「あれー? あれれぇー?」
~~~リリー~~~
「あれー? あれれえー? どうしたの綾女さーん?」
リリーが声をかけると、綾女はびくりと肩を震わせた。
「リ……リリー様……?」
驚き立ち尽くしたまま、顔に当てた指と指の隙間からリリーを見てくる。
「こんなところで何してるのー? 勇馬の手当てをしてたんじゃないのー?」
ずずいとリリーが間を詰めると、らしくもなく退がろうとする。
「いえその……あっ?」
だが残念、後ろは壁だ。
「どうしてこんなところにいて、どうしてそんなに、お顔を真っ赤にしてるのー? それじゃあまるで、勇馬と何かあったみたいじゃなーい」
逃げ道に窮した所へ、リリーはさらに渾身のストレートを放った。
「ねえー、そうなのー? やっぱり勇馬と何かあったのぉー?」
「な……なっ、何もありませんよっ」
綾女は首を左右に振った。
「ならどうして、そんなお顔をしてるのー?」
「だから知りませんよっ」
綾女は声を荒げると、リリーの追及を避けるように肩を振った。
こじ開けるようにして逃げ道を作ると、早足でその場を後にした。
「あー……そんなことより綾女さん。ボクが勇馬のお世話しててもいーい? ……って、もう聞こえてないか」
カーゴルームとリビングの間の扉は、すでに固く閉ざされている。
「ふうーん……しかし意外だなあー」
壁際のスイッチに指を当てながら、リリーはぼそりとつぶやいた。
「綾女さんってツンとしてて、もっと違う感じなのかと思ってたんだけど……」
あの赤面とあの動揺。
あれはまぎれもなく……。
「意外と強敵になったりして……?」
リリーは「むむーん」と不満そうに唇を尖らせた。




