わたしたちのせかい
...現代
....LES本部
レッサー化の研究を行う白を基調とした施設、それがLESである。
10年前のネガオリジン。その発生源となった場所に追悼と人類の復興の為、当時莫大な資産を有していた万朶羅須の支援で創立された。
「諸君」
施設内の大広間に鎮座する白い髪と着物を纏った背の低い老人が口を開いた。
「挨拶を」
「承知いたしました。」
彼は横にいた黒服に一声かけると部屋の奥へと戻って行った。
黒服は老人が部屋を出るのを確認すると、大きく息を吸い込んで叫んだ。
「皆の者ーーーーーーー!」
「私たちの世界は10年前に在り方を大きく変化させられた!その原因となったのは忌々しきlesser共である!」
「世界を守る為に今日も研究、鍛錬、健康管理!全てに関してパーーーフェクトにこなすのだ!」
「では。おはようございいいいいいいいいーー!!」
「「「「レス!」」」」
独特な掛け声と共に朝礼は終了した。
...現代
....アパートの一室
円居伴星は退屈な人であった。
産まれてから今日までの19年間、賞賛というものを受けたことがない。友人と呼べる者も両親もいない。
彼の部屋は物で溢れていた。いや?ゴミではない。
釣竿、スパイク、キャンプ道具、TCG、マンガ、アニメDVD、ゲーム、フィギュア、模造刀、モデルガン、女性、プラモデル、画板、画材、CD、レコード、酒、キッチン用品、便利グッズ、家電、アクセサリー、トレーニング用品、デスクトップPC、バット、薬品、洋服、
俺の次はどこにあるのだろう。
スマホを開いてレッサーの出現情報を確認する。
【アオパンダ地区は今日もヘイワ】
アプリを開くとデカデカと文字が表示された。
「そりゃそうか。」
趣味と呼べるもの全てに手を付けてすぐに飽きてしまった。
俺は、何を見れるのだろう。
思考しながらベッドから起き上がる。部屋から出ず、また何とも出会わない一日が始まるのだ。
憂鬱になりながら洗面所へ向かう。
歩き始めて、足元に違和感を感じた。
「ぐぇっぁ」
ぐぇっぁ。
ぐぇっぁ?俺は一人暮らしだ。ここに住んで3年になるが初めて聞く音だ。
また何か買ってたっけ?パーティグッズでも踏んだのか?
すかさずどかした足元を見ると、見知らぬ女性がいた。
「……怖っ」
なんだ?何を踏んだ。頭がフリーズする。
何とも出会わないと思ってた今日という日に何とお手軽に出会いを果たしただろう。しかし場所が問題だ。ここはどこだっけ?俺の部屋だよな?
よく見ると溢れたゴミ(ゴミではない)の間にかすかに髪の毛のようなものが見える。
「えっ、やばいどうしよう。警察?」
俺はもうパニックだった。退屈な割に刺激に弱いのだ。
「…れす…」
「え?」
喋った…のか?超唐突に現れたこの女、現れた?いや、そもそもいつからいた?俺が寝てる間か?
「…おもい…れす…」
「…みんな…ごめん…ね…」
それだけ口にすると彼女は静かに寝息を立てた。
「2 ぼくらはどこからやってくる?」へ
用語解説
ネガオリジン…10年前に発生したレッサーパンダ型の未確認生命体によるパンデミック
私達の国に甚大な被害を与え、40万人以上が犠牲となった
LES…ネガオリジンを受け、万朶羅須が創設したレッサー化及びネガリヤに対抗するための研究施設
レッサー化した人間を保護して人間に戻す薬を開発したり、ネガリヤの殲滅を行う
国内に3つの支部が存在し、LESは人類の希望となっている
万朶羅須…読み方はハンダレス LESの最高責任者であり、創設者。1度だけレッサー化した人間を元に戻す事に成功しており、その道の権威として老いた現在でも活躍を続ける。