表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Devil’s patchwork ~其の妖狐が神を討ち滅ぼすまで~  作者: 國色匹
第二章 成長と願いと
53/277

其の五 宗教勧誘って今も実在するの?

 人間(術使い):綿貫 奏


「――――――では、今日はここまで。明日は次のセクションの単語調べをしておくこと」

「先生ー、明日はコミュ英休みでーす」

「………………次回は単語調べをしてくるように。では、終わりにする」

「きりーつ」


 ガタ、と音を立てて教室の皆が立ち上がる。

 一拍遅れて私も立ち上がり、クラス委員長の指示に合わせて礼をする。


「ありがとうございましたー」


 この先生は律儀な人で、態々生徒に合わせてお辞儀をしてくれる。

 ちょっぴり顔が怖くてメガネをしているから、授業を担当していないクラスの生徒からは怖がられているらしい。

 本人もそれを気にしているようで、私のクラスメイト達の対応に、いつも嬉しそうな顔をする。

 ………………私も、自分のことを分かってくれて、居やすくしてくれる人がいることのありがたさは、よく分かる。

 ともあれ、このコミュ英の授業が終わって、今日の学校はおしまい。

 私は特に部活に通っている訳でもないから、帰りの支度を始める。

 机の中を覗き込んで、忘れ物が無いか確認した後、重い鞄を何とか背負って、教室を出ようとする。


「あ、あの、奏、さん」

「ん、なに?」


 隣の席の男子が話しかけてきた。

 私は彼が話しかけている所を見たことがなかったから、ちょっぴり驚いた。

 いつも落ち着きなさそうに周りを見ていても、話しかけてはいない人のはず。

 そんな人から話しかけられるだけでもちょっとした異常だし、よく考えたら、この人が名前で呼ぶのは、男女含めて私だけかも知れない。

 そんなことを考えているうちに、彼は顔を赤くしていた。


「あの………………奏さん、さっきの授業、いや、今日、なんだかぼーっとしてた? 調子悪い? 大丈夫?」

「あ――――――ううん、だいじょうぶ。ちょっと考えごとしてただけ。私の妖怪のこと」


 私の妖怪、という言い方ができるようになったことに、ちょっとだけ顔がほころぶ。

 この国での決まりとして、義務教育課程の終了、つまり中学校を卒業するときに、かならず妖怪と契約する、というものがある。

 でも、今はフリーの妖怪自体を取り締まっているので、そもそもの妖怪の絶対数が少なく、契約に失敗することもあるみたい。

 最近できたルールで、まだ試行期間ということもあり、べつに、決まり、ってほどきびしく管理されてはいないのだけど。

 もちろん、中学卒業に契約していればべつだけど、大抵の場合は契約してないから、卒業式の日の午後、片付けられた体育館で大契約会、をするらしい。

 私は参加してないから、あまりよく知らないけど。

 ともあれ、そのお陰でトロにも会えた。

 ………………実は、登校最初の日に家に帰りたくなかったのは、そのあたりが理由だったりもするのだけど、それはまたべつの話。


「そっか、なら、良いんだけど。あ、奏さんの妖怪って、確か〈白九尾〉だったよね? もし良ければ、今度――――――」


 なにか話し続ける彼をよそに、私は、今日考えていたことについての考えごとを始める。

 確かに、私は今日、ずっと考え事をしていた。

 一週間くらい休んでいたあいだの学校のことについて、じゃない。

 昨日早く家に帰ったら起こったことについてだ。

 どうやら私の知らないうちに、学校では『二者面談』が行われていたらしく、そのため昨日は早く帰った。

 お昼くらいまでの日課だったから、家に帰ってお昼ごはんを作ってトロと一緒に食べようと思ってたんだけど。

 急な来客があって、お昼ごはんは遅くなっちゃった。

 と、自分が今日一日考えていたことを整理して、ふと疑問が湧いた。

 なので、そのことについて聞いてみた。


「………………なんで私がぼーっとしてるって思ったの? 私、そんなにわかりやすくぼーっとしてたかな?」

「ヘッ!? あ、いや、ごめん、傷付けるつもりじゃなくて、その………………っ」


 彼は、もともと赤かった顔をさらに赤くして、あたふたと忙しなく手を動かす。

 視線も、よく見たらさっきから私のほうを見てない。

 なんとなく、その視線のほうに顔を、すい、と動かして目を合わせようとしても、避けられてしまった。

 なんなのだろう。


「あー、えーっと、そう! 僕たち、一番前の席でしょ? だから先生に注意されやすいのに、奏さんがノート取ってなかったから!」

「そういうこと。あ、また今度今日のノート、見せてくれない?」

「〜〜〜ッ! もちろん! 僕で良ければ何冊でも貸すよっ!」


 そんなに何冊もあるの? と思ったけど、さすがに直接それを言うのは良くないと思って、やめた。

 どことなく、彼は嬉しそうだ。

 ………………授業中にぼーっとしてた人にノートを見せてほしいって言われて、嬉しいのかな。

 自分には分からなそうなので、深く考えるのはやめた。


「でも、奏さんは、やっぱり凄いや。僕、一番前の席だと緊張しちゃって………………」

「そう」


 一番前以外でも緊張してるよね、とも、流石に直接は言えなかった。

 テレテレ、という感じで彼は言う。

 でも、私は、さっきからの彼の言葉に少し感じるところがあり、ついそっけない感じになってしまった。


 《私だって、大きくなるもん………………!》


 そう、私たちは、『一番前』の席なのだ。

 私の名字は『綿貫(わたぬき)』。

 どう考えても後ろの方なのに、一番前の席になったのには理由がある。

 あれは、入学初日のころの話。

 出席番号じゅんに座っていたときに、一人の女子が、席替えをしないかと言った。

 とうぜん、学級委員は良い顔をしなかった。

 入学してまだまもないのに、席替えは早すぎるのではないか、と。

 そしたら、その女子は学級委員になにやら耳打ちをして、その結果、その一週間あとに席替えがされた。

 後で知った話だが、あのときその女子は『授業中の綿貫さん、黒板見にくそうにしてるから』と言ったらしい。

 ………………確かに、黒板は見えづらい。

 ただでさえ私の背が低いのに、高校のみんなは背が高すぎる。

 確かに難儀していたし、毎回毎回他の人にノートを見せてもらうのは、気が引けていたのは、事実。

 だけど、私は私なりに、私らしく頑張っていた。

 それなのに気を使わせてしまって、なんだか申し訳ないやら情けないやら、だった。


「どうしたの、奏さん?」

「あ、うぅん。なんでもない。じゃあ、ばいばい」

「あっ、うん。また!」


 そう言って、教室を出る。

 すると、ちょうど同じタイミングで教室から出てきたクラスの女子とかち合った。

 ………………これはまずい。

 いや、彼女たちはいいひとなのだけど、そこじゃなくて。

 私を視界に入れた彼女たちは、ぱあっと明るい笑顔を見せて、にんまりとした口になる。


「かーなーでーちゃーん!」

「かぁ〜わいいねぇー!」

「うりうりうりうりー」

「ぐむぅ、ぎゅむぅっ」


 一人が私のほっぺたを両手で包み込み、もう一人は頭を撫で、最後の一人は私の首をこする。

 私はなすすべなく捕まり、彼女たちの楽しみになっていた。

 どこからか、『あば^〜』という声が聞こえた気がしたけど、たぶん気のせいだろう。というか、かおす先生は早くネーム書いて。

 ………………かわいがってもらえることが嫌なんじゃない。

 私だって、女の子だから、かわいい、と言われれば、それはうれしい。

 だけど、自分が小さいがゆえにかわいがられるのは、なんだか腑に落ちないのだ。

 自分を自分として見てもらえてない気がして、なんだか居心地がわるい。


「………………はっ!? ごめん、奏ちゃん、私達、また………………」

「ごめんねー、わざとじゃないんだけどねー」

「奏ちゃん可愛いから、つい、ね?」

「ううん。だいじょうぶ。分かってるから」

「ほんと? やっぱり奏ちゃんは優しいねぇ〜」

「じゃあ、またね」

「「「あ、うん!ばいばーい」」」


 三人と手を振って別れる。

 そして私は階段を降りて下駄箱に行って、外靴に履き替える。

 そう言えば、この学校は靴に関してはかなり自由なのに、みんなローファーを履いている。

 なんでなんだろう、と思う。

 そして、三回目になるけれど、今日考えていた、もう一つの『なんでなんだろう』を反すうし始めた。


 [***]


「こんにちはー! トロンさんいますかー? ちょっと耳寄りな話があるんですけどー!」

「………………」


 正直、その時は『なんだこいつ』って思った。

 昨日の午後二時頃、私が家に帰ってきてしばらくしたあと。

 唐突にインターホンが鳴った。

 最初は、一日に一回は訪ねてくるお父さんかと思った。

 私が一人暮らしをしたい、と言ったから、お父さんはわざわざ敷地内にもういっこ家を用意してくれた。

 だと言うのに、わざわざ一日に一回は来るのだから、困ったものだ。

 一人暮らしの練習のために建ててくれたのは嬉しいのだけど、だったら一人で暮らす練習をさせて欲しい。


「あー、いや、ワタシ、怪しいものじゃないですよー、ほんと! とにかく一回、玄関開けてくれませんかー!?」

「………………」


 つい先日チャイム横に取り付けられたカメラの映像を見ながら、私はあごに手を当てて悩む。

 向こうから見られている心配はないからこうやって悩んでいるけど、どうしよう。

 見た感じは、私と同じくらいの年齢か、もう少し上くらい………………高くても大学生くらいの女性だと思う。

 髪の毛は肩にかからないくらいの長さに切りそろえられていて、それなりの清潔感がある。

 そして、声や話す調子はともかくとして、この女の人の所作はかなり高貴なものだった。

 私もそれなりの家の娘だから、社交界とかのそういう場に出向いたことは、当然ある。

 そんな私が見て、かなりよいと言えるくらいには、信用が置けそうだった。

 仕方がないし、いざとなったらトロに連絡できるようになっているから、もしも何かあったらトロに駆け付けてもらおう。


「はい、綿貫です」

「あー! ようやく開けてくれましたー! もぅ、ずーっとここで待ってたんですよ? このままカノッサの屈辱みたいになったらどーしよーかと思いましたよ。ま、私あんまり世界史詳しくないんですけど!」

「すいません………………その前に、どちら様でしょうか? 私、あなたに会ったことないと思うんですけど」

「あ、私、黒原小豆(くろばら あずき)と言います。これでも〈妖技場〉では企画顧問をさせてもらってて。これ名刺です」

「どうも………………」


 開けた玄関の先で言葉のやり取りをして、差し出された名刺に目を通す。

 すると、確かにそこには『〈妖技場〉企画経営顧問 黒原小豆』と書いてあった。

 その下には電話番号が書いてあったので、まぁ最悪追い返して電話をかければ、この女の人が正規の人かどうかは分かるだろう。

 ………………そう思って入れたのが運のつき、だった。

<>(^・.・^)<(実際に受けたことは)ないです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ