夜
黒い月が照らす夜に、2人の外套騎士はいた。
交差するように背負った得物がその存在を妖しく際立たせる。
一本は、雷管深撃武装。通称ライカン。
もう一本は、肉断ち大剣。どちらも外套騎士を象徴する装備だ。およそ人類の歴史で最もこれらの武器は殺戮に優れているだろう。なぜなら、外套騎士が討つべき敵は歴史の中で最も悪しき生命だからだ。
人の形に似た異形は13年前に、宇宙より飛来した城と共に姿を現した。
太平洋に堕ちたそれらは、人口の8割もの命を奪い、そして多くの国家を過去のものとした。
名状し難い狂気を放つ城はルリエーと呼ばれ、そこから放たれる異形は狩人もしくはヒトガタと呼ばれる。
奴らは人を狩る。食料とするためか、植民地確保のためか、もしくは遊びなのか。それは、我ら人類が計り知れるものではない。
奴らはおぞましく、強大だ。
しかし、ただ奴らに殺されるのを待つというのも癪にさわる。
決して誰かを護るためなどではなく、己が生きるために狂気に諭された常人が血と煤と汚泥に塗れた外套を纏うのだ。
そして、彼らはおよそ中世に時代を巻き戻したかのような甲冑に戦さ場で自らの命を任せる。
故に、彼らをまとめて人は呼ぶ、外套騎士と。