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自走式核シェルターで異世界サバイバル! ~銃火器とパワードスーツと、最強バトルメイドもオプションです~  作者: 呑竜
「第3章:不感地帯」

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「オーバーロード!!」

 ~~~勇馬《ゆうま》~~~

 



 頭上を仰《あお》いだ俺は、とんでもない光景に目を剥《む》いた。


「たしかに躱《かわ》せとは言ったが、そんな無茶な躱し方をしろとは言ってねえだろうがあーっ!?」


 山刀《マチェット》を足下に敷いた綾女《あやめ》は、エントの腕をさながらビッグウェーブのように乗りこなした。

 おかげで衝突死は免《まぬが》れたが、代わりに物凄い勢いで射出(・ ・)されてしまった。


「サーフィンやってんじゃねえんだぞ……ってそうじゃねえ! 感心してる場合じゃねえ! アシュラちゃん! 綾女の距離と高度を!」

 

 アシュラちゃんに問いかけながら、俺は走り出した。

 綾女の後を追って、森を駆けた。


 ──高度五十メートル、時速九十キロにて西へと飛行中です。相対速度差は時速十三キロ。なおも引き離されています。


「ぐお……っ」


 とんでもない数字に、一瞬気が遠くなった。

 生身の人間がそんな飛翔をした結果どうなるか、そんなの考えるまでもない。


「綾女の落下軌道と予測地点を算出してくれ! 俺がこのまま全力で走り続けた時に交差するだろうポイントもだ!」


 ──……イエス、マスター・ユーマ。

 

 アシュラちゃんの返答には、しばしの間があった。

 その間二秒か、三秒か。

 口にしてみりゃわずかの間だが、実際には永遠のように感じる時間だ。 

 何せその間も、綾女は落ち続け(・ ・ ・ ・)ている( ・ ・ ・)わけだから。


 ──算出完了しました。綾女様の落下軌道と落下予測地点は赤色のラインとサークルで、ランデブーポイントへ通じるルートは緑色のラインで、ランデブーポイントそのものは緑色のサークルで表されています。


 バイザーの右端に、付近の立体マップが表示された。

 空を斜めに下降する赤色の線と地を斜めに駆け上がる緑色の線が、緩やかな弧を描きながら三百メートルほど先で交差しているのが見える。

 交差点には緑色の丸印があり、これがつまりはランデブーポイントを示しているのだろうが……。

  

「……ダメだ! 低すぎる!」


 俺はぶんぶんと首を横に振った。


 ランデブーポイントは地面からわずかに三メートル程度の場所だ。

 ほとんど落下予測地点と変わりない場所で、これではおそらく間に合わない。


「ランデブーポイントをもっと上に出来ないか!? 少なくとも二十……いや二十五メートル!」


 ──その設定を行った場合、マスター・ユーマの肉体の許容限界を超えますが、よろしいですか?


「ぐぅ……っ!?」


 何それ怖い。

 一瞬怖気(おじけ)づきそうになったが、しかしなんとか持ちこたえた。


 このまま綾女を死なすよりはいい。

 咄嗟《とっさ》にそう思った。

 

「いいよ! それでいい! 構わないからやってくれ!」


 ──了解しました。マスター・ユーマ。スーパーチャージャー起動。以後の機体制御はオーバーロードにて実行します。


 背中の辺りで何か音がした。

 過給機によるものだろうか、「ヒュゴウ……ッ」と酸素を吸い込むような音がした。


 すると──


「痛《い》でででででで……っ!?」


 いきなり全転換粘体《フルコンバージョンフルイド》の拘束力が強まった。

 ギチギチと引きちぎらんばかりに締め付けてきた。

 関節部と手足の末端がとくに痛くて、涙が出た。


「うぎぎぎぎぎぎ……っ!?」


 酸素の供給量が増え、冷房が凄い勢いで噴き出した。

 バイザーの左端に表示されている心拍計《ハートレートモニタ》が、見たこともない数値を示している。

 しかもそれは、なおも上昇している。


 だがそのおかげというべきか、阿修羅6000の速度は目に見えて上昇した。

 速度表示で時速百十キロ超。


 景色がぶっ飛ぶ。

 綾女との距離もどんどん縮まって行く。

 ランデブーポイントもまた、みるみるうちに上昇して行く。


 もちろん肉体へのダメージもデカかった。


 何せ辺りは森。

 起伏が激しく、障害物があちこちにある。

 足腰や関節部への負担が半端ない。


「いぎっ……!?」


 張り出した木の枝を腕で払うと、走行バランスが崩れてぶっ飛びそうになった。

 もう片方の腕を振り回して、必死で体勢を整えた。


「ぐぎ……っ!?」


 倒木を跳んで避けると、着地した瞬間片足が埋まって転びそうになった。

 両腕を振り回し、もう片足で踏ん張るようにして引き抜くと、すぐに前へと送り出した。

 体勢は崩れたが、なんとか転ぶのは防げた。


「ぐがああああ……っ!?」


 そのつどそのつど、とんでもない負荷が体を襲った。

 手足が千切《ちぎ》れそうに痛み、泣きそうになった。

 すべてが終わった頃に自分の身体がどうなっているか……ちょっと恐ろしくて、想像もしたくない。


「無視だ無視! 全部無視だ! 怖いことは考えない! 自分に都合の悪いことは考えない!」


 全力で、俺は叫んだ。


「なんせ俺はニートだからな! 将来のことなんて考えないんだ! 今の自分が良ければそれでいいんだ! なあ、困った奴だろ!?」


 目の前には手ごろな大きさの岩がある。

 緑色の線はその岩の上で急上昇している。


「だからさ、綾女! 俺を絶対、異世界《こんなとこ》でひとりにするんじゃねえぞ!?」


 一歩、二歩──テンポをつけて踏み込んだ。

 両腕を振り上げ、振り下ろすと同時に三歩目を全力で振り込んだ。


「そうだその調子! こっちにきっちり、落ちてこおおおおおおおーい!」


 外部スピーカーをマックスボリュームにしながら、俺は跳んだ。

 高く、高く、空へ──

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