本当は怖いテレポート
テレポート
ファンタジー小説でお馴染みの魔法である。
一瞬で遠隔地へと移動できる、優れた技能。
しかし、そのメカニズムについて考えると恐ろしいものがある。
単なる瞬間移動。
私もそう思っていた。
だが実際は、そんな生易しい代物ではない可能性があるのだ。
とんでもなく不気味で恐ろしい代償を伴うかも知れない。
昔、科学雑誌でワープに関する理論を読んだことがある。
それを元に私が考えたテレポートの仕組みは、こうだ。
まず、術者がテレポートの魔法を発動する。
すると、目的地へと使用者の情報が伝わる。
そして、使用者と全く同じ肉体と記憶を持つ人間が再現される。
簡単に言えば、目的地に自身のクローンを作るということ。
それも、外見も中身も全く同一の、である。
目的地で作られたクローンからしたら、魔法を使ってそこに着いたと認識するだろう。
何せ、同一の記憶を引き継いでるのだから。
しかし、ここで問題が生じる。
魔法を使った後も、最初の出発地には使用者が何の変化も無く存在する筈なのだ。
あちらにクローンを作っただけなのだから。
しかしテレポートを使えば出発地から使用者は消える。
消えた体と意識はどこにいくのか。
それが問題となる。
魔法を使うと、目的地に全く同じ記憶を持つクローンが生成される。
そして、その瞬間。
出発地に居た使用者は自我も含めて消滅する。
こう考えられないだろうか。
使用者はこの世から消え、彼の記憶を引き継いだクローンが違和感なく生きていくことになる。
こういう理屈も成り立つのだ。
「生成と消滅の魔法」とも言える。
テレポートを使うたびに、使った人が消えて向こうにクローンが造られている。
こう考えると恐ろしい。
新たな"自身"が全く同じ肉体と記憶だから、周りの人も違和感も持たないし、"自身"も気付かない。
ただ、元の自分が消えるだけ。
永遠に。
無論、これは私個人が考えた理屈でしかない。
理論は所々に穴があるし、そもそも我々には調べる方法も無い。
しかし…
私は何かの間違いで異世界に行くことになり、転移魔法を習得しても、命の危険が無い限り絶対に使わない。
この魔法を使うのは死を意味するかも知れないのだ。
自分そっくりな何かが自分の代わりに生き続けるなんて、想像するだけでも耐えられない。
これは私の考えた一説に過ぎません。
言うまでもありませんが、テレポートのメカニズムの説明は作者によって違います。