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ラインブレイカー  作者: MAQ
4/5

第一話 放課後ファミレスにて



(こりゃ、やばい状況だ…)

俺、田中元は高校入学して、まだ一ヶ月も立たない内に

先輩に囲まれるという状況に遭遇しだんまりを決め込む事しか出来ずに居た。


旧友の大神晃希と一緒に正座をさせられ

5.6人の先輩方に囲まれ睨まれる視線からは敵意しか感じられない。


「お前らさ。何したか分かってんの?」

先輩の一人が敵意100%で問いかける。


分かっている。

思い当たる節があった。


二人は入学してからというものとりあえず女子生徒とコミュニケーションをはかり

女子生徒達と放課後をエンジョイしていた。

学校内で遊ぶ約束を取り付けたり

放課後街で直接声をかけたり

また高校の合格発表で声をかけた天野先輩からはじめ

先輩とのネットワークが出来ていた二人は

先輩女子とも遊んでいた。

そして、昨日遊んでいたある女子先輩

彼氏は居ないと公言していた。

晃希はかなりノリノリでコミュニケーションを取っていた。

先輩も晃希がタイプだったらしくノリノリだった。


で、その女子先輩が気まずい顔で向こう側に立っていた。


「なに、人の彼女に手出してんだよ。小僧」

先輩方の中で中心にいる男が威圧的に言う。

かなり厳つい。体でかい。ヤバイ。


「しかも、玲奈は彼氏いる事をお前らに言ったのに

お前らは無理矢理連れ回したらしいじゃねぇか」


距離が近くなる。

いつ殴られてもおかしくない。

だが事実と反する事があるので元は反論した。


「彼女さんは彼氏いないって言ってました。」


元の言葉に先輩達は玲奈の方に一気に視線を動かす。


「そうなのか玲奈?」


「最初はそう言っちゃったけど…途中でちゃんと言ったよー。

そしたらそっちの子が

いいのいいの、そっちのが燃えるからって」


玲奈が指差した方を全員が見る。

勿論元も。


晃希はいつ用意したか分からない「反省中」と書かれた紙を頭に貼って全員の視線を感じながらも動じない。


(こいつ…知ってたのか!)

元は彼氏の存在を知らなかったが

晃希は知っていた。彼氏持ちの先輩、しかも同じ学校となるとトラブルになる事は用意に想像出来たのに。


しかも、昨日は晃希が声をかけて

晃希の事を気に入った先輩とが宜しくやってただけで

元はそれを尻目に2000年代のヒット曲を50位から順番に歌っていた。


無実!

裁かれるのは横に居る略奪者だけ!

燃えるのが好きらしいので

どうか先輩方こいつを裏にある焼却炉で燃やしてください!


「てめぇ、そうなのか大神?」


「違います。俺は2000年代のヒット曲50位から順番に歌ってただけ。」


それ、俺ー!

俺だから!12位のケツメ●シのさくらでメチャ泣きながら歌ってたから


イチャイチャに夢中な二人の横で感情移入し過ぎてつい泣いてしまったのだ。


「12位のさくらでめちゃ泣いちゃいました。」


ちゃっかり見てんじゃねぇか!


「あれは引いたわ。」


もぉ許して!


「おい!さっきから何訳の分からん事言ってんだ!」

遂に先輩がキレる。


「大神。噂で聞いたけどお前かなり調子に乗ってるみたいじゃねぇか。

やっぱこの辺で締めとかねぇとな」


先輩達は臨戦態勢に入る。

ヤバイやられる。

元がそう思った時だった。



「銀次、その辺で許してやれ。」

突如聞こえてきたよく通る声にみんな振り向く。


そこには制服の襟の色が赤。

つまり2年の先輩が立っていた。


目筋鼻筋がしっかりしていて

明るい色の髪がお洒落にセットされている。

かなりのイケメンだ。


「鳴上・・・」

銀次と呼ばれた先輩が苦虫を潰した顔をしている。


「いくらお前の頼みでも聞けないな。こいつは人の女に手を出した。

けじめを付けさせる」

銀次先輩が一歩前に出る。


「玲奈は北高の薗部ってやつと浮気している。」

鳴上は間髪入れずに反論する。


その発言に全員固まる。


その様子を見て鳴上先輩はフッと笑みを浮かべ

銀次先輩にゆっくり近づいてくる。


「銀次、玲奈はそういう女だ。

お前にもっといい女がいる。

もし、この場を納めてくれるなら。」


鳴上は取り出したスマホを片手で操作すると

銀次の前に勢いよく出す。


「この子を紹介する。玲奈と違い純情な子だ勿論仲も取り持つ。」

そこには綺麗系の女の子の写真が写し出されていた。


「こいつらは俺に任せろちゃんと締めとく。」

なっ。と鳴上は笑いかる


「分かったよ。ただし、この場でその子のLINEを教えろ。

お前は信用ならねぇ」


凄む銀次に鳴上はやれやれと言った表情だ。


「分かった。

…じゃあフルフルだ」

謎のタメの後

鳴上はスマホをフルフルし出した。


銀次もスマホを取り出しフルフルしている。

どうやら女の子のLINEを送っているらしい。


その光景を表情変えずに見ている。

銀次の取り巻き。

そして俺。


隣の晃輝はスマホを取り出したてフルフルしてる。

いや、何自分もアカウントGETしようとしてんだよ!


ピロン!


どうやらLINEのアカウントが送られたらしい。


「帰るぞ。」


銀次はスマホをしまいながら取り巻きに言う。


取り巻き達は踵を返し立ち去って行く。


「毎度〜」


鳴上はヒラヒラと手を振っていた。


「…さてと」


鳴上は晃輝達の方に近づいて行く。


「お前らちょっと顔貸せ。」


さっきまでの柔らかい表情とは打って変わりキツめの顔がより強調される厳しい表情。

さっきよりも低い声だった。


***


「なんか食う?奢るけど。」

鳴上先輩がこちらにメニューを渡してくる。


先輩に連れられて俺たちは近くのファミレスに来ていた。


「・・・いえ、大丈夫です。」

あんな事があった後に初対面の先輩に奢ってもらうほどの度胸はない。

しかも鳴上先輩って・・・


まだ入学して2週間足らずだが、名前は聞いた事ある。

創英高校1年生達の間で密かに出回っている「この人達に関わったら高校生活終わる人リスト」


そこに、赤文字太文字でデカデカと「鳴上 了」と書いてあった。

なんでかは分からない。

たださっきの騒動といい只者ではないのだろう。

この人に深く関わってはいけない。

この人に恩や義理を作る事は馬鹿のやることだ。


「そう、お前はなんか食う?」

鳴上先輩は晃希にも聞く。


「ミラノカゼドリアを一つ。」

馬鹿いたーっ!

ふうふう

色んな意味で馬鹿いたーっ!


「あ、そう。じゃあ、店員さんそれ頂戴。」


店員さんは注文を聞くと下がって行った。


「さてと、自己紹介が遅れたが俺は鳴上

お前らの1個先輩だ。」


シャツの首筋の赤色のラインを見せる。

創英は学年毎に色が振り分けられていて

1年が青、2年が赤、3年が緑。

制服のワンポイントや体操着などに反映されていて一目で学年が分かる。

因みに学年が変わると繰り上がりで緑は来年の一年のカラーになる。


「そして・・・お前らの命の恩人でもある。」


命・・・?

ポカンとしていた晃希と俺に鳴上先輩が続ける


「さっき、お前らが絡まれてた銀次って奴いただろう。

あいつのバックにはとんでもない奴がいる。

名前は清荒神 大我キヨシコウジンタイガこの学校の番長だ。」


その名前は先程のリストに鳴上先輩と同じくらい大きく書いてある名前だ。


「あいつの戦闘能力は人間のそれじゃない。もしお前たちが清荒神と揉める様な事があれば

・・・命を落とす。」


ここ何時代?世紀末かなんかですか?


晃希は信じ切ってガクガク震えている。


「お前達がアライブする道は一つ。命の恩人である。俺の言う事を聞く事だ。」


俺と晃希は背筋を伸ばして鳴上先輩の正面を向く

何を命じられるのか・・・

まさか!毎時間自販機にピクニック買いに行かせる気かっ!


「お前ら、サッカー部に入れ。」


そういうと鳴上先輩は今日初めて笑った。

少年みたいな笑顔だった。


「「サッカー部?」」


「お待たせしました。」

晃希と俺の声がハモった所で料理が来た。


***


「サッカー部ですか?」


「あぁ、そうだサッカー部だ。」

俺の質問に鳴上先輩がコーヒーを飲みながら答える。

晃希はドリアをガツガツと食べていた。


「お前、それ卵入れた方が上手いぞ。」

鳴上先輩が晃希に声をかける。


「確かに。俺もらんが足りない気がしてたんすよ!頼んでいいですか?」


「うむ。」

鳴上先輩が応えると晃希は意気揚々と追加注文する。


「先輩はサッカー部なんですか?」


「あぁ、そうだ。」


「勧誘って事ですか?」


「まぁ、そうなるな。」


「でも。俺も晃希もサッカーやったことないですよ。

なんせ、俺ら中学時代は・・・」


「ハンドボール部。だろ。」

鳴上先輩が間髪入れず答える。

えっ?なんで知って・・・?


晃希は構わずドリアを食べていた。


「田中元、ポジションはGK大神は右ウイング。

壱中は県ベスト8。中々の成績だな。

二人とも運動能力は問題無いが、・・・勉強は前世に置いてきた感じか。」


鞄から取り出したプリントを見ながら鳴上先輩がプライバシーを侵害する。


その紙何が書いてあるの?怖ッ!!


「まぁ、とにかくお前らサッカー部に入れ。

お前達は銀次達に目を付けられてる。いずれ清荒神にも睨まれる。

だが、サッカー部なら俺の庇護に入る。俺の監視下ならあいつ等も手を出せない。

・・・お前達の道は一つだ。」


・・・もう、俺たちの桃色放課後は戻ってこないのか。


番長にシメられるか。

鳴上先輩の奴隷になるか。


俺が今まで戯れていた女子高生達との思い出が走馬灯の様に浮かぶ

ヘラヘラとした笑顔でいつも良いところを持っていく晃希の姿が・・・。


てか!俺、良い思い一回もしてねっー!


「ごちそう様でした。」


晃希がドリアを食べ終わった。


「よし、元。帰るぞ。」

晃希が立ち上がる。


「なっ!!」

俺は晃希の行動に呆気に取られていた。

鳴上先輩の表情は変わってない。


「晃希、話聞いてたか?」


「おー聞いてた。」

呑気な声で言う。


「俺ら目付けられてんだよ。サッカー部入らないとヤバいって・・・」


「なんとかなるだろ。先輩ご馳走様でした。」

そういうと晃希は鞄を取って店を後にする。


俺も鳴上先輩に頭を下げて晃希を追う。


「大神か・・・。」

そう言って鳴上は少し笑った。













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