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魔術封じの影響で各国の戦力変動は激変していた。
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■シーガ国side
東のシーガ国、青騎士団魔剣師長キース・イェーナは魔術封じの影響により魔術の使用ができなくなった。
(この状況はどうしたものか……)
水と風の精霊を使役し広範囲の攻撃を得意としていた自分。魔剣士として地位を確立した自分にとって、魔術封じは痛い。
キースは上からは、剣士よりも国防戦略に移動しないかと打診されている。
戦略を練るのは得意ではあるが、スグには踏ん切りがつかない。
魔術封じに対し憤りを胸に抑えキースは鍛錬場に向かった。
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■ザサウ国side
シーガとの国境にも魔術封じが越えてきた今、ザサウ国も他人事とはいかなくなっている。
「団長ー。いつ来るか分からないんですから、一旦団長室に戻ってくださいよー!」
「いつ来るか分かんねーから、居るんだろ?」
戻ってからヤツが来られたら最悪じゃねーか!と話を聞く気がないのは、ザサウ国赤騎士国王騎士団長ガル・ブリックだ。
「来たらぶった斬ってやるから安心しろ!」
「駄目ですよ。息の根止めちゃ。各国から犯人の証言請求されるだろうから殺しちゃ駄目です」
副団長に諌められるも、毎度のことで柳に風、糠に釘だ。
厳つい躯体でこまごまと野営準備をし、待ち構える気満々だ。
愉しげに動く団長を見つめ諦めムードの副団長はガックリと肩を落とした。自分に回ってくる書類仕事を考えると溜め息しか出なかった。
ザサウ国内の魔術封じのエリアを魔術師に探索させ、一番端から30キロ地点で待ち構えているガル。
くだんの魔術封じの魔術師が、ここに来るのは確実だが、来るまでに彼の忍耐が続くかは神のみぞ知る。
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■ウーノス国side
北のウーノス国は東のシーガ国には魔術封じの影響があるため侵攻はせず防衛線を張った。
あとは西のスウェート国との国境のみに戦力を注ぐことに注視していた。
魔術封じを警戒して騎士や兵を鍛えることに力を入れていた。
「振りが甘い!脇を締める!!」
檄を飛ばし指導するのは北の白騎士近衛騎士団長ユークレイ・フロスト。
次に現れる地点はこの国の東の街。
部下の指導にも力が入る。
(必ず仕留めてやる!)
ユークレイは合間見える時は魔術封じを受ける覚悟をしていた。
万が一取り逃がし、魔術封じが発動すれば、魔術封じの範囲から逃げ切ることは出来ない。
今回確実に対応出来なければ自分の精霊契約を解除させられる。
水と風と氷の三属性を操れたユークレイにとって魔術封じは脅威だが逃げるわけにはいかない。
出現ポイントを正確に割り出し万全の体制で迎え撃つ準備を進めていた。
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■スウェート国side
西の黒騎士近衛師団長シュロン・デリュージュはシーガ国の情報を間諜から集めていた。
魔術封じの魔術師。
シーガ国内での目撃例の少なさは、街中などは夜活動し人目を避けていたからだ。
少ない情報の中にある、黒い外套を着た小柄な人物。
性別も年も容姿も何も分からない相手。
魔術封じを発動した後、即転移術で逃げる。
封じられた範囲でも術が使える相手とは、厄介だ。
今のところ、有力な情報は皆無。
「今回、白のがどれだけやれるか、だな」
シュロンはポツリと呟き、書類を机に置いた。