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Devil’s patchwork ~其の妖狐が神を討ち滅ぼすまで~  作者: 國色匹
第一章 出会いと優しさと
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Episode of ??? ~???の話~《God side》

いわゆる『神視点』です。

 突然ですが、ここは雲の上、そして地面の下。

 何を言っているのかと怒られてしまいそうですが、私は間違ったことは言っていません。

 だいいち、神である私が間違える訳が......

 あっ、すみません。

 ちょっと言葉が足りませんでしたね。

 こほん。

 えー、私はですね、『イザナミ』というものです。

 え?

 どこかで聞いた事ある?

 嬉しいですね~。

 私、有名人ですか。

 まあ、『人』と言ってよいのかは置いておいて。

 さて、今日はでかける用事があるのです。


「おい、妹よ。そろそろ時間だ」

「わかりました、お兄様」


 [***]


 今は、お兄様と一緒に、御殿に来ています。

 装飾はあまりありませんが、広すぎて、東京ドームに置かれた米粒の気分になりました。

 なんでも、今日はあの『開神・オープ』様の誕生年なんだそうです。

 オープ様は、『神聖帝(ロードオブゴッド)』と呼ばれる、神々を統治する存在です。

 神々しいを具現化したかのような、そんな素晴らしい方なのでしょう。

 今からは、オープ様が直々に私たちにお会いしてくださるそうです。

 なぜそんなことに、と思います。

 正直言って、気が気でなりません。

 心臓の音が、バックバクでやばいです。


 暇すぎたので、お兄様と一緒にしりとりをしていました。

 『ノック式ボールペンの替え芯の買い出し』が出たあたりで、従者の方が出てきました。

 慌てて口をつぐみ、背筋を伸ばすと、不思議と従者様はもう入ってきません。

 かわりに、なにやらだらけた、日曜日の朝の一般家庭のお父さんのような服を着た、可愛らしい少女が出てきました。

 背筋は丸く、顔には覇気がなく、歩き方もおじいちゃんのよう......本当、誰なんでしょうか?


「ふわ~」


 欠伸してますよ。

 本当に誰なんでしょう。

 従者様が何もおっしゃらないので、関係者なのでしょうが......

 謎です。

 少女はてくてくと歩き、御殿の真ん中あたりに来て、黒い穴を開けました。

 穴を開けて空間をつなぐこと、それ自体はさして珍しいことではありません。

 ですが、通常それには長い呪文と魔法陣が最低十個は必要なはずです。

 一瞬でそれをして見せるなんて......この子、やはり只者ではありません。

 そんなことを考えていると、少女はその穴に片手を突っ込みました。


「んっと、よっと」


 突っ込んだ腕を動かし、穴の中を探っています。

 どうやら何かを探しているようです。


「......お」


 見つけたようです。

 そしてそのまま手を引き抜くと、その可愛らしい手は敷布団と掛布団、その他寝具一式を掴んでいました。

 まさかと思いつつ、恐る恐る少女の行動を見た私は、愕然としました。

 迷いのない、てきぱきとした動きで、布団を敷いています。

 先ほどまでのやる気のなさからは到底考えられない動きです。

 敷き終わると、布団の上に上がり、掛け布団を持ち上げ────


「ちょっと待ってておくれよぉ......くう」


 寝ちゃいました。

 待てと言われたら、待つしかないですし。

 心の準備も必要です。

 またしりとりでもしましょう。




「......シャープペン!」

「ン、が付いているぞ」

「じゃあ、シャープペンの替え芯!」

「それもだ」

「シャープペンの替え芯の買い出し!」

「なんでもありというか、それさっき言わなかったか」


 と、そのとき。


「............う~ん............ふぁあぁ............んっ」


 例の子が起き出しました。

 またしてもあの窓を開け、今度は洗面台を取り出して顔を洗っています。

 ......寝起きで窓を開けるとは、やはりこの子、ただ者ではありませんね。

 身なりを整えた少女は、また窓を開けて、やたらゴテゴテした椅子......玉座を取り出して、私達の前に置きました。

 そしてその上に座り、こちらに向かって声を上げました。


「長きにわたって続いた第四次天上戦争に終止符を打った貴公の働きは、素晴らしいものであった」


 抑揚のなく、伸びのなく、ハリのない声で言葉を続けます。


「我らの世界のみならず、我らの世界に連なる世界も救った貴公の働きは前人未到の偉業である」


 そこまでいったとき、彼女は言葉を詰まらせました。


「......あ~、え~、っと~......」


 そして傍らの従者の方に口を寄せ、


「......ねぇ......次さぁ......何だ......あ、それそれ」


 何事もなかったように顔を上げ、こちらに向き直り、再び口を開きます。


「貴公の偉業、成し遂げた事の大きさから考え、貴公に『平和』の名を授けることを、開神オープがここに宣言する」


 開神...オープ!?

 へ、えぇ!? オープ!? って、あのオープ様でしょうか!?

 兄に聞いてみようと横目でみても、驚いているのはどうやら私だけのようです。


「あの~、一つ、いいでしょうか」

「ん~、な~に、ザミザミ?」


 ザミザミとは、私のことのようですね。


「あの、兄は一体何をしたのでしょうか?」


 私はなにも知らなかったので。


「えっとね~、まず先の戦争の原因ってのがフィギュアでね~」


 全然想像がつかない。


「端的に言うと、そのフィギュアを持ってきてくれたのさ~」


 本当に想像がつかない。


「いやはや、ザギザギがいなかったら、今も戦争中だったろうっていうか、世界が終わってたかもね~」


 ザギザギというのが兄だとしたら、本当にやりましたね、うちの兄。


「なるほど、ありがとうございます」

「あれ? もういいの?」

「と、いいますと?」

「いやだってさ、普通はもうちょい深くまで聞かないかな? ほかにもさ、『平和』ってなにー、とか」

「それ聞いても、おそらく私に関係ないですよね?」

「まぁ、そーだけどさ~」

「じゃあいいです」


 少し驚いた顔をしたオープ様は、顔を伏せました。


「............にてんね~」

「え?」


 私の疑問には何の反応もせず、オープ様は笑顔をあげました。


「気に入った~!」


 そういいながら玉座から飛び降り、玉座の従者さんのいないほうに窓を開けました。


「ついてきてごら~ん!」


 そう私に言い、


「君たちは続きやっといて~!」


 兄と従者さんにはそう言い残し。

 私の手を取り、オープ様は窓の中へと飛び込みました。

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