「女勇者誕生」
~~~小鳥遊勇馬~~~
「やっぱり!」
俺と綾女のやり取りを聞いていたリリーが、思い切り歓声を上げた。
「やっぱり勇者様だった! ほらね!? ボクの目に狂いは無かった! ついでにボクが王女だってことも証明されて、二重に最高! やったやったー……ってうぷっ!?」
ベッドの上でぴょんぴょこ勢いよく飛び跳ねたせいで、半端に着込んでいたパジャマのズボンの裾を踏んで転んだりしている。
子供かおまえは……ってまあ、実際子供なんだろうけども。
「あっはっは、転んじゃった! でも痛くないよ! 嬉しい嬉しい! ひゃっほうきゃっほう!」
「おいリリー。ちょっと待て」
うん……あんまりぬか喜びさせるのもなんなので、早めに釘を刺しておくか。
「ものすっごい喜んでるとこ悪いんだが、俺は勇者になるつもりはないぞ?」
「え? うん?」
突然ハシゴを外された格好になったリリーは、バンザイしていた両手を降ろした。
ベッドの上に正座して、まじまじと俺の顔を覗き込んでくる。
「……どゆこと?」
「今おまえも聞いてたろ? すごいのは俺じゃなくこいつなの。俺みたいな引きニートとは違って、過酷な戦争を知ってる。銃火器の取り扱いにも長けてて、モンスターの群れ相手にも怯えないクソ度胸がある。そこへいくと俺はどうだ? 家柄に恵まれただけの苦労知らず、運動神経ゼロ、頭はポンコツ、ついでにチキンハートの持ち主だ」
「で、でも勇者様はボクを……っ」
「さっきのことなら、やっぱり俺の力じゃねえよ。阿修羅6000ってチート兵器のおかげだ。俺はただ乗って、適当に暴れただけだ」
反論しようとしたリリーの鼻先に、容赦なく事実を叩きつける。
「でも……でもぉー……っ」
もどかしそうに髪の毛をぐしゃぐしゃとかき回すリリー。
頑張って俺を説得する言葉を探しているんだろうが無駄だ。
なにせ俺は現役引きニートだからな、はぐらかしたり誤魔化したりするのは誰よりも得意なのだ。
「とにかくだ。そういうわけで俺は使えねえ人間だしやる気もねえ。それを知ってたから、爺ちゃんは綾女とリトルノアをつけて寄越したんだろ?」
「うう……うううーっ……?」
頼みごとを断られたと思ったのだろう、リリーはもはや半泣きだ。
「おっと待て待て、悲観するのはまだ早いぞ? なぜなら俺の話はまだ終わってないんだからな?」
「え? え? ってゆーと?」
希望を取り戻して前のめりになったリリーの目の前に、俺は人差し指をビシッと立てた。
「まず現状として、俺たちは地球に戻る方法を探してる。そしておまえのとこには『勇者の伝説』があるんだろ? ついでにおまえは王女様で、国の中でも重要な地位にいるんだろ? だったら話は簡単だ。俺たちを貴賓待遇で迎えろ。ついでに地球へ戻る方法を教えろ。もちろんただでとは言わねえ。しかたねえからおまえんとこの国難とやらに助勢してやる」
「え? でもさっき勇者様は……」
「俺はって言ったんだよ。俺は勇者にはならない。つまりこいつが……」
俺はビシリと綾女を指差した。
「綾女が勇者になる。女勇者として、俺の代わりにこき使ってやってくれ」
突然の俺の決定に、綾女はずるりと肩をコケさせた。
「そっ……その反応はさすがに想定外でした」
よっぽど衝撃だったのだろう。
こめかみを指でおさえ、ふるふると首を横に振っている。
「綾女さんを勇者に? じゃ……じゃあ、勇者様は何をするの?」
こちらはこちらで相当衝撃を受けているらしい。
リリーは目をまん丸くして驚いている。
「そりゃあおまえ、決まってんだろ。俺の職業は引きニートだ。だったらテンペリアでもそれらしく引きこもらせてもらうさ。職業遊び人というか……そんな感じでさ、綾女が外で頑張ってる間にお城でのんびりさせてもらう」
「さ、さ、さ……サイテーっ! サイテーだ! わかる!? わかってる!? 今ものすごくサイテーなこと言ってるんだよ勇者様!?」
「だから言ってんだろうが。俺は勇馬で、勇者は綾女。二度と間違うんじゃねえ。綾女に失礼だぞ?」
「もうすでに決定事項になってるどころか間違えたボクが悪いみたいな流れになってる!?」
「というわけで、だ。改めてよろしくな、リリー。職業遊び人の勇馬だ。お城に着いたら可及的速やかに貴賓室を用意してくれ。お世話係としてメイドも数人。口答えせず出しゃばらない感じの人がいいな。もちろん美人で、ボディもボンキュッボーンな感じの。あ、大丈夫。お手付きにしたりするような甲斐性は俺にはないから」
「こっ……この人って……!?」
リリーの中の幻想をぶち壊すべく、俺はその後もさんざんわがままを言い倒した。




