表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/73

15.夜の世界

 翌日。

 私達はリアルで連絡を取り合いロビーで待ち合わせ。そして、同時にログインする。


「シロ!」


 そう言えばログアウトする時にそのままだったシロが宿屋の部屋の中でお出迎え。

 すかさずカエデが飛びつき撫で回す。


「とりあえず、鑑定。

 その後にギルド行こうか」


 そう言いながら私は窓の外を眺める。

 街灯の灯った街。

 このゲームは現実の一日毎に昼と夜が入れ替わる。

 今日は夜の日。


「昨日の成果」


 カエデがウインドウを私に提示。

 その内容は、【粘液】✕ 5。

 鑑定すると、全て【スライムの粘液】に変わる。


「へー。こんな名前なんだ」


 私の手持ち素材も鑑定する。

 【スライムの粘液】✕7。

 【スライムクイーンの粘液】✕ 1。

 光る粘液だったのはでかいスライムのドロップ品。

 レアっぽい。


「ギルドの納品か、お店の買取。

 高い方に持って行こう」

「良し! シロ、行くよ!」

「ワン!」


 待て!

 そのワンコはわたしのだ!


 ◆


 【スライムの粘液】はお店の買取で一つ2,500ポイント。

 ギルドにも納品依頼があって、十個で30,000G。

 ギルドの方が数が必要な分、買取価格が高いのか。

 ギルドに納品し、カエデと分け合う事にした。


「なあ。この依頼」

「ん?」


 支払いを受け取っている間にカエデが依頼の紙を見つけて持ってきた。



 【スライムクイーンの粘液】✕ 3

 300,000G



「持ってたよな!?」

「いや、一つしかないよ」

「えー。残念。

 じゃ今から取りに行こう!」

「行こう」


 私は即答した。

 それだけ魅力的な額。


 でも、その前にお買い物。

 準備、大事。


「何買うの?」

「スキル」


 このゲーム、どうやってもお金が必要。

 その為にはギルドの依頼でモンスターのドロップアイテムを納品するのが手っ取り早い。

 なら、それを効率良く集める為に必要なもの。


 【識別】

 モンスターの情報を表示するスキル。


 名前がわかればそもモンスターのドロップアイテムを予想する事が出来る。

 高報酬の依頼にある名ならば、重点的に狩れば良い。


 そして、【MP回復速度向上】。

 これは時間経過でのMP回復量を増加させるもの。

 銃の弾数がMP依存な以上、持っていて損はない。


 識別が5,000G。MP回復速度向上が10,000G。


 あっさりと、さっきの報酬を使いきってしまった。


 まあ、この後三十万稼げるし。


 カエデもスキルを購入したようだ。


「何買ったの?」


 私は自分の購入したスキルを教えた上でカエデに問う。


「【挑発】」

「オラオラ?」

「いや、今時そんな感じで挑発する輩は居ないだろうし」


 冗談だよ。

 【挑発】は敵の意識を自分のへと向けさせるスキル。


 カエデはより一層私の盾として振る舞うつもりらしい。

 うんうん。

 良い心がけだ。


「あと暗視」


 うん。

 それは必要だね。


 その後、道具屋で回復アイテムを購入。

 そして、街の外へ。



 ◆


 再び、街の中へ。


「何あれ。やばい。マジ怖い」

「昔さ、犬と猫の群れの中で寝たいって言ってなかった?」

「集団でガチ噛みされるのは違うじゃん?」


 勢い勇んで街から飛び出した私達を待ち構えていたものは夜の世界の洗礼だった。

 具体的にはナイトメアワイルドドッグっていう犬型モンスターの群れの襲撃。

 反撃すらままならないままあえなく街へと死に戻り。


「召喚陣・起動・白狼。おいで、シロ」


 とっさにシロを帰還させた私の判断は間違ってないと思う。


「どうする?」


 私とカエデはペナルティで一時間のステータスダウン。

 外には行けない。


「一回休憩にしようか」

「ごち!」


 ワタシ、文無しなので。


「宿代くらいは稼がないとね」

「豪気に使うんじゃなかった」


 ひとまず、カフェに入り作戦会議。

 半分はリアルの話だったけれど。


 ◆


 シロがいやに大人しいと思ったら足下で寝てた。

 可愛い。

 でも、いつの間にか、二時間も経っている。

 私達がお茶の一杯を飲む間に現れるとは!

 おのれ、時間泥棒! 許すまじ!!


「では、もう一回チャレンジしようか」

「そうね」


 先程の敗北は、シロが警戒しているのを無視して突っ込んでいったカエデが諸悪の根源である。

 今度はもっと慎重に。

 それが、私達の結論だ。


 目指せ。

 三十万円。


 ◆


 【スライムの粘液】二つを店に売却し、カエデが気配察知スキルを購入。

 ワンコと同じスキル。

 シロを見ててこれだと直感したそうだ。

 真似っこめ!


 とは言ったものの、猪突猛進のカエデが待てを覚えたのは大きい。


 時間こそかかったものの、昨日の洞窟近くまでなんとか辿り着く事が出来た。


「……この辺だよね?」

「だと思うんだけど、暗いからわかんない」


 カエデが刈り取った草がもう生え揃ったのか、昨日入って行った脇道が見当たらない。


「こんなとこ、通った?」

「多分」


 山道をひたすらに歩くが目的の洞窟へどうやって行ったら良いかわからない。

 頼みの綱、シロもわかってない様子。


「いや、絶対通ってないって」

「昨日は走ってたからよく覚えてないだけだよ」


 いや、絶対通り過ぎてる。

 マップアプリの様に自分の場所を表示してくれる便利なものはない。

 だから、記憶に頼らざるを得ないのだけれど、その頼るべき先がそもそもポンコツなのは否めない。

 いや、周りの景色を覚える為に歩いていた訳じゃないから。

 私もカエデも!

 覚えようとしていたら結果は違ったはず!


「ね? シロ」

「わん?」


 何で首を捻るんだよ。

 いきなり同意を投げつけた私も私だけど。





 慎重に戦いを避けながら夜道を進む。

 やがて真っ暗な森を抜け、視界が開けた。


「滝だ」

「綺麗」


 絶壁を流れ落ちる滝と、その下の水面の上を淡く発光しながら漂う小さな光の群れ。

 幻想的な光景。


 私達は滝壺に腰をおろし、しばらくその光景に見入っていた。


「お茶とか欲しいね」

「そうだね」


 水面に空の月と星が映り込み、滝の落ちる音だけが聞こえてくる。


「結局見つからなかったね」

「鍛冶屋で聞いてみようか。

 顔出せって言ってたし」

「また戻るのかぁ」

「どうせ戻るなら……」


 歩くより、死んで戻った方が早い。

 その後のデスペナルティも街の中に居れば問題ないのだから。

 そういう結論に達した私達は、滝沿いを歩きながら亀を倒し、大蛇に殺されるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ