其の二二 俺、あやまる。
<>(^・.・^)<十分の六ですね、確か
俺は今、『ファースト探偵事務所』の中で世話されていた。
事務所の前で倒れてしまった俺は、そのまま事務所の中に運び込まれたのだ。
所長である一之助さんが「今すぐ安全な場所に運び込もう」とおっしゃってくれたらしい。
そしてトイが「.........消化に、いい、もの、が、いいか、な」と、おかゆを作った。
シンミは、「一応濡れタオルでも額に当てとこう」と、頻繁にタオルを取り換えてくれた。
それがおよそ二時間続いたとのこと。
それについては本当に有難いし、何も文句はないのだが.........
一個だけ言うことがあるとすると.........「目が覚めていない人に対してお粥を作っても意味ないんじゃ?」ということだ。
いや、心遣いは有難いんだけども。
ということで、今俺はお粥を頂いていた。
食べるのは好きだし、美味しいものも好きだ。
たとえそれがいくら素朴なものであっても。
そう.........美味しければ。
ぶっちゃけて言えば、これ、くそまずい。
口に入れれば入れるほど、別の何かが出ていくような錯覚に襲われる。
食べることそのもの、その概念が地獄と成り果てるような、そんな味。
「.........美味、し、い?」
と聞いてくる誰かがいるから、絶対に口には出せないけれど。
「ああ、美味しい、な。ああ。でも、もう大丈夫だ」
「.........本当?」
「ああ。本当だ」
と言ったものの、やっぱり多少罪悪感は残った。
不味い。
誰か来てくれ!
「あれ~、トロ、律義に食べてんね~。そんなくそまずいもの~」
来てくれとは言ったが爆弾を投下してくれとは言ってないぞ!
「..................え、っと、くそまずい、の?」
「うっ」
やめろ!
こっちを見ながら不安そうな顔をするな!
「え~、うん」
そしてお前も言うな!
「..................やっぱり、かぁ」
不味いぞ。
いつもより沈黙が長くなっている!
「..................ごめん、ね。弟子君。気に、して、ない、か、ら」
「そうなのか?」
「ま~、だろうね~。住み込みで働く人は~、食事は当番制にしてるんだよね~」
「そうなのか」
まあ、俺は奏の家から通うことになりそうだがな。
「でも~、あまりに料理があんまりなもので~、トイだけは当番から外れてるんだよね~」
「えぇ」
「だから~、とっくに思い知らされてるはずだから~。言っちゃって大丈夫だよ~」
そうなのか。
シンミの言葉に、トイは複雑そうな顔をする。
「..................秘書くん、と、作っ、た、のに」
「そうなのか?」
「..................う、ん」
「へぇ.........」
チラリと、キッチンの方を見やる。
すると確かに、黄色い人影のようなものが見えた。
きっとあの人が秘書くん、なのだろう。
「いやいや~、トイ、アナタ、彼の言うこと聞いてなかったじゃんか~」
「そうなのか?」
「..................そん、なこ、と、ない」
「どっちだ」
「いや~、だって『塩をひとつまみ入れて』って言われた時、トイ、砂糖をドバドバ入れてたじゃんか~」
そりゃあ、あんな味になるはずだ。
何故そんな無謀な事をしたのかは分からんが。
トイは、少し恨めしげにシンミを見つめながら、呟いた。
「..................シンミ、こそ、弟子くん、が、倒れ、た、時、一番、あたふた、し、てた」
「んにゃ~!?!?!?」
ふとした呟きに、シンミが奇声を上げる。
一体なんなんだ。
お前のせいで何言ってんのか聞こえなかったじゃないか。
赤くなりながらシンミはふにゃふにゃと口を動かす。
「にゃ、そんなことない、にゃい」
「..................あ、る! だっ、て、弟子君、のタオ、ル、五分、に一回、は、変え、すぎ」
「にゃああああああ!?!?!?」
「一体どうしたのですか。お客人の前でそのような行いは良くありませんよ」
割って入ってきたのは、ナイスジェントルな西園寺一之助さんだ。
止めてくれるかと思ったけど。
「それでは、君たちは向こうの部屋へ行ってもらいましょうか。ああ、勿論トロン君はここに居てください」
「..................分かっ、た」
「お、おぉぉぉ~けぇぇぇ~......」
ズゴゴゴゴ、という感じの効果音が鳴りそうな剣幕で、二人は奥の扉を開けた。
そしてそのまま、部屋の中へと消えていった。
「あの、あの部屋は?」
「奥の部屋は、『トレーニングルーム』となっています。先程も説明致しましたが、完全防音かつ衝撃吸収となっていますので、トロン君も使ってくれて結構ですよ」
「ああ、あそこが」
やたら扉が重そうだと思ったが、それなら納得だ。
「ところで、ですが」
「? なんですか?」
「ご家族の方は、大丈夫ですかな? きっと心配なさっていると思うのですが」
「あ、ああ。そうですね。それではお暇します」
「はい、ではまた。仕事のことはおいおい連絡します。.........二人にはしっかりと言っておきますので」
「御手柔らかにしてやって下さい」
本気で殴りかねない感じの迫力のある笑顔だった。
俺も振る舞いには気を付けよう。
それから数分後。
俺は薄暗い市街地のど真ん中で、とある人に捕まっていた。
「.........今までなにしてたの?」
これまたかなりの迫力があった。
<>(^・.・^)<ご感想お待ちしております!




