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Devil’s patchwork ~其の妖狐が神を討ち滅ぼすまで~  作者: 國色匹
第一章 出会いと優しさと
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其の五 俺、スカウトされる。

 そいつ......ん?ちょっと待てよ......この声、身体の起伏............まさか、この人女!?

 男じゃ無くて!?

 『天狗』イコール『男』、みたいなイメージがあったから、勘違いしてた。

 つっても、この人、なんか大きな葉っぱみたいなものに目の穴を空けたような、仮面?のような物を付けてるから、よくわかんないけど。

 まあ、『この人』でいいか。

 この人は何者なんだろうか?なぜ俺のことを見ていたのか?なぜ顔を隠しているのか?エトセトラえとせとら............

 隣で呆けているビズは一旦置いといて。

 疑問は沢山あるが、まずは名前を聞いてみようか。


「あの、あなたは?」

「う~ん? アタシ? アタシは、<天狗>の『シンミ』っていうよ~。...でも、人に名前を聞く時は、自分から名乗るもんじゃないかな~?」

「すみません。俺は<白九尾>の『トロン』て言います。いくつか質問しても良いでしょうkーーー」

「あー、やめてやめて、敬語なんて~。アタシそーいうの柄じゃないからさ~、もっと砕けた感じで良いよ~」

「............そうですか」


 こちらとしては、初対面の人(今後は妖怪の事も〈人〉と表現する事がありますので、どうかお気になさらず)にいきなり『もっと砕けた感じで』と言われても困るんだけども。


「じゃあ、シンミ、いくつか質問しても良いか?」

「もちろんさ~。君とはこれから長い付き合いになりそうだからね~」

「じゃあまず一つ目。君は何者なんだ?」

「アタシはね~............あれ?これって今言っても良かったんだっけな~............」


 なんか小声で喋ってるな。

 まあ、人には一つや二つくらい、他人に踏み込まれたく無い事があるからな。

 答えたく無いなら別に良いさ。


「答えられないなら、別に良いよ。じゃあ、質問を変える。君はなぜ俺を見ていたの?」

「それはだね~。あなたの才能と言うか、素質? を調査してこいって上の指示だったからね~。うちの組織はいつも大変なのさぁ~」


 たぶん、今の『組織』発言がさっき悩んでいた事だと思うけど、それはいったん置いといて。


「俺の才能?と言うか、どうして俺を?」


 と聞いた。実際、本当に疑問だった。

 なぜ俺は狙われているのか。

 どこに狙われているのか。

 どのように狙ってくるのか。

 それを知らなければ、いざという時に自分の身を守れない。

 この問いは、俺にとって非常に重要な質問だった。


「ああ~、まあ気になるよね~。............実はさ~、最近うちの組織が人手不足なんだ~。で、それを解消しようと、新しく『転生』してきた子に組織に入ってもらおうってことで~、こうしてこの超優秀なアタシなんかが監視役として派遣されて来たって訳~。にしてもさ~、上からの命令とはいえ休日出勤はキツいよねホント~」


 俺の始業式の日が金曜だったから、今日は土曜になるのか。

 ほーん。この人も色々と大変なんだな。

 .........って、そうじゃなくて。

 何?今、『転生』って言った?この世界の人って、『転生』の事知ってんの?

 そう思い、俺はたずねてみた。



「あの......今、『転生』って言いましたか?」


 すると、シンミさんは、


「え?......ああっ!」


 と、おおよそ女性らしからぬ素っ頓狂な声をあげて、頭を抱えだした。

 俺も、うすうす感じていたのだ。きっと、この質問には答えられないのではないかと。

 俺としては、完全にダメ元の質問だったので答えられないなら別にいいのだが、ある意味この反応が聞いてはいけない事を聞いた事を雄弁に語っていた。


「あの............聞き間違いでしたか?もしそうなら、さっきの奇行の理由を聞かせていただけませんか?」


 と、わざと敬語を使って、相手が気付くかどうかを見てみようとしたのだが。

 シンミさんは、がばっと顔を上げて、


「ええい! もう隠してもむだなようだな! 良いだろう。教えてやるさ!」


 カッ! とキリッとした顔を作った。

 と、はっ! と言いながら木の枝から飛び降りて来る。

 別に飛び降りなくとも、背中の翼で飛べば良いのではなかろうか。

 ............吹っ切れたのかな。後で上の人に怒られないと良いな。

 と、そこで『この人は自分の服装をまっっったく考えていなかったらしいなぁ』と思った。

 はいはい。俺は見ませんでした。

 赤のレースなんて見ませんでした。




 俺がなんとか今の光景を海馬に刻み込もうとしている内に、着地に成功したようで、


「アタシの事がそんなに知りたいか、そうかそうか。ならば教えてやろう!」

「いや、俺が知りたいのは『あなた』ってよりも『あなたのバックにある組織』なんだけdーーー」

「そんなに知りたいのなら、教えてやろう!」


 今の俺に発言権は認められないようです。

 シンミさんはやたらと格好付けたフォームで(練習している事がよく分かる程の格好良さだった)葉っぱの仮面を取って捨てた。

 顔はかわいい系って言うよりも美しい系かな。

 シンミさんはこう切り出した。


「アタシの所属する『組織』、その名は『ファースト』。所属するメンバーは妖怪と人間は同じくらいかな。で、何をしている組織なのかと言うとだな」

「何をしている組織なのかと言うと...?」


 ごくり と生唾を飲み込む。


「言うとだな......」

「言うとだな?」


 再び ごくり と生唾を飲み込む。


「言うとだな............」

「言うと?」

「言うとだnーーー」

「もういいよ! どんだけ引っ張る気だお前は!」


 すると、


「ははは~、ようやく砕けてきたね~。そーそ~。そういう感じで良いよ~」


 この人、まさか俺をリラックスさせる為だけに今の行動を?


 ............悪い人ではないんだろうけど......いかんせんやりづらい。


 俺はあまり人と関わる事があまり得意では無いのだ。

 嫌い、と言う訳では無いが、俺は周りに合わせるのがとてつもなく苦手だ。

 他の要因もあるが、おそらくはこの要因が大きくて前世では友達と言うものが出来なかった(べ、別に欲しかった訳じゃないからな?そこんとこ、勘違いすんなよ?)と思っているのだ。

 今でもそれは変わらないから、いまだに人とすれ違う時に顔をそらしてしまう。


 その点、ビズはそういうの考えなくても良いような気がするから平気で、奏は女子高生ではあるものの、外見が『女子高生』と言うより『女子中学生』って感じだから平気。

 流石の俺も女子中学生に対しては気を遣わなくても大丈夫。



 けどこの人は、女らしい体つきをしており、口調もどことなく馴れ馴れしい。

 俺がかなり苦手としているタイプの人だが、この人はなんとなく大丈夫だな。

 なぜかは分からんが、悪い人では無いと俺の勘が言っている。

 とりあえず、返事をせねば。


「で、だな。結局何をしている組織なんだ?」

「んーとね~。ウチは~、逃げ出した犬を捜したり、浮気現場を押さえたりする組織だね~」


 ......それってつまり......


「つまり、『探偵事務所』って事?」

「まぁ、そうだけど。『組織』って呼んだほーがカッコいいだろ~?」


 見た目の割に男っぽいんだな、シンミさんって。

 で、なぜ俺が『転生』してきた事を知っていたのか、だ。


「探偵事務所で働いてんのは分かったけど............結局なぜに『転生』の事を知ってたんだ?」

「んーとね~、ウチらの事務所の所長で『西園寺一之助』ってのが居るんだけどね~。所長は<気配察知>の術使いなんだよね~」

「ちょい待ち。『術使い』ってのはなんぞや」

「あれ~、知らないの~?じゃあ、このアタシが教えてやるよ~。いいか~い? まず術使いって言うのはね~......」



 シンミさんの説明によると、人間にも『妖術的なもの』は使えるらしいのだ。

 けど、俺の妖術みたいに攻撃的なものは使えないらしい。

 自分の能力を上げたり、相手の能力を下げたり、珍しいものだと<変身>なんてのもあるらしい。

 しかし、個人個人に適性があり、また、一人が使えるのは一つだけ、などと制限があるものの、妖術に対抗する手段の一つとして考えられている。

 この『妖術的なもの』の事を、一般的には『術』と言い、術を使える人の事を『術使い』と言うらしい。

 強力な術を使える術使いは、軍隊や警察などのさまざまな場所に引っ張りだことの事。

 奏も術使いだったりするのだろうか。まぁ、本人に聞かん事には分からんが。

 まぁ、そんな訳で、一之助さんの術は<気配察知>らしい。そしてその範囲は、およそこの街をすっぽりと覆うくらいはあるそうだ。

 一之助さんは事務所の人員不足に困ったあげく、新しく現れた気配を察知して、スカウトをする事にしたそうな。

 ちなみに、『転生』の事は、一般的には知られておらず、一部の有権者の間でささやかれておったそうな。

 一之助さんは最初は半信半疑だったものの、術を使ってみて、確信したそうな。



 はい、そんなこんなで、俺が目を付けられ、スカウトをされているといったわけだ。

 探偵かぁ、ちょっと面白そうな響きがするな。

 ま、ビズの仕事を聞いてなかったから、ゆっくり考えてから決めると答えた。

 シンミさんと結んでおいて、いつでも連絡出来るようにしておいて、と。

 シンミさんに別れを告げてから、ビズと実験を開始した。

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