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さよならヘビメタ喫茶◆〜〜夢の終わり〜〜

誰もがこの状況を受け入れられない…アンナはパパの手を握り、必死に叫ぶ…だがもうパパは目を覚ますことはない…エリックもポールもマーティもその場に立ち尽くす。


ライブが終わるのと同時にパパは息を引き取ったのだ。アンナの叫び声だけが虚しく病院内に響き渡った…奇跡の時間はパパの死によって幕を閉じた。



焼香の匂いが漂う…

回りには沢山の花がパパの遺影に飾られている…アンナの耳にはお経さえもヘビメタに聞こえる…だがアンナはもう涙を流してはいない…


ヘビメタ喫茶マスターの葬儀は異様な雰囲気に包まれている。

参列者は全員白塗りの化け物に変身している、申し合わせた訳ではない、皆、マスターを思う心から白塗りになったのだ…あの高島あや子でさえ白塗りの化け物だ…

さらにスーパーギタリスト達も白塗りだった…

エリック・プラクトンさえも…


出棺の時、どこからか美声が聞こえてきた。ポールである…TOO BE WYIS YOUを熱唱している…



人の価値とはその人が死んだ時に分かるという…


これだけの人がヘビメタを愛し、マスターを愛していた…


ヘビメタを心から愛した男の最期…


「ありがとう!マスター

「天国にいってもギター弾けよ!」

「マスター忘れないよ」

「THANK!」

「マスター愛してるぜ」

「マスター最高!」

「ヘビメタ最高!」


奇声にも似た叫び声とともにマスターは出棺した……みな声を上げて泣く……偉大なる素人はこの世から去った……






あれから1ヶ月…


ママもアンナも変わってしまった。アンナは学校にもいかず部屋に閉じこもる、食事もろくに取ってはいない。ママもアンナと同様に時々、涙を流し食事も喉に通らない…ヘビメタ喫茶のドアの前には貼り紙が見える。


『今までありがとうございました。ヘビメタ喫茶閉店致しました。』…と

ヘビメタ喫茶はパパが1から作り上げたものだ、パパがいない今続ける意味もない…2人はそう考えていた…

勿論、毎日何百人と言う人がヘビメタ喫茶を訪れ『やめないで!』…と声を上げている。だが2人に声は届かない。


男が来たのはそれから2週間ぐらいたった時のことだった…

その日アンナとママはテレビもつけずに、無言で朝食を取っている。するとドアの外から男の感高い声が響いてきた…


「アケテクダサイ!アケテクダサイ!」


ママは無言で立ち上がりドアを開けた。そこには全身黒の衣服に身をまとった男が立っている。マーティ・フリードマンである。ママは目を丸くした。

「マ、マ、マーティ・フリードマン…ど、どうして…」


「……テレビハ、ドコデスカ?」


「ハァ?」


「イイカラ!テレビ!」


マーティが有無を言わさず、ズカズカと入ってくる。アンナも驚きを隠せない様子だ。マーティはアンナを見て一礼した。マーティはリモコンのスイッチを押す。


「ミナサン、コレヲミテクダサイ!」


マーティがそう言うと、2人は声が出なくなった…テレビから女の声が聞こえてくる。


「アンナちゃん!今は辛いけど、頑張って!お父さんの夢はあなた達が守るのよ!」


「ちょっと高島さん!生放送ですよ!やめてください!」


そこには高島あや子が写っている。隣で大塚アナの叫び声が聞こえる…

さらにマーティはチャンネルを回す。


「ポールさん今の曲は新曲ですか?」


「NO!イマノハ、アンナノ、ファザーニ、ササゲル、キョクデス!

アンナFIGHT!」


ポール・ギルバードである。さらにマーティはチャンネルを回す。


1人の女性がテレビに写った。スケートをしているのだが、違和感がある…なんと曲にヘビメタを流しているのだ!

するとナレーターが言った。

「藤原美姫選手によると、『今日の演技は天国のマスターに捧げる』…と言っておられますが、どういう事でしょう?」


さらにマーティはチャンネルを回す。


「ヘビメタ喫茶、復活の署名お願いしまーす!」


「お願いしまーす!」


テレビにはキングと太郎と佳奈が写っていた。ヘビメタ喫茶復活の署名をしているようだ…

どのチャンネル回してもヘビメタ喫茶の事しか言っていない…

アンナとママは口を開くことも出来ず、ただただ聞いていた…するとマーティはリモコンを置き2人に優しく言った。


「ミンナガ、ヘビメタキッサ、フッカツヲ、ノゾンデイマス…」


「………」


「アナタタチノ、スベキコトハ、ナンデスカ?」


「………」


「ナミダヲ、ナガスコトデスカ?」


「………」


「ファザーノ、アイシタ、ヘビメタキッサ、マモッテクダサイ…」


「………」


「ボクハ、ソレダケ、イイタカッタ…」


「………」


「FIGHT!」


マーティはそれだけ言うとヘビメタ喫茶から帰っていった。

2人の間にはテレビの音だけが流れる…ヘビメタ喫茶を愛してくれる人はこんなにいる…

どれほどの時が流れただろう、ママは顔を上げアンナに言った…


「マーティさんの言う通りかもしれない…

パパはヘビメタの良さをみんなに知ってもらう為にヘビメタ喫茶を作った…私達が頑張らないと天国のパパは悲しむかもね…」


アンナは頷いた。そしてドアの貼り紙を破り捨てたのだった。


次の日よりヘビメタ喫茶のドアには『OPEN』と書かれた札が目に入ったのだった。


エピローグへ…

ここまで読んでくれてありがとうございます。

最終話を書いていてなぜか『電車男』を思い出してしまいました。

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