2・ユークレイside
協会の鐘の音が重々しく響いた。
彼女を追悼する祈りを神官が献げている。
仮面の魔術師。
そう呼ばれた彼女の名前も知らない。
誤解されなが大陸の魔術封じを行い、消される運命さえ知らなかった彼女。
棺に横たわる彼女。
精霊王と矛盾の契約をした哀れな娘。
それを貫いたのは、自分。
虚脱感に支配されなにも考えられなかった。
そんな中、光に包まれた。
光の球体が祭壇の上で揺れ、その光から低く朗々とした声が教会内に響いた。
《ーー異界の娘に我が眷族精霊王が迷惑をかけたーー》
神の神託に驚愕した。
《娘と精霊王の約束は、全ての魔術師が消えたら元の世界に戻すと言うもの。だが、魔術師の娘が居れば契約は成されず、かと言って魔術師の娘が死んだ今、願いは叶うことはない。
叶えられずに残った願いを、誰か代わりに願う者は居るか?》
ーー神の救済。
ーーこれ程に歓喜したことはない。
「我らが神に畏れながら申し上げます。仮面の魔術師、その彼女を生き返らせてもらうことは叶いますか?」
ーー願うは彼女のみ。
《自身が王になる願いでも叶うが?良いのか?》
ーーそんな物は要らない。
「願うは彼女を生き返らせることのみです」
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寝台で眠り続ける彼女。
腰まである髪を一房すくい口付けを落とす。
幼顔で儚げに眠る彼女の息吹を感じたくて頬を撫でれば温かさを感じ安堵する。
ーー自分の手で消した命。
あれ程の後悔は無かった。
彼女を殺し、英雄と呼ばれるくらいなら自決した方がマシだった。
「早く目覚めてください。貴女の名前を聞かせて欲しい」
3日後、彼女は目覚めた。
まだ意識は朦朧としているようで起きるのは難しそうだ。起きれるようになるまではゆっくり休んで欲しい。
彼女が起きれるようになってから、彼女の質問に答えた。
彼女が死んだ後のことを。
話を聞いていくうち精霊王に騙され、元の世界に帰れないことを知った彼女は哀傷な顔で胸元を抑えていた。
ーー私が刺した場所。
私も胸が潰れるような思いに苛まれた。
私達の心配をぎこちなく受ける彼女に気が付いた。彼女にとって、我々は敵だったと。
ーーああ、まだ聞いていなかった。
「…貴女のお名前を教えて頂けますか?私は白騎士近衛騎士団長ユークレイ・フロストと申します」
「わたしは……紺野沙絢、あ……、サアヤ・コンノです」




