表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Devil’s patchwork ~其の妖狐が神を討ち滅ぼすまで~  作者: 國色匹
第二章 成長と願いと
96/270

其の四六 当日譚と後日談

<>(^・.・^)<新年あけましておめでとうございます〜!

「………」


 瞳の裏側に日差しが入り込み、痛みすら覚える明るさに眉を顰めた。

 昨夜は早めに寝付いたものの、やはり精神的な疲れが大きかったのだろうか、如何せん気分が沈んだままだ。

 カーテンを開けて全身に日光を浴びるが、それでも眠気が勝って瞼が中々開かない。

 伸びをして、軽く頬を叩き、耳と尻尾をぐいっと伸ばす。

 野生動物やペットにはしないでほしいが、自分でやると意外と目が覚めるのだ、これが。

 人間が授業中に眠らない様に、芯を仕舞ったシャープペンシルで掌をつつくのに近い感覚なのかもしれない。

 ………みんなするよね?


「ぅ、あぁ」


 大きく深呼吸。

 今日は奏の学校の文化祭、奏自身は朝から出かける必要があり、クラス皆と示し合わせて早めに学校に向かうらしい。

 奏自身ではなく昨日つるちゃんに聞いた話だけれど。

 部屋を出て洗面所に移動し顔を洗ったころ、キッチンの方から奏が調理している音が耳に入ってきた。

 俺が着いた頃には奏は既に制服に着替えており、軽い朝ご飯を作った後だった。

 因みに、昨日と同様に見たところ俺の分はない。


「おはよう」

「………はよ」


 リビングの戸を開けた際に一瞬俺の方を見たが、俺が挨拶をするとふい、と視線を外してしまった。

 しかしよく見るとバツの悪そうな顔をしているから、奏自身もやや反省の気持ちがあるのだろうか。

 とはいえ、昨日奏とシラに言われたことを解決するには時間が足りないし、つるちゃんに言われた通り誠意を見せる猶予もない。

 サミハを見返す意味でももう逃げる気はないが、パンを焼きながら時計を見ると、既に奏が家を出るだろう時間になっていた。

 その見込み通り、何時の間にかリビングからいなくなっていた奏が、普段の登校よりも大きなカバンを抱えて通り過ぎるのが、開かれたままの扉から見えた。

 急いで火を止め玄関へ行き、ローファーを履いている奏の背中に声をかけた。


「奏、今日の帰りは遅くなりそうか?」

「………ん」

「そっか。じゃあ、明日………も忙しいよな」


 本当は二人できちんと話し合うための時間を決めるために、空いている日程を聞こうとしたのだが。

 いざ目の前にすると、奏の顔が見えないのが相まってうまく言葉が出てこない。

 今日は忙しいだろうしくたびれて帰ってくるだろうし、明日は片付け作業と打ち上げもあるだろう。

 となると一番現実的なのは明後日、確か文化祭の振り替え休日として学校が休みの日だ。

 その日は、俺も師匠たちや探偵事務所、《宝石団》に頼んでその日はオフにしてもらおう。


「じゃあ、明後日は時間取れるか?」

「まぁ」

「わかった。それじゃあいってらっしゃい。俺は言われた通りの時間に向かうから」


 すくっと立ち上がり玄関の戸を開け外へ出る奏へ話しかける。

 返事はなかったが、話を聞いていないわけではないだろう、それくらいの推測は出来るしその程度の信頼はある、はず。

 中途半端な、というか部分部分ではこういった信頼があるから、俺は奏のことを知ったつもりになっていたのかもしれない。

 それが遠因になって今回ここまで拗れに拗れ………と、今その話はいい、先ずは仲直りだ。

 幸いにも、【ベストパートナーコンテスト】で誠意を見せる機会は得られるから、その後にきちんと話し合えば分かり合えるはず。


「ふう………」


 トーストと目玉焼きと言う簡素此処に極まれりといった風貌の朝食を、コーヒーで喉に流し込む。

 顔を洗った時点で冷めていた目が、苦みとコクで更に覚醒していく。

 と言うか顔を洗うの正直面倒なんだよなぁ、毛が水を吸いまくるから顔にドライヤーかける羽目になるし。

 すると顔は温まっていて、気付くと目が覚めるというより一周回って眠気すら覚えてしまう。

 一般的な人間と違い、顔を洗う気持ちよさや冷たさよりも、身体を動かすということそのものが覚醒の助けになっている気すらする。

 食器を洗い場へ。


(オウトロン、いやクリスタル、聞こえるカ?)

(ビズ、いやボスか。何だ?)


 蛇口から温水を流しながらスポンジに洗剤を染み込ませていると、ビズから念話が聞こえてきた。

 言葉振りからすると、今回は妖術の試験運転ではなく《宝石団》の案件のようだ。

 頭の中で会話はしつつ食器を掌の上で転がして、ボスからの次の言葉を待った。


(イヤ、ちょっと耳に入れときテェ話があッテナ)

(じゃあアジトにお邪魔した方がいいか?)

(そこまでジャネェ。オマエ今日行かなきゃいけネェ所あんだロ?)

(そうか、じゃあ用件は何なんだ?)

(実ハ、あの時のアイツなんだがナ)


 あの時の彼奴。

 《宝石団》としての文脈で判断するならば、該当する相手は一人しかいない。


(トットーがどうかしたのか?)

(あァ、トットーなんだガ、あの後の動向が妙でなァ)

(妙?)

(何でも目撃情報は無い処カ、数日後監視カメラハッキングしたら美術館に潜入してるのが見えたんダ)


 目撃情報がないというのはどういう事だろうか。

 美術館周辺は人気が少なかったうえに深夜も深夜だったとはいえ、全く目撃情報がない、というのはいくら何でも都合が良い気がしてならない。

 そして、数日後に態々再度侵入している点が気にかかる。

 確かトットーはアウトレットでは盗品を返却しに来たらしいが、その際は強盗から数時間後と言う比較的短い間隔で返しに来ていた。

 それもアウトレットの中へ入り込んでから返したのではなく、インフォメーションに置いて行っただけなのだとか。

 それを考えると、()()()()()()()いた、という点がどうにも引っかかる。


(というかハッキング? そこまでしていいもんなのか?)

(アー、マー、イージャねェカ、今それハ)

(まずいのかよ)

(それよリ、オマエもおかしいとは思わねェカ?)

(それは、まぁ)


 違和感は覚えるが、あの手の人間は奇々怪々なものだ、そもそも行動原理が存在するのかどうかすら怪しい。


(だからその後、アウトレットに残ッテた妖力とルビーの靴裏に付いた妖力を分析して比べたんだヨ)

(もしかしてだけどハッキングと同じ奴(エメラルド)がソレも担当してないか?)

(勿論アウトレットにはオマエの妖力、屋上の時はオマエのに加えて靴そのもののサポート用に入ってた妖力が混ざッテたかラ、一概には言えネェガ………全く同じだッタんダ)

(全く同じ、だったら問題ないんじゃないのか?)


 同じ人物、というか同じ妖怪から採取したんなら同じで正解なんじゃないのか?


(イヤ、それはおかしいだロ。大体、オマエがあの場で見たのはアイツだけだッタカ?)

(………違うな)


 蛇口の水を止め、軽く手を洗ってから皿拭き用の布巾に手を伸ばしたところで思い至った。

 そうだ、そもそもあの時俺が最初に見たのはトットーじゃない。


(いたんだロ? 一匹明らかにフツーの動物ジャネェ奴がヨ)

(いたな、燃える身体の小動物の妖怪が。最初に釈迦の涙を掴んだのも彼奴だった)

(そうダ。フツーあぁいう展示品は呪われたり動き出したりしネェ用ニ、飾る前に綺麗にしとくもんだからナ。最初に掴んだヤツの妖力は付きやすいシ、ソレを握ッテたアイツにも付いておかしかネェ)

(それなのに、全く同じだった、と)


 そこも変だ。

 ルビーさんが蹴った脇と同じ方の手に釈迦の涙を握っていたわけだし、あの動物の付いているのが自然だ。

 しかし妖怪の中には変身の能力を持っている相手もいる、アイツと動物が同一存在の可能性だってあるだろう、とも思ったものの、いくら何でも方向性が違い過ぎる。

 方や俺の攻撃を弾く能力、方や燃える身体。


(………変だな)

(あァ。アメジストにも聞いたガ、動物は燃えてたんだロ? ルビーに聞いても手応エ………いやあの場合は脚応えカ? とにかく感触の割に飛び方が遅かったみテェなんダ)

(あぁ、人型と動物型で妖術の方向性が違い過ぎるよな)

(………だかラ、妙なんダ)


 合点がいった。

 粗方食器を拭き終わり、壁に背中を預けて腕を組んで思考を巡らせる。

 今ビズが指摘した通り妙な所は多々あるが、それに加えて直接対峙していた俺には分かる。

 アウトレットでは顔を隠したりはせず、白昼堂々と潜入をしていた。

 それなのに屋根上で相対したときには獣をイメージした面で顔を隠したうえ、一言も口にしようとしていなかった。

 潜入及び脱出と言う点では後者の動きが圧倒的に正しいのだが、俺を罵倒してきた彼奴と同一人物だとは思えない。

 それにニュースでは犯行予告が届いた、と言う話をしていたのだが、仮にあの時も予告をしていたのなら警備が少なすぎた。

 では犯行予告はしていなかったのか、と言われると………可能性は零ではないが、それもしこりが残る。


(兎に角連絡はありがとう。早めに知れて助かった)

(オウ、ジャあ今日は楽しめよナ?

 文化祭ダッたカ?)

(………あぁ。じゃあな)


 軽い挨拶で念話を終え、瞳を閉じる。

 その後予定はなかったのだが、結局学校へ出るギリギリの時間までそうしていた。

<>(^・.・^)<いつも通り毎週木曜投稿を目標に今年も頑張ります!


<>(^・.・^)<ので、応援よろしくお願い致しますですのぜ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ