14.助けられ艶っぽい声を出しならがら目覚めるのはたいていお姫様
「………………う…………う……ん」
スライムの中から助け出し、横に寝かせていた(推定)旦那さんが目を覚ましたようだ。
「大丈夫ですか?」
「……ここ……は?」
よろよろと半身を起こし、ゆっくりと回りを見回す男の人。
松明の明かりに照らされた顔は、死人のように青白い。
「洞窟の中です。貴方はスライムの中に閉じ込められていたんですよ」
「……そうか。俺は、竪穴の縁から足を踏み外して、穴の底にいたスライムキングに飲み込まれたのか」
丁寧な解説ありがとうございます。
「君達が助けてくれたのか。ありがとう」
「いえいえ。ところで貴方は鍛冶屋さんですか?」
「そうだが……どこかで会ったことがあったかな?」
「いいえ」
私は首を横にふる。
「私達は、奥さんの依頼で貴方を救出に来たのです」
「そうだったか」
「奥さん、とても心配してましたよ」
「それは、すまないことをしたな。欲を出したばっかりに」
「もう少ししたら、私達の力も回復します。
そうしたら街まで送りますよ」
HPとMPは時間経過でわずかに回復する。
そうしたら、シロを呼び戻して帰ろう。
「いや、それには及ばない。
私がいては足手まといだろう。一足先に帰らせてもらう」
そう言いながら旦那さんは身につけていた鞄の中から小さな宝石を取り出す。
「どういうことです?」
「これは、転移石。
街へ一瞬で戻ることが出来る。
決して安いものではないが、この際仕方ない……」
道具屋には無かったな。
そのアイテム。
非売品? いや、『安いものではない』ってことはどこかで買えるはず。
「助けてくれて感謝する。
謝礼は店で渡すから、立ち寄ってくれ」
「あ……」
返事をする間もなく、旦那さんの姿が消えてしまう。
「……もっと、こう、さあ?」
「まあ、一緒に連れて帰るのも大変だったろうし、結果オーライでは?」
「そりゃ、そうなんだけどさぁ?」
なんか、釈然としない。
「これで、5,000Gだから一人頭2,500G
私は松明で900の出費」
「アタシはポーション十二個」
一つ700Gだから、8,400G。
二人あわせて9,300Gか。
「大赤字。
シロに何個使った?」
「四つかな?」
嘘だ。
多分、五つ。
てか、旦那さんにも一つ使ってたし、全然割に合わなかったな。この依頼。
「後は、スライムの素材がどうなるかだね」
道中で倒したスライムからドロップした【粘液】と【光る粘液】。
これを鑑定したアイテムが、ギルドの納品依頼にあれば御の字なのだが。
「鑑定は明日だなー」
鑑定するにもMPが必要。
今日はもう、その余裕は無い。
「MPのやりくりが本気でしんどいなー」
「MPポーション買うしかないだろうね」
「高っかいんだよねー」
「何するにも先立つものが必要。
良く出来てるわ」
「武器選び、間違ったかな」
「そんな事無いんじゃない?
少なくともその銃とシロがいなかったらここはクリア出来てないはずだし」
「そうかな?」
「そうだよ」
「そっか。
じゃ、その一番の功労者を呼び戻そう」
「早く早く!」
私の代わりにスライムの攻撃を受け、HPを全損させたシロ。
再召喚までに三十分のインターバルが必要だった。
私達が竪穴の底でじっとしていた理由のひとつがそれ。
「じゃ、行くよ。
召喚陣・起動・白狼。
おいで、シロ!」
私の前に出現した魔法陣、
その中心にちょこんと座るシロ。
「おかえり」
「ワン!」
私を助けたワンコ。
おすわりしたままのシロを思いっきり抱きしめワシャワシャと全身を撫でる。
「よく頑張ったね。ありがとう」
次は、君を死なせないように私も頑張らないと。
◆
極力敵をやり過ごす省エネモードでキノエネの街まで戻った時には既に今日の活動制限時間に達しようかという頃だった。
私達は足早に鍛冶屋へ向かう。
「こんにちわ」
「はーい!」
奥さんが元気な声と共に現れる。
「旦那さん、戻りましたか?」
私がそう尋ねると、まるで芝居の役に入り込んだように表情と声色が変わった。
「ああ、ありがとうございます!
主人は今、奥で休んでいますが、命に別状はありません!!
あなた方は、命の恩人です」
つまり、依頼は達成と言うこと?
「これは、ささやかですが、お礼になります」
<依頼達成>
<報酬:5,000G入手しました>
<報酬はパーティメンバー2名で分割となります>
「主人も改めて礼を言いたいと言ってましたので明日にでもまたお立ち寄りください」
「あー、はい。ではお大事に」
そう言って、私達は店を後にする。
奥さんは深々と頭を下げそれを見送っていた。
「「イエーイ!」」
店から出るなりハイタッチを交わす私とカエデ。
結果、大赤字だったけれど初めて依頼を受けて達成した。
「次は、宿屋」
「なんで?」
「宿屋でログアウトすると、明日ログインした時にHPとMPが回復してるんだって。
その分、お金は必要だけど」
「いくらくらい?」
「千円」
「じゃ、その前にあそこに寄るよ!」
そう言ってカエデが指差したのは串焼きを売る屋台。
功労者のシロは私とカエデからそれぞれ串焼きを与えられ、ぺろりと平らげた。
HPが0になると
・プレイヤー
・・ソロの場合:即座に最後に立ち寄ったリスポーンポイントへ転送。一時間のステータス低下。
・・パーティの場合:一定時間自分の死体を見下ろす。一定時間経過、もしくはパーティが全滅した場合、リスポーンポイントへ転送。一時間のステータス低下。
・召喚獣
・・30分召喚不可。30分後HP、MP半減で召喚可
・NPC
・・まちまち




