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最後の魔術師  作者: たちばな樹
最後の魔術師のその最後
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3・ユークレイside



大地が再び芽吹き緑を取り戻した空の下で、長い髪を風に撫でられながら佇む彼女。



彼女はゆっくりと体調を戻し、神殿内で療養していた。



少しつり目の黒目に小さい鼻に小さい口。

小さいのは小柄な体型なせいだからだが。


幼いと思っていたら21とは思わなかった。

最初来た時は19だったわけだ。

童顔な民族だと言っていたが、未だ十代後半に見える。



彼女は大神殿預かりとなり、部屋に彼女の住んでいた荷物を移動させた。




精霊王の真実は世界を強震した。


そして、大神官の大罪を暴き、各国も平和に向け新たな一歩を踏み出そうとしていた。



ーー大陸を救ったのは仮面の魔術師。



最後の魔術師を屠った我々では無い。



彼女は巫女となり大神殿に勤めることとなった。




ーー仮面の巫女として。






彼女は巫女として薬を作り、民に配る。

精霊王から授かったという知識はかなり重要だ。それを彼女は気が付いていないようだが。



薬草を届ける仕事を無理やり受け、彼女に会いに行く。


精霊王への愚痴を言いながら薬を作る彼女。

未だに私は歓迎されない。

顔を見れば素っ気なくあしらわれるのが悲しいのだが。


元気な顔を見れば十分か。



ーー今はまだ。




薬草を運ぶ任を正式に受け、定期的に彼女に会いに行ける。それ以外でも会いに行けば、仕事サボってません?と取り付く島もない。



「きっちりと仕事は片付けてますよ。貴女に会うためなら時間に惜しみ無いですから。邪魔な仕事は素早く片付けます」


私の隠した気迫が漏れたのか、彼女が怯えたように見えた。

貴女に会うためにどれだけ時間の遣り繰りに尽力しているか聞かせたいものだ。



だが彼女の怯えは他にもあるのを知っている。


兵や騎士を見るとかすかにビクリと強張るのが分かる。手を握りしめ一瞬耐える姿に胸が締め付けられる。自分はまだ恐怖の対象なのだと。




「貴女に会うためなら、何でもします」



正直に伝えているのに彼女はサラリと躱す。



しかも、小っ恥ずかしいセリフを面と向かって言える貴方は勇者だと、言う。



ーー勇者。



精霊王が言った言葉が蘇る。


思わず、それだけは言われたくない言葉です、と語気を強めてしまった。


彼女に謝らせてしまい、貴女のせいではないのに、すみませんと、慌てて取り繕うも彼女の表情は沈んだままになってしまった。




私の稚拙な態度を落ち着かせるかのように彼女は薬花茶を出してくれた。

私の心の凪いでくれる温かな彼女の心遣いに癒される。



「ホッとする味ですね。貴女が淹れるお茶は香りも癒されるので好きなんです」


「お点前お褒め頂き恐縮です」



堅苦しい言い方はやめて頂けませんか?と訴えた視線を投げれば、仄かに頬を染めるのが分かる。



その反応を見れただけでも充分です。



満面の笑みで彼女を見つめた。






神殿で勤めを済まし、彼女はいつものように調薬室で薬を作る。

その姿を見つめるだけで顔が緩むのが自分でも良く分かる。



「貴女に会いに馳せ参じました」


「背後からやめてね………」


思わず髪に口付けを落とすと諌められた。


「それは失礼いたしました」


そんなやり取りもまた楽しい。

呆れながら半目で睨むのも可愛い彼女。

仕事をする彼女を隣で眺めるのは至福の時間。



だが、作業中彼女が指に棘が刺さった。

棘を抜き指先の血を見た。



ーー血溜まりに横たえる彼女の姿。



忘れたくとも忘れられない。



貴女の血はもう見たく無いですと、絞り出すように言葉にするも、脳裏から払拭できず眉間に力が入り顔を顰めた。



「貴女に剣を突き立てた自分が許せない。もう貴女に一筋とて傷をつけさせたく無い」



手を両手で握り、貴女に伝える私の思い。



「貴女を護るのは私だけでいい」



「貴女の側で貴女を護りたい」



「精霊王に遣わされたのが貴女で良かった」



いくら言葉を積み重ねても、彼女には相変わらずけんもほろろにあしらわれる。




ーーいつになったら私の思いは伝わるのか。




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