002.04
おそくなりました
***
「ごめんね、ボク達も今は自分の事で手がいっぱいなんだ。」
「う・・・はい、すみませんでした。」
『メイン装備が修理中で手元に無い二人で、紙装甲の少年達六人を装備が万全でも割と危ないダンジョンの中を往復する無理ゲー』だということで丁重にお断りすることにしたユーリアと洋一。キリキリと傷む良心を抑えつつ、やや意気消沈した風の少年達と別れた。
そういえば所詮モブなので紹介してなかったが、先程の少年達の職業は以下のようになっている。
・剣士(リーダーの少年)
・槍士(クール系の長身の少女)
・戦士(無口で大柄の少年)
・弓士(軽そうな性格の少年)
・魔法士(金髪ツインテの少女)
・僧侶(臆病そうな小柄の少女)
・・・ファンタジー物をよく読んでいる方ならだいたいわかると思う。オードソックスというかテンプレというか、普通にバランスが良さそうなPTだ。戦士を盾にして槍士と剣士が攻撃、残りの三人が支援するといった腹積もりなのであろう。が、それを(若さと)装備の質が足を引っ張っているとユーリアは見た。洋一にその旨を訊いてみると、
「確かに、ここの魔物とやりあうには装備が役に立たないと思う。」
と言った感じで同意を得られた。かくいう洋一達も似たような服装に見えるが、これは後述。
といったところで街に到着し、街の中に入ったユーリアは洋一と別れてシエルの実家である鍛冶屋へと帰ってきた。そこでは丁度シエルが鍛冶を終えていたようで、金属の端材等を箒で掃除していた所であったようだ。
「ただいまー!」
「おかえりユーリア、薬草はどうだった?」
「まあそこそこ、かな。多分ポーションにして売る分には問題ないと思う。」
ユーリアはシエルの質問にそう答えつつ、今回採ってきた薬草類の鮮度を確認していく。
「でもあの『犬』達のお陰で新しく売るアイテムが殆ど無くなっちゃったから、その分をポーションに割くとすると・・・ボク達の分は出来ないかな?」
「うーそっかー。結構重宝してるんだけどこんな状況じゃ無理よねー。」
「そうだね」とユーリアはシエルの意見を肯定しつつ、アイテムポーチ(洋一のもつスキル【無限収納】を模倣したポーチ。容量は小さい事と中の時間が止まらないこと以外は同じ仕様)からすり鉢や携帯鍋等、ポーション作りに必要な『携帯調剤セット』を取り出していく。ついでにこの家の井戸から採ってきた井戸水を最近開発した『簡易浄水キット』で浄水し、鍋に投入。ポーチに仕舞い直した薬草を改めて取り出し、まな板に乗せて包丁でザクザクと切る。
「毎回思うんだけど、やっぱりユーリアは器用よね・・・」
「ほぼ毎日ポーション作ってたら嫌でも覚えると思うよ?」
で、細かく切った薬草をすり鉢の中に入れてすりこぎ棒で細かく砕いて小さな袋に入れ、沸騰し始めた鍋に投入。薬草の中にある薬効成分を抽出。ここで紅茶とか緑茶とかの淹れ方を連想した方は大体合ってる。
「あっ、ボーション用の瓶どこだっけ?」
「・・・そう言うと思った。どうせ帰ってきたらすぐに作るんだから前もって用意しておきなさいと毎回言ってるわよね?」
薬効成分を抽出し切った後、薬草の入っていた袋を取り出して十分冷まし、濃い緑色になった水・・・『濃縮された回復薬』を用意したギルド規格の回復薬専用瓶に少量入れ、水で薄めて『回復薬』にする。この際に【鑑定】と呼ばれるスキルを使用して、何故か数値化される回復量をこちらもギルド規格である500程度に収める。
まあ本職である【薬剤師】ほど精度は良くないので、恐らく半分は規格外れになるとユーリアは予測していた。
が、
『【回復薬5個パック】×4
消耗品 RankB 品質:良
作成者:魔法工学士ユーリア
消費期限:14日間
回復量(1個辺り):500HP+10%〜-10%
魔法工学士ユーリアが調剤した、生物の耐久力を回復させる為のポーション。消費期限が短いが、飲むだけで傷が治る。』
『【下級回復薬】×2
消耗品 RankD- 品質:良
作成者:魔法工学士ユーリア
消費期限:7日間
回復量:250HP+5%〜-15%
魔法工学士ユーリアが調剤した、回復力の低いポーション。本職でないのであまり持たず、回復力にバラつきがある。』
回復薬の残りで作った下級回復薬は売れないとして、半分は外れると踏んでいた回復薬が全て規格内に収まるという謎の現象が起きた。
「今日は珍しい日というか・・・ナニコレ、何で全部規格内に収まっちゃうのかな?」
使った器具を片付けつつ、「絶対何か面倒事が起きる気がする」とぼやくユーリア。
「ただ単に腕が上がっただけじゃないの? ほら、今まで色々と作ってたし。」
「それもあるんだろうけど、何かこう、なんとなく・・・あー、やっぱり面倒事か。」
「?」
何かを言い掛け、ふと窓を見て諦めの表情を浮かべた彼女に首を傾げたシエル。彼女の耳に、扉をノックする音が聞こえた。
「ちょっと誰か来たみたいだし戻るわ。」
「うん、これ片付けたらすぐ行くよ。」
この鍛冶屋の一人娘であり今日の店番でもあるシエルはここで離脱。ユーリアは回復薬をギルドに納品しお金に変える為、ギルドに向かうことを思考の端に収めつつ、使用した器具の後片付けを進めていった。
さて、場面を変える前に【ギルド】について少し話しておこう。・・・【ギルド】とは、ダンジョンや未開地を攻略する【冒険者】や、各種道具を作る生産者を育成する組織であり、またそういった者達を管理する為の施設であり、本作の舞台である本国には中央の本部を含めた9つのギルドが存在する。
その中の一つであるギルド【南西】は一階を酒場や浴場等の宿泊施設、二階を各種クエストや講習な度の受付や管理、地下には資料室、そして最上階である三階にはギルドマスターの私室を始めとする重要な施設といった構成をしていた。その最上階である私室にて、二人の男性が居た。ギルドマスター専用の部屋にいるからして恐らくはギルドマスターとその秘書であろう。
「これで報告は以上になります。」
執務机の斜め後ろ、執事服を着た童顔で青髪の青年はそう言って話を切り上げた。残念ながらこの場面に移った時には既に終わっていたので話の内容はわからない。
「・・・如何致しますかアドルフ様。」
「そうだな。【ヤツ】の移動経路は特定できたのか?」
「まだ不確定ではありますが、大体は絞れたと諜報班からの報告があります。」
「ふん、そうか・・・。」
執務用の椅子に座り、そう言ってニヤリと嗤うのは『如何にも俺がマスターだ』とでも言いたそうなマントを羽織る、豪勢な身なりの青年。体つきの良い金髪青目のイケメンだが、何だろう、うん。本当にギルドマスターか?
「たしかヤツ等と最初に遭遇したのは学園で有名なあの三人組であったな? 奴等に『魔法学院の様子を見てくる』体でそこへ向かわせることにする。」
「もしや、彼らにヤツを討伐させるおつもりで?」
「流石にCランク風情がSランクの【魔獣(獣型魔物の上位版)】に勝てるわけがなかろう・・・奴等は少々おイタが過ぎているからな。ここらで制裁を下してやる。もし倒したとしてもそれも好都合だ。」
「はっ。了承いたしました。」
「・・・そうだな。適当な理由を付けて三人のランクを一つ上げておこうか。」
ギルマスっぽい青年はそう言うと徐に立ち上がり、斜め後ろに居た秘書の青年の腰を掴んで引き寄せると・・・と、ここから先は十八禁コーナーなので描写はそこまでにしておこう。
「ん・・・はぅ・・・//」
「ふ、続きは寝室で行うとしよう。なに、今日もたっぷりと可愛がってやる。」
・・・このギルドのマスター【アドルフ・グラスバー】。自身が美青年であり一人前の剣士であるのだが、ショタ喰いの男色家といった性癖を持つ変わり者。
そして、自分と同じ髪と瞳の色をした美少女の幼馴染らしき、黒髪の美少年『神原結斗』に心奪われた変態の一人である。
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