「勇者狂い」
~~~リリー~~~
「やった……」
その光景を眺めながら、リリーはひとりガッツポーズをしていた。
「やったやった……っ」
綾女の生還を導き、レティシアの自滅を招いた勇馬の頑張りを称え、リトルノアの運転席でぴょんぴょこ飛び跳ねていた。
「やったあーっ!」
表情には笑み。
満開の、花のような笑みが浮かんでいた。
「ほーらね? ボクは信じてたんだ! キミが勇者だって! どれだけ否定してもわかってたんだ! 確信してたんだ!」
愉快痛快とばかりに運転席の背もたれをバシバシ叩きながら、リリーは続けた。
「思ってた通りだ! 昔から想像してた通り!」
そのボルテージは怖いほどに上がり続けていく。
「そうさ! 出会う前からわかってたんだ! キミがなんだかんだ言ってもやってくれる人なんだってことを! どうあれすべてを解決してしまう人なんだってことを!」
息継ぎする間すらも惜しいのだろうか、荒く呼吸を繰り返しながら言葉を重ねていく。
「ねえ! わかるかな!? ねえ! わかってくれるかな!? ボクがどれだけこの日を待ち望んで来たかを! どれだけキミを想っていたかを! 遠い世界にありてもキミを! ねえ勇馬! 勇者様、いや……」
瞳を潤ませ、頬を赤らめ──そして叫んだ。
「ボクの未来の旦那様っ!」
どう聞いてもおかしい、病的な言葉を口にした。
フェロー王国第三王女、リリーバック・フェロー。
優しく可愛らしく、男の子のような快活さで広く国民に人気のある彼女だが、性格上の問題点がひとつある。
それは、とある男性に恋をしていることだ。
情熱的を通り越し、盲目的に愛してしまっていることだ。
十四歳という年齢を考えれば、それも無理からぬことだろう?
恋に恋する年頃の女の子の、初々しさというやつだろう?
いや。
そういう次元の話ではないのだ。
なぜならその男性は、この世の者ではないからだ。
ここテンペリアではない、他の世界の人間だからだ。
つい先ほどまでは……。
そうだ。
王都雀の声高に曰く、彼女のあだ名は──「勇者狂い」。




