表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

002.05

お待たせしました

***




 ギルドマスターの私室でそんな不穏な話が行われていたとは露知らず、ギルドの二階、アイテム納品受付カウンターにてユーリアはつい先ほど作成した【回復薬セット】の納品をしていた。


「次は・・・君か。今日はいつもより遅いな。なんかあったのか?」

「ええと、ちょっとトラブルがありまして。・・・とりあえず【回復薬セット】の検品お願いします。」

「じゃあちょっと待ってな。・・・【鑑定】」


 ギルドに常駐している片眼鏡モノクルの渋い鑑定士おっさんは、ユーリアから【回復薬セット】を受け取ると、早速【鑑定】を使い中身の回復薬の状態を確認しつつギルド用の箱に箱詰めしていく。その間にユーリアは、ポーチの中から【ギルド端末ギルドフォン】と呼ばれる、国家公認ギルドのメンバーにのみ配られる端末を取り出した。

 この端末は国の各地に点在する『古代遺跡』と呼ばれるダンジョンから出土した魔道具の複製品で、クエストの受注と完了報告をする際に必要な許可証であり、登録したギルドメンバー(フレンド)に連絡することも出来るスグレモノである。


「データを入力したから、端末を台にかざしてくれ。」


 ユーリアは鑑定士の言葉に従い、端末スマホを彼から差し出された台の上にかざす。・・・半秒程して、《手続きが完了しました 端末を台から離してください》と端末から無機質な声が響いたのでユーリアは端末を台から離した。これで彼女はギルドの依頼クエストを完遂したことになり、依頼に対応したGPギルドポイントと報酬の資金ゴールドを得たことになる。実際に画面を見てみると、6000Gと100GPギルドポイントが自分の口座に入ったことを示すメッセージが表示されていた。確か回復薬一個が販売価格500G、それが5個を4セットで10000G、売却価格はその4割なので4000G・・・とユーリアはそう考えた所でふと気づいた。


「2000G多いんじゃ?」

「ああ、それか? 需要に対する供給が追いついてないせいで、ギルド内ショップの回復薬の販売価格が1個500Gから750Gに値上がりすることを決定したらしいから、多分その影響が出ているんじゃないのか?」

「えっ」


 ある意味街の中心とも言える国営ギルドでは、ユーリアのような生産者からギルドに卸された様々な物を(浅く広く)取り扱うショップが存在している。そこでは主に初心者支援を目的とした


・安くて扱いやすい武器防具

・性能は低いがしっかりと回復する回復薬

・生産者になりたい人用の初心者道具セット


 等といったラインナップをしており、特に回復薬は『回復しない回復薬』のような不発弾が出ない事を保証しているので、低性能の回復薬でも『そもそも耐久力(HP)が少ない』低レベル冒険者から『耐久力は別として傷を治して出血(HPの流出)を抑えたい』上級者まで幅広く買ってくれる人がいる。

 またギルドはアイテムの納品依頼クエスト・・・素材付き(低報酬)と素材無し(高報酬)の二種類を常設しているので、ユーリアのような『そこそこの実力はあるがお店は持っていない』生産者達からアイテムを納品してもらうことで在庫を増やすことで需要に対する供給を確保しているのだが、ここである問題が立ちはだかった。


「素材の在庫が無い!?」

「・・・頭の痛い話でな。」


 このギルドは在庫補充の為に、郊外の薬草農家や幾つかの商店から定期的に素材や常備アイテムを取引している。だが数日前、薬草を中心とした荷物を積んだ荷馬車数台が山賊に襲われ、荷物の殆どを奪われてしまったらしい。現在は衛士隊と自警団による共同捜査が行われているが成果は芳しくない模様。


「お陰で外部とのアイテムの流通が滞っている訳だ。」


 彼によると現在は、『作る人は居るが素材が無い → アイテム生産停止 → 需要に対する供給がストップ → 物品減少による値上がり』といった事態が、ギルドショップ以外でも次々と起こっているようだ。


「回復薬が無いと、ダンジョンに潜りにくくなるから余計に素材が少なくなるし・・・もしや武具の修理も出来なくなったりするんじゃ!?」

「いや、それだけじゃないんだ。ココだけの話なんだが、襲われた荷馬車には薬草の他に・・・っつかそれよりも大事な『結界結晶』が積んであったんだよ。」


 魔法学院でよく使われる、魔法試合等で魔法から生徒や施設、ひいては魔法学院そのものを守る結界を発生させる『結界結晶』という魔法具は消耗品に近い扱いのアイテム。その中でも魔法学院そのものを外からの攻撃から守り、強力な魔物を退ける副次効果がある特大の『結界結晶』が奪われていたらしい。


「(もしかして、あの時のワイルドドッグの群れはその結界が弱まったせいで・・・?)」

「Cランクのワイルドドッグを最低とした高ランクの狼系魔物の群れが出てるとの情報が来てるから弱まってるのは確実だろうな。」

「うわ・・・それは大変だね(・・・というかボクも襲われたんだっけ。)」


 おっさんの言葉で3日程前(学院から街に戻ってきた時)にあった事を思い出しつつ、他人事のようにユーリアはそう思った。が、


「いや、それは君もじゃないか?」

「え?」


 おっさんの次の発言で、ユーリアは自分の予感があたってしまったことを深く後悔することになる。



「ギルドマスターからの言伝で、『君達のパーティには学園の様子を見てきて欲しい』っていう依頼が来てる。」

「えっΣ(゜Д゜) ・・・それってもしかしなくても」

「ああ、強制だな。・・・何か、不憫だな君・・・いや、君達は。」

「言わないで下さい・・・」



 面倒な種は残念ながらついてきてしまったようだ。






Change MainPlayer

ユーリア・ミスティ(現在)

→神原結斗(4日前)


第一話へ続く


やっと間章が終わった・・・

次はメイン人物のステ表示回?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ