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Devil’s patchwork ~其の妖狐が神を討ち滅ぼすまで~  作者: 國色匹
第一章 出会いと優しさと
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Episode of Devils ~妖怪たちの話~(Bise)

 彼の過去編です。

 最終的に、宝石団結成までを書きます。


 本編だけを楽しみたい方は、次の話へとお進みください。

 オレの名はブリーズ、フランス語で『そよ風』ってゆう意味らしい。

 この娘の名前はフロラール、これまたフランス語で、『花の香り』っていう意味なんだと。

 しかも、この娘は、オレの名付け親。親って言っても、同い年だけどな。


「さあ、行くわよ! ついて来なさい、ブリーズ!」

「はいよ、フロラールお嬢様」


 これは、そんなオレが、死ぬまでの話。そして、次なる命となるまでの物語。


<* * * * * * * * * * * * * * * * * *>


《......寒い、寒い、寒い、寒い...あれ? なんか寒くなくなって来たぞ?》


 しんしんと、雪の舞う音が聞こえてきそうなある日、オレは、大通りのすみっこで、一人、寝たふりをしている。

 もちろん、本当に寝ている訳じゃない。ただ寝ているだけでは、何の意味もない。

 オレの座り込んでいる、お世辞にもきれいとは言いづらい、ボロ布の角に、ヘタクソな字で、〈おなかがすいた〉と書いた紙を貼った空き瓶を置いておく。

 すると、心優しい通りすがりの見知らぬ人が、硬貨を入れていってくれるのだ。

 普通に座っているのではなく、何かを抱え込むようにうずくまると、本当におなかがすいていると思わせられる。

 だから、さっきから寝たふりを続けているのだ。


 オレの生計を立てる方法は、今はどうでもいいから、この話はおしまい。

 ところでさ、さっきオレ言ったよな。『雪の音が聞こえてきそう』って。

 勘違いした人がいるかも知れないけど、あれは、雪は降ってるけど、そんな擬音は聞こえてこないっていう意味ね。

 つまり、寒くないわけがない。

 今のオレは、『貧しい男の子』を装うため、お世辞にもきれいとは言えない恰好をしている。

 貧しい男の子が、マフラーや手袋、毛糸のセーターなんて、普通持ってないだろ?

 普通の人でさえ、マフラーしながら寒いって言ってんのに、このオレときたら、ほぼほぼ丸腰だぜ?


 死ぬわ。


 今日は、まだ『寒い』で済んでるからいいものの、これからもっと寒くなる。

 そしたら......


 まじで死ぬぞ?

 物乞いナメんなよ?


 まぁ、こんな軽装備で寒風吹き付ける街の大通りに座っていると、


《ああ、寒くなくなったんじゃない......オレが、寒く感じなくなっただけだ》


 結果、こうなる。

 でも、オレは、普通のホームレスとは違う。というか、オレはそもそも、ホームをレスしてない。

 オレのおばあちゃんは、つい先日旅行に出かけていった。あの荷物じゃ、あと一か月は帰ってこないと見てもいいだろう。

 そして、ばあちゃんの家の鍵を、オレは持っている。

 もうお分かりだろう。

 いこうよ、ばあちゃんの家。



 はい、到着っと。

 そこまで遠い距離でもないし、歩いて向かっても倒れることはないと踏んでたんだけど、やはり早めに向かっといて正解だったな。

 荷物(つっても、空き瓶とボロ布だけだが)をまとめる間に、吹き付ける風が、だいぶ強くなったからな。


 《...ぁあーーー、あったけぇ...》


 いや、あったかい。ほんと、あったかい。

 普通の人がどう感じるかはわからんが、あの寒空の下、動かずじっとしていて、体温激さげぷんぷん丸だったオレには、天国のようだ。


 ......え? 何? 『激さげぷんぷん丸』についての説明を六行以内で述べよ?

 日本っていう、東の方にある国で、JK? とかいう人たちの間で流行ってる、『激おこぷんぷん丸』っていうのがあるらしい。

 意味はよく知らなかったけど、名前の響き的に、刀? っていう、日本の剣に似てるよねって、前に通行人が喋ってたのを聞いた。

 オレも、きっとそういう事なんだろうって思ってたし、なんかかっこいいから、ちょくちょく使ってこうかと思い、使ったって訳。

 お、ピッタリ六行。やったぜ。


《ここ最近、かなり寒くなって来たしなぁ...そろそろ、冬眠に入るべきか?》


 あ、別に、ほんとに冬の間、ずっと眠るって訳じゃないからな? ええと、あれだ、あれ。昼、じゃなくて、お湯でもなくて......あ、そうだ、比喩だ、比喩。

 他のホームレスやらとは違うと思うが、オレは、冬になると、ばあちゃん家に引きこもる。そして、基本的には一切家を出ない。

 ずっと眠ってるわけじゃないにせよ、実際は食って寝るだけだから、それが、オレの『冬眠』ってこと。

 

 え? 金は足りるのかって?

 

 足りるさ。だってオレは────



「あなた、何をしているんですのッ!! ────ああッ、お待ちなさい!!」



 ......ちょっと待て。なんだ、今の。


 オレの耳がおかしくなったんじゃないとしたら、今、家の(ばあちゃんの、だけどな)東の柵の方から、甲高い声が聞こえてきたんだけど。

 さすがに放っておくわけにもいかないので、オレも窓から様子をうかがう。

 すると、オレの目の前を、なんかよくわからない少年が走り去っていった。

 そして、その後ろから、やたらと高そうなドレスをまとった少女が走ってくる。

 が、体力が尽きたようで、オレの目の前でかがみこむと、


「はぁ、はぁ...こらぁーーッッ...ぜぇ...」


 と、弱々しい声を漏らす。


「あー、なんだ、その...大丈夫か?」


 口ではこう言ったが、内心では、


 《なんだ、コイツ?》


 という思いでいっぱいだった。

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