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ゴーン……ゴーン……ゴーン……
重々しい鐘の音が響き死者を弔う。
祭壇に置かれた棺には仮面の魔術師が納められている。
スウェートの端にある教会に置かれた仮面の魔術師の遺体は綺麗に死化粧され眠るように横たわっている。
礼拝席に騎士達が力無く項垂れ座っていた。
神官が祈りを捧げているのを三人はただ見ているしかなかった。
「ーー、ーー死せる娘の魂が、神の身元に導かれ、ーーー、ー……」
天上へ導かれ神の身元に向かう魂が迷わぬようにと、祈る神官。
本来なら、“ 死せるーー”の後は名前が入る。
だが、彼女は、魔術封じの魔術師、であり、仮面の魔術師。
それしかない。
ユークレイは視点の合わない視線で虚空を見つめ呟いた。
「我々がしたことは何なんだろうな……」
「小娘殺して滅亡阻止、か………」
ガルは深い溜め息をつき天を仰ぎ、言い捨てるように言うと顔を顰めた。
瞑目していたシュロンは祭壇に目を向けて独言のように呟く。
「祈る名すら無い……」
大陸の滅亡を阻止しながら精霊王に犠牲にされた。
名もない彼女。
夕陽が射し込みステンドガラスから柔らかな光が降り注ぐ。
夕暮れ色に染められた神殿内の静寂な中神官が祈り、鐘が鳴り響く。
そのさなか、
突然光に包まれた。
驚き周りを見回す神官と騎士達。
見上げると、光の球体が祭壇の上で揺れていた。
その光から低く朗々とした声が教会内に響いた。
《ーー異界の娘に我が眷族精霊王が迷惑をかけたーー》
驚愕する者達にかまわず光は語る。
《娘と精霊王の約束は、全ての魔術師が消えたら元の世界に戻すと言うもの。だが、魔術師の娘が居れば契約は成されず、かと言って魔術師の娘が死んだ今、願いは叶うことはない。
叶えられずに残った願いを、誰か代わりに願う者は居るか?》
光がふるりと揺れ周りを伺っているように感じた。
ユークレイが光の球体に向かい前に出て頭を垂れた。
「我らが神に畏れながら申し上げます。仮面の魔術師、その彼女を生き返らせてもらうことは叶いますか?」
《自身が王になる願いでも叶うが?良いのか?》
「願うは彼女を生き返らせることのみです」
騎士達が揃って光の前で膝をつき、頭を垂れ願った。
ーー光が笑うように揺れ、周りは温かな煌めきに包まれた。




