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***



 ユーリア達が在席している学院は街の外れにある森林の中央に位置しており、そこから街へ行くには街と学院を往復する【公共馬車(幌馬車に座席をつけただけのもの)】を使う必要がある。運賃は安いが片道三時間はかかる為に街に用事があったり、夏休みなどで実家に帰省するような学生が使っているのだ。現に今日から春休みなので帰省する人も多いが、朝の寒い時間帯では流石に居ないようだ。


 そしてユーリア達三人も公共馬車に乗って街へと向かっていたのだが・・・。




「!」


 ・・・馬車の中、ユーリアはあまりにも暇だった為に自分の『体質』の関係で常に余っていた多量の魔力をどうにかしようと思い、試しに周囲にゆっくりと撒いてみようとした。結論からいえばその作業は成功したのだが、それがどういう効果を生むのかは彼女自身も知らなかった。が、その行動は彼女らの運命を良い方向に導く結果となったようだ。


「馬車の後方から何かたくさんこっちに来る!」

「えっ!?」


 今、ユーリアは魔力を通して視覚外の存在を感知していた。それが何なのかは彼女にはわからなかったが、少なくとも彼女たちに敵意を向けていることはわかった。


「こいつは・・・【ワイルドドッグ】!」


 ユーリアとほとんど同時、洋一も彼女が感知した存在の気配を感知していた。ただユーリアとは違って彼は魔物や人の気配を探知する技能スキル探査サーチ』を鍛えるために発動していたので気付くことが出来たようだ。


「ワイルドドッグっ!?」


 シエルが言った瞬間、走り続ける馬車の後方にあった茂みから4体の【ワイルドドッグ】が現れた。ワイルドドッグは全長二メートルほどの大きな犬型魔物であり、その大きさに見合った腎力と大きく鋭い牙は鉄剣程度なら容易く砕いてしまう程の強さである。討伐ランクはD~Bと個体差が大きいが、目の前のワイルドドッグは最低でもCはあると思われた。


「御者のおじさん、このまま止まらないで走り続けて!」

「は、はいぃぃぃっ!!」


 馬車の速度が更に速くなったところで、ユーリアは主武器メインウェポンである折りたたみ式長弓を腰から外し、矢筒を素早く腰にセットして弓を展開。横を見ると洋一は虚空からライトボウガンを取り出し(!)、ダーツ矢と呼ばれる短く小さい矢が入ったマガジンを下側に叩き込んでいた。このライトボウガンは洋一のアイデアを元に鍛冶士であるシエルと魔導工学士であるユーリアが作り出したもので、まだ試作段階ではあるものの矢を撃ち出したあと半自動でセットしてくれる機構(セミオート、と言うらしい)を備えたオリジナル作品である。


「ボクと先輩はここで撃つから、シエルは犬が来たら教えて!」

「わかったわユーリア!」

「了解、FPSの鬼と呼ばれた俺の実力見せてやるっ!」


 洋一の一言と同時にワイルドドッグ達が一斉に飛びかかってきた。


「ここで死んだら後悔しきれないから、さっさと倒させてもらうよっ!」


 ユーリアはそう言うと手近な犬に狙いを定め・・・


「あっ」


 外した。馬車が激しく揺れているのもあるが、そもそも座席越しの射撃であるために体勢が不安定であり、手元がおぼつかないのである。だが今は射撃以外に攻撃手段がない為、こうするしか無いのだ。


「ちっ、当たれよ!」


 それは洋一にも当てはまることであり、一応剣はあるものの狭い馬車で振り回す訳にもいかない為、試作品であるライトボウガンに頼る他はなかった。そして攻撃手段が片手用戦棍メイスしか無いシエルは戦闘に参加することが出来ず、ただ見ることしか出来ない。


「先輩は魔法使えるんですから、魔法を使ってくださいよ!」

「馬鹿言うんじゃねえ、こんな揺れの中じゃ詠唱できないん、だっ!」


 そう言い合いつつ弓とボウガンで犬達を牽制する二人。だが、犬達にとって矢は脅威にすらならず大概が命中しない上に、当たりそうでも軽々と避けてしまっていた。犬達の足の速さはユーリア達にとって最大の脅威であると言えるのだ。彼女らがそれを止める術は、ある一つの『道具』以外になかった。


「ね、ねえ! この状況ってもうアレ使うしか無いような気がするんだけど!」

「えっ、それってボクらの売り物でしょ!? 利益減るから使いたくないんだけど!?」

「構わんシエル! 奴らにブチかましてやれ!」

「わかったわ!」

「あ、ちょっ!」「そーれっ!」


 ユーリアの制止を振り切ってシエルが投げたのは色とりどりの小さなボール。『かんしゃく玉』と呼ばれたそれは地面に強く当たると同時に破裂し、大きな音を立てた。その音に反応し、怯む犬達。そして訪れる機会ショット・チャンス


「スキありだ!」「スキありだよっ!」


 放たれた2つの矢は二匹の犬の頭に綺麗に刺さり、一瞬で絶命させた。


「もう一回!」


 そして間髪入れずにもう二匹を絶命させたユーリア達は、ここでやっと一息つけた。だが、まだ犬が残っているとは限らない為まだ油断は出来ない。何故なら・・・


「これで終わりかな・・・っ!?」

「っげえ・・・っ!?」

「な、なななな・・・」


 退けたはずのワイルドドッグが、今度は倍の8体になって襲いかかってきたからだ。


「殺す気満々かよおい・・・」

「あはは、もしかして私達一族大移動の時に通っちゃったのかしらね?」

「ほら、現実逃避してないで迎撃するよ!」


 ・・・翌日、自体を重く見た街長から街のギルドにワイルドドッグ一族の討伐依頼が配られ、街に常駐している高位冒険者がこぞって森に殺到していくことになる。




***




「つ、疲れたああっ!!」

「おつかれ皆・・・ボウガン撃ち過ぎて腕が痛い。」

「ボクも撃ち過ぎで腕が・・・。」


 犬達の縄張りは森の中までだったらしく、森を抜ければ追いかけてこなくなった。・・・だが、走ってきた反動で馬車を引く馬がスタミナ切れを起こしてしまった為に移動時間は伸びに伸び、街に着いたのは夕方であった。そして現在、シエルの実家でありユーリアの下宿先であるやや大きめの家で一行は疲れを癒やしていた。


「それにしても撃ちながら逃げてきたせいで魔物から素材取れなかったし、もう大損ってレベルじゃないね・・・。」


 洋一からもらった携帯食料を口に咥えつつ、袋の中身を確認していたユーリアはそう言うと、大きくため息をつく。袋の中にあった売り物はあの戦いの中で殆ど使ってしまい、矢も補給する必要もある為にユーリア達にとって大きな痛手となっていた。


「あとこのタワーシールドも修理しないと・・・。」


 洋一が指し示したのは、中央部が大きく凹んだタワーシールド。犬の群れの中でも一段階上の強さを持った犬(恐らくボス犬)が突撃してきたため、洋一がやむなく虚空から取り出したして受けた為にこうなってしまったようだ。


 その上、犬達がリーダーを中心に速度を上げた為にユーリア達は完全に追いつかれてしまい近接戦闘と化してしまったのでユーリア達の近接武器もかなり消耗しており、特にユーリアの近接武器である連結棒(木製の二本の棒を連結させることで二メートル程の長い棒になる武器)は犬の噛み付きによって砕けてしまっていた。


 ただ、ダメージ自体は殆ど受けなかったので防具が余り消耗していなかったのは幸いと言える。



「ま、大丈夫だろ。むしろこれだけで済んで良かったと思うな。」

「・・・大怪我してたらそれこそ大損、あの状況で誰も怪我しなかったことを祝ったほうがいいと思うわ。」

「ああ、シエルの言うとおりだ。第一、春休みはまだ始まったばかりだから、相違落ち込むことはないと思うぞ。」

「・・・・そう、だね。落ち込んでる暇はないし、明日から頑張って学費を稼ごう!」

「おう!」「ええ!」


 こうして、ユーリア達の春休みが始まったのであった。

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