を言いたいと申してます。

 奥へどうぞ」


 礼は、金品なんかが喜ばれますよ。

 店の奥で、青白い顔をした旦那さんが待っていた。


「来たか。

 昨日はありがとうな」


 頭を下げる旦那さん。

 その向かいの席へ私とカエデが腰を下ろす。


「こうして来てもらったのは他でもねぇ。

 頼み事をしたくてな」

「頼み事?」


 お金の匂い?

 でも、昨日は赤字だしな。


「見ての通り、俺はあのスライムクイーンのお陰で魔力酔いだ」

「魔力酔い?」

「ああ……わからんか。

 アクの強い魔力を一気に体内に取り込むと起きる状態異常だ。

 魔力のコントロールが効かなくなる。

 そのおかげで商売上がったりだ」


 鍛冶屋なのに?

 その疑問はカエデが尋ねた。


「鉄を打つのに魔力要るの?」

「鉄を打つ? 何言ってんだ。

 武器を作るのも直すのも魔法だ。

 素材に魔力を流し、強化やら加工やらをするんだぞ?」


 へー。

 そう言うシステムなんだ。


「で、頼みってなんです?」


 一つ賢くなったところで先を促す。


「実はな、俺の代わりに鉱石を採ってきてもらいたい」

「鉱石採掘?」

「そうだ」

「カエデ。

 採掘スキル、持ってる?」

「無い」

「私も無い。

 なので、その依頼、請けれませんね」


 スキルだけでなく、採掘用の道具も必要なはずだし。

 そんな出費、今は無理。


「道具は貸してやる。

 それを使えばスキルなんか要らない」


 へー。

 美味しい話に聞こえるけど、何か裏がありそうなので探りを入れてみるか。


「でも、私達、炭鉱夫じゃないし。

 ほかの人にお願いしてみては?」


 旦那さんが弱々しく首を横に振る。


「昨日助けてもらったあの洞窟はな、俺だけの穴場なんだ」

「穴場」

「そうだ。

 なんでかわからねぇが、あそこは魔力の純度が高い鉱石が採れる。

 なるべく荒らされたくない。

 無闇に教えたくないんだよ」


 成る程ね。

 でも、行き掛かり上私達にはバレた。

 ならそれを利用しようと言うことか。


「どう思う?」


 小声でカエデに確認。


「いいんじゃない? 手伝っても」

「りょ」


 じゃ、その方向でまとめよう。


「報酬次第かなぁ」


 と、まずはもったいぶる。


「鉱石千個納品。

 種類は問わない。

 価格は最低一つ50。種類によっては一つ10万まで出す」


 んー。

 労力がわからないので判断し難い。


「鉱石って、どうやって取るの?」

「鉱石が掘り出せる採掘ポイントにピッケルを打ち付ける。

 それだけだ。

 採掘ポイントは見りゃわかる」


 とすると、それほど難易度は高くないかな。


「オジサンは千個取るのにどれくらいかかる?」

「まあ、二、三日だな」

「安くない?」

「言ったろ。貴重な鉱石が採れるって。

 場合によっちゃこっちが破産するかもしれねぇ」

「でも、洞窟の中、危険だし」


 おっさん、死にかけてたじゃん。


「中に居るのはスライムばっかりだ。

 アイツラはそんなに早く動けない」

「あのスライムは刀で切れないのか?」


 と、カエデ。

 多分、物理攻撃耐性とかがあるんだろうから諦めなよ。


「普通の刀じゃ無理だな」


 ほら。


「普通じゃない刀なら?」

「切れる」

「……普通じゃない刀ってなにさ?」

「魔力が宿った霊刀。

 ちょうど、この前一振り納品したからまだ武器屋に並んでるんじゃないか?」

「ヨシノ。後で見に行こう」

「高いんじゃない?」

「まあ、安かねぇな」


 ほら。


 ぐぬぬとでも言い出しそうな顔をするカエデ。



「まあ、スライムは銃でなんとか出来るから、カエデがピッケル振れば良いよ」


 私は護衛。


「でも、もう一つ問題がある」

「何でぇ?」

「あの洞窟の場所。

 さっき行ったけど、夜だったからか全然わからなかった」

「ああー」


 鍛冶屋の旦那がニヤリと笑う。


「あそこはな、目印があるんだ」

「目印?」

「そうよ」

「どんな?」


 ただ木と草しか無かったけれど。


「こう、山道を登って行くとだな」

「うん」

「左側に木が生えてるんだ」

「いや、木なんて何本も生えてるよ」


 木の種類なんてわからないし。

 ……いや、鑑定すればわかるのか?


「一本だけ、目印が有ってな。

 その向かいを分け入って入っていけば洞窟に辿り着けるって算段よ」

「目印って?」


 鍛冶屋が椅子から立ち上がり、両手を使って説明を始める。


「こう、木が立ってるだろ。

 で、ちょうど、この辺、腰の高さ辺りの枝が折れてんだよ」


 いや、そんな木どこにでもありそうなんだけど。


「キノコみたいに先が丸まっててな、枝の付け根の下に瘤があってよ」


 ……。


「ありゃ、どっからどう見てもイチモツだな!」






 この依頼、請けるの止めようかな。

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