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Devil’s patchwork ~其の妖狐が神を討ち滅ぼすまで~  作者: 國色匹
第二章 成長と願いと
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其の三四 《宝石団》

<>(^・.・^)<この面々、書いてて楽しい

「───ト、いうわけダ」

「何にも説明してないだろうがお前、顔面だけじゃなくて脈絡まで真っ白になったのか?」

「オマエそんなに口悪かッタカ?」

「疲れてるし医者に安静にしろって言われてんだよ」

「………おイ、そんな奴無理矢理連れてきたのは誰ダ?」

「私よ」

「よくやッタ」

「なんだこの茶番!?」


 手が解放されただけで自分の身体は未だに柱に縛り付けられたまま。

 そんな状態でコントに付き合わされる俺の気持ちを考えてみてくれ。

 いつもの派手なビビッドカラーの甚平に身を包んだビズと、対照的にシックな色合いの服装の田光さんが互いににやり、とした笑みを浮かべる。

 なんだ此奴ら、仲良しか。

 というか、今更思い出した。

 《宝石団》という名前、聞いたことがある。

 奏が連れ去られる少し前、探偵事務所で怪盗に対処した際に、一之助さんがその名前を口にしていた。


「マ、それはそれとしてダ」

「どれがどれなんだよ」

「オマエにはそれなりに期待しててナ、ぶっチャケ打算で動いてたところもある訳ヨ」

「え………」

「いやオマエいいヤツだからそれが無くても絡んでたとは思うガ」

「現時点でお前を信じていいのか葛藤している俺がいる」

「是非もネェ」

「ボス、基本胡散臭いから信用されないのよね」


 話が一向に進まない。

 疲れとか早く奏のお祝いを受けたいとか、諸々合わさって最早苛ついてきた。

 早急に終わらせて早く帰ろう。


「分かった、お前らの話を聞くから、先ずはその《宝石団(ジュエリ)》とやらについて説明してくれ」

「オマエのそういう所嫌いじゃネーゼ? ………ジャあま、軽ーく話してくカ」


 奥の方で立ちっぱなしだったビズが田光さんに近寄って耳打ちし、本人は一旦カーテンを潜って再び奥の方へと入っていった。

 テーブル前の椅子から立ち上がった田光さんは俺の方へと歩みより、背後に回って柱との拘束を解いた。

 いよいよ五体満足状態になって立ち上がれるようになった俺は、何はともあれ感謝を述べる。


「ありがとうございます、え~っと、田光さん、でいいんですか?」

「あー………ボスー、私の名前教えてもいいのかしらー?」


 まるで家で母親に忘れ物を取ってきてもらう娘のように、大きく声を張り上げてビズに問う。

 お湯を沸かす音が響く方から、同じく大きな声で承諾が返ってきて女性は此方を向いた。


「私はアメジスト。勿論本名じゃないわ、でも此処ではアメジストと呼ぶこと」

紫水晶(アメジスト)?」

「そう。ボスが酔狂でつけてるコードネームよ。あのバカ二人も似たようなコードネームを持ってるわ」

「コードネームですか」


 これは本名が割れない様に、とかそういった理由があるのだろうか。

 由縁はどうあれ、コードネームを付けているという事実自体がやや痛いな。

 何か家電製品の電源が切れるピー、という音がしたかと思うと、お盆に複数湯呑を乗せたビズが戻ってきた。

 気遣いが出来る男な上、部下に雑用を押し付けない上司。


「んジャま、此処座れヨ」

「おう、分かった」

「ありがとうボス」


 全員で椅子に座り、テーブル上の湯呑を寄せているその間にもビズはお茶菓子を籠に入れる。

 昏睡させられてからあまり時間は経っていないようだったが、喉が渇きつつあったので温かな緑茶が沁みる。

 口に一口含んで飲み干し、ほっと息を吐いた俺にビズが語り掛ける。

 ………あれ?

 そういえば今此奴どうやってお茶飲んだんだ?


「最初に断ットくが、この話は信用できる奴以外にはオフレコで頼ム。無闇に話すとコッチも聞いた側も面倒なことになるかも知れネェからナ」

「じゃあ奏には話していいのか?」

「貴方が信用できると判断するならいいんじゃない? 最も、今も奏お嬢さ、奏ちゃんが狙われる立場にあるのは変わらないけど」

「ぐっ」


 アメジストさんの言葉に喉をうならせる。

 そういわれればその通り、見るからに怪しい組織に俺が関与していると知れたら、奏に危害が及ぶ可能性も零ではない。

 それこそ《GNOME》がどこから狙ってきていてもおかしくないのだ。

 であれば、取り敢えず話を聞いた後で判断すべきだろう。


「分かった、なるべく秘密にするから話してくれ。《宝石団》って何なんだ? 聞いたことのある情報だと、何か盗みに関係してるのか?」

「理解が早くて助かるゼ。《宝石団》ッテのはマァ、有り体に言ヤァ()()だナ」

「義賊、ってことは美術品を本来の持ち主の下に返したり、あくどい奴らから奪った金品をお金に困った人たちにばらまいたりする、あの?」

「一部訂正すべき箇所はあるけれど、概ねその通りね」


 義賊か。

 逸話ではロビンフッドや石川五右衛門などが名高く、その行動原理から庶民の間での人気も高い。

 しかし、権力側が不正を犯していようとも犯罪は犯罪、盗みは決して手放しに褒められる行いではないと考える。


「此処で言っときテェのハ、オレらが法を犯しチャいネーってこッタナ。仕事の大部分は〈陰陽師〉から斡旋される」

「どうしてそこで〈陰陽師〉が出てくるんだ?」


 何やら理由があるようなので詳しく話を聞いた。

 そもそも〈陰陽師〉とは、妖怪や術使いが犯罪を犯すのを未然に防ぎ、起こってしまった場合も取り締まる集団のこと。

 警察権の一部であり、彼らの御陰で秩序は守られていると聞く。

 しかしながら、隠蔽に長けた妖怪や、情報操作が得意な術使いなどがいる場合、〈陰陽師〉でも事前に情報を掴み切れない。

 その時に潜入調査を行ったり、場合によっては強硬的に忍び込んで証拠品を押収するのがこの《宝石団》なのだとか。

 ………似たような話をファースト探偵事務所の時にも聞いたんだが。


「なぁ、警察に協力してるんならどうしてこんな秘密組織めいた拠点なんだ?」

「オマエ、あの爺さんの事務所にも入ってんだロ?」

「あぁ」


 まだ事務所に依頼が来ないこともあって貢献したことは殆どないし、何なら奏誘拐事件の際に協力してもらった恩義しかないけれど。


「なら話が早エ、要するにアッチが()、コッチが()ダ。本来公的権力がやっチャいけネェ事モ、やらなキャ誰かを守れネェ。そういうこともあンダ」

「───それは、そうだろうけど」


 絞り出されたビズの声は力強くて、傍らに座るアメジストさんも茶化したりはせず。

 実感が込められているようで、テーブルの上で組んだ手がギリ、と震えた。


「それにナ、〈陰陽師〉との関係を伏せとくコトにも幾つか意義があってナ。例えば潜入した先で重要な秘密を掴んだとするダロ」

「ふむ、それでどうなるんだ?」

「向こうはコッチを同業者(犯罪者)だと考えッカラ、〈陰陽師〉に情報が提供されてお縄、なんて発想にはならネーのさ」

「そのお陰で、正体がバレたり侵入先の博物館でかち合ったりしても、案外簡単に逃げ切れるわね」


 湯呑でお茶を啜りながら、アメジストさんはあくまでも自分は正体がバレたことはないが、と補足する。

 確かに、トイレでの一件を参考にするにこの人は気配を絶つ力か、遠隔で何かしらが出来る能力を持っているだろう。

 となれば比較的安全に任務を遂行できる、というわけだ。


「でも、一体どうして態々俺を招こうなんて考えたんだよ。今のままじゃ駄目だったのか?」

「それに関しチャ、ウチの得手不得手が問題でナ。アメジストの力は知ッテるカ?」

「多分気配を絶つか、遠くから干渉できる力だろ?」

「やっぱり考える力はかなりのものね。そう、私は《気配遮断》の術使い、潜入はどんな難易度でも熟す自信があるわ」


 胸を張って話すアメジストさん。

 この人はクールなように見えて、仕草や趣味がかわいらしいタイプなのかもしれない。


「オウ、アメジストにその辺の心配は全くしてネェ。けどな、術を除いちゃただの人間、妖怪相手にタイマン張ッテ無傷で帰還できるわけジャねーのよ」

「そうか………確かに人間と妖怪じゃ身体能力が違うよな。でも、だったら他の二人はどうなんだ? 男の方が戦闘では有利なんじゃないのか?」

「あのバカ二人のうち、瓶底メガネはエメラルド。手先が器用で色々作るのは得意だけど、身体能力はからっきしよ」

「ちょっと、拙者の紹介適当じゃないでござらん? 《万物創造》の能力、知らない訳じゃござりませぬよなぁ?」

「うわ出たわね」

「拙者妖怪か何か!?」

「「いや、妖怪は(オレ)だが」」


 突如俺の肩越しに顔を出した男性。

 話の流れ上、エンジニアとして超一流の才覚を持っているらしい、《万物創造》の術という名前からもその力量が察せられよう。

 しれっと俺の隣の椅子を引いて座り、お茶菓子の焼き菓子を手に取って口に入れ始めた。

 煤や油で汚れたツナギとは裏腹に、所作はそれなりに丁寧で零したりはしていない。


「あ、話の流れで分かるかと思うでござるが、拙者がエメラルド、《万物創造》の術使いでござる」

「どうも、さっきはありがとうございました。あと何で柱に括りつけられたままにしてったんですか」

「あれはあの鬼が怖かったからでござるな、わはは誠にすまぬ!」


 差し出された握手を握り返して、ニヤリと小悪党然とした笑みを浮かべるエメラルド。

 食べ方は綺麗だったので気が付かなかったが、よく見れば椅子の上で片足をもう片方の膝の上に載せ、片足で胡座をかくような姿勢である。

 育ちがいいやら悪いやら分からない。


「そういえば、《万物創造》? 《気配遮断》はまだ分からないでもないが、万物を創るとなると術使いの領域を越えていないか?」

「そんなこと仰られても困るんでござるが、まぁ当然至極な疑問でござるなぁ。でも言ってしまえば無から有を作るなんて神がかった芸当は出来ず、設計図が頭の中に浮かび上がるとでも言えばいいのでござろうか………」

「無から有を創る、って、エメラルド、こういうのか?」


 言いつつ、掌の上に小さな氷の結晶を作り出す。

 瓶底メガネ風デバイスの位置を調節し、エメラルドが覗き込んだ。


「あー、まぁそれもそうなんでござるが、お主のソレは妖術で出来ているのでござる。妖怪と術使いの違いは体内から妖力を放出可能かど」

「おい貴様退け」


 先程エメラルドが顔を出した箇所と全く同じ場所から、先程よりも低い音が響く。

 最早残る人は一人、迷彩柄のサバイバル服の男性である。


「あ、ルビー殿」

「戻ってきたのね」

「こ、こんにちは」

「あぁ少年、縄は解かれたか。先程は失念していてな、すまなかった」

「いえ、大丈夫です。ルビーさんよろしくお願いします」

「あれ? 拙者の時は呼び捨てでござらなかった?」

「トロン君、それで構わないわよ」

「酷過ぎるでござるなぁ………」

<>(^・.・^)<来週は水曜日と木曜日の二回更新!


<>(^・.・^)<最近見てくださる方、評価につなげてくださる方増えててうれしみ〜!

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