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失踪

 長谷川が目覚めるとダブルベッドの半分は綺麗なままだった。


 また黒瀬はソファーで寝たのか。自分への当て付けだ。朝から苛立たせる奴。


 最後にあいつがこのベッドで寝たのはいつだったか。多分、幹部になれと話があった頃だろう。


 何故幹部にならないのか何度も黒瀬とは喧嘩になったが未だに分からない。頭がおかしいとしか思えない。一緒に生活をしなければならないこっちの身にもなって欲しい。


 長谷川がリビングに行くとそこに黒瀬の姿はなかった。嫌な予感がした。組から大人しくするように言われ、一人で出掛ける事など今まで無かった。何か欲しいものがあれば長谷川が買いに行く事になっている。


 テーブルには一冊の通帳が置かれていた。名義は黒瀬。今まで黒瀬は通帳を決して見せようとしなかった。通帳を開くと暗証番号が書かれたメモが落ちてきた。入っている金額も驚くほどの額だ。


 長谷川は落ち着き無く部屋を歩き回る。絶対におかしい。まさか逃げた? 不安はどんどん大きくなっていく。マズい、組からも絶対に目を離すなと言われていたのに……。どうする?


 コンビニへ出掛けたのかも。そんな儚い希望にすがりつく。そんなわけないだろ? 逃げたのよ! もう一人の自分が叫んでいる。それでも長谷川は待つ事にした。


 日が傾き始め部屋の中が徐々に暗くなっていく。電話してもソファーの下で黒瀬のスマホを発見しただけだった。


 絶対にマズい。どうする。私も逃げるか? あいつが残した金があればどこにだって行ける。でもどこへ逃げる? もし組の奴等に見付かったら? やっぱり組に報告するか。これだけの金があるんだ。もしかするとお咎め無しかも。


 ダメだ、あいつの価値は金じゃない。あいつが持ってる情報だ。顔と名前だ。それに組の面子だってある。……どうする?


 長谷川は迷ったあげく通帳を持って組へ報告した。組はすぐに黒瀬を探し始めた。何日も総動員で探したが一向に行方は掴めなかった。


 暫くすると黒瀬の捜索に人員を割く事が難しくなってきた。他の組とのゴタゴタが起こるようになったためだ。黒瀬が居た頃はそんな事は無かった。他の組も黒瀬が失踪した事に勘付き始めたのだ。


 黒瀬を捜索するよりも他の組への対策が必要だ。組は捜索する人数を減らし始め、とうとう諦めた。黒瀬の件は長谷川が責任をとる事になった。


 その後、街で黒瀬と長谷川を見た者は居ない。

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